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とことん意味が分からず、首をかしげていると、机の上で何かが光った。
慎「ん?」
見ると、咲の携帯が置いてある。
何気なく手にとり、開くと、新着メールや不在着信の案内が数件表示され、いずれも慎一からのものだった。
慎『携帯も持ってない…?』
携帯を閉じ、そのまま机の上に視線を落とす。
机の上に書き置きがあるのに気付いたのは、その時ようやくだった。
慎「何だこれ?」
慎一は携帯を置き、代わりにその書き置きを拾って読んだ。
随分走り書きだった。
慎一くんへ。
きゅうでごめんなさい。
たった今、鬼灯族のものがいえに来ています。
村がせんめつきょうかいのかいいんに見つかり、ほかの一族のものはみな、すでに国外へにげているとのことです。
わたしも、行きます。
今までありがとうございました。
こんなにとつぜんおわかれになるのはかなしいですが、またどこかであいましょう。
さようなら。
南 咲
慎「………。」
慎一は黙ったまま手紙をきれいに折り畳み、ポケットにしまった。
咲の携帯もポケットにしまった。
そうして、生活感だけの残る部屋を後にした。




