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3-1-2

勇気と木葉は並んで座り、早速勇気が木葉に分からない所を聞いていた。


その向かいに並んで座っている慎一と咲は、2人の様子を固まって眺めている。




勇「…慎一?」


慎「な、何?」


勇「そんな見られたらやりづれーんだけど、何固まってんの? そのまま石化する勢いだよ。」


慎「い、いやいや! そんな勢い無いし! 今からやろうと思ってたと思ってるし!」



不審極まる挙動で英語の教科書を取り出す慎一に、依然不動の咲。


2人のおかしな様子を怪しみながらも、勇気たちは勉強を再開した。






これほど2人が緊張しているのにはワケがあった。


もう互いに結構打ち解けていたので、そういう緊張ではない。




それは、数日前の休み時間にさかのぼる。


そう、咲がより慎一や皆と打ち解けるようにというはからいの意味も込めて、勇気がこの勉強会を提案した時だ。


その少し前に、咲に「禁断症状は定期的にくる」ことと、「次は週末ぐらいかもしれない」ということを聞いていた慎一は焦った。










今狭い部屋に人間3人と集まって、接近して、勉強教えてもらったりしたらどうなるか?











ただでさえそろそろ来る禁断症状を誘発し、最悪その場の全員が引き裂かれるかもしれない。



それと、あまりに色々知らなすぎる咲の素性を根掘り葉掘り聞いてくるかもしれない。





かといって、断ることもできなかった。


テスト直前にこうして3人で開く勉強会は、毎回慎一のテストを無難に終わらせることに貢献してきた。



特にこの時期は、慎一がゴールデンウィークを勉強で潰さないようにするために絶対逃してはならないビッグイベントなのである。




そのため、今日咲のことが2人にバレたり、怪しまれたり、あるいは喰べられたりしないように、様々な対策を練ってきた。





しかしなまじ対策してきたせいで、しくじらないようにと気を張り、それが緊張という形で今2人をこわばらせるに至ったのである。








慎一が30秒ぐらい同じ英文を眺め続けていると、木葉が思い出したように口を開いた。


木「あ、飲み物忘れてたわ。持ってくるね。」


勇「おぉ、ありがとう。ちょうど喉渇いてたんだよ。」



慎一も咲も喉が干上がって砂漠化してきていたので、それは素直に嬉しかった。



木葉が部屋を出ると、待ってましたとばかりに勇気が聞いてきた。




勇「で? キスはしたワケ?」




いきなりどストライクの質問が来てビックリしたが、ストライク過ぎてかえってかわしやすいものだった。



慎「してねぇよ。」『つか怖くてできねぇよ。』


勇「ウブだなぁ。もう慎一は南さん家行ったんだろ?」


慎「ああ…。まぁ、こないだお見舞いでな。」


勇「その次の日に風邪欠席が南さんから慎一に入れ替わったから、てっきりキスでうつったんかと思ってたぜ。」



ヘラヘラしながらなんて恥ずかしいことを言うんだテメェと思って咲を見ると、顔を真っ赤にしてうつむいている。


やっぱりキスはできんと思ったところで、木葉が戻って来た。



木「ゴメンね、こんなのしかなかったんだけど…。」











お盆に乗った4つのグラスには、全て真っ赤な液体がつがれていた。











慎「うわ、血!!?」


咲「え!?」


木「え、ち、違うよ、トマトジュースだよ。」


勇「うわァ、そのボケはないわ、つまんねー。」



勇気の言葉は慎一の耳に入っていなかった。



思いっきり血を想起させるこれは、咲の禁断症状を誘発するのに十分すぎるものだ。



慎『こ、ここにきてまさかのトゥメイトウジュース…! 咲大丈夫か!?』





ジュースを受け取って咲を見ると、咲はグラスをうっとりした目で見つめている。





早速惨劇のきっかけを提供されて、慎一の冷や汗が止まらなかった。


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