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全力で走り、ようやく咲に接近した。
無論、あまり肉薄しすぎれば襲われた時に逃げられないので多少の距離はある。
仮にも彼女ではあるが、命の危険に対する対処は焦っていても万全だった。
慎「咲!!! こっちだ!!!」
慎一は絶え絶えの息を振り絞って咲に怒鳴りかけた。
咲は起き上がりざま慎一を振り返り、先ほどまで襲いかかっていた男性を無視して慎一の方に走ってきた。
慎『よし!』
それを確認して慎一も踵を返し、ダッシュした。
とにかく、まずは咲を咲の家まで戻さなければ人々が危ないし、会員の目に付いたら咲が危うい。
慎一はたまに振り返って咲が追ってきていることと、追いつかれそうでないか確認しつつ、また階段を駆け上がった。
真っ直ぐに咲の家に飛び込み、居間まで来たところで振り返る。
咲はスピードを落とすことなく突っ込んできた。
慎「うわぁっ!!」
そのまま組み付かれ、勢いに負けて押し倒されてしまう。
両腕は捉えたので、咬まれないように何とか抵抗しているが、咲の力はものすごく強かった。
慎『くそッ…、どっからこんな力が…。早くしないと俺が咬まれちまう! どうやって治せば……。』
抵抗しながら考えるが、何も方法が思い浮かばない。
慎『くっそ~~~~!! このままじゃ咬まれ………ん? 待てよ……。』
慎一はそこで、禁断症状の意味を思い出した。
咲は、長期間人肉を摂取していなかったせいで暴走しているのだ。
ならば、慎一が自分を少し"食べさせれば"、咲は治るかもしれない。
慎一は首を振った。
慎『あ、あんな痛い思い…もう二度としたくないっての! 他の方法…。』
目の前で、咲が必死になって慎一に咬みつこうとしている、その表情が必死だった。
咲は、苦しんでいる。
慎一の中の正義感が久々に爆発した。
慎『お前は男だろうがあああああああああああああああああ!!!!!!』
慎一は勢いよく、自分の右腕を、大きく開いた咲の口に押しつけた。




