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翌日。
結局逃れられなかったツーコンボの後始末に追われ、慎一は勇気と木葉よりも遅く学校に着いた。
そして教室に入ってすぐ、自分の机に花を挿した花瓶が置かれているのを見てぎょっとした。
勇「オス、慎一! 遅かったな。」
木「おはよう、慎一君。」
慎「あ、ああ、おはよ…。これは?」
木「慎一君が南さんとお付き合いすることになったって勇気から聞いたから。おめでとう。」
慎「ああ、蓮樹さんが…。うん、ありがと。」
慎一はてっきり勇気の悪ふざけだと思っていたので、木葉の真心だと知って自分の疑心を呪った。
勇「それで、俺からはこれだ!」
勇気が慎一の机にドンと置いたのは、未開封の一升瓶だった。
慎「おい。おい待て勇気。」
勇「まぁまぁ、また1つ大人の階段を上ったんだから。」
慎「酒飲める位置はまだまだ遠いだろ! 大体お前、このご時世に何処で仕入れてきやがった!?」
勇「父さんに事情説明したら1本分けてくれたけど。」
慎「父さんコラ――――――――――――――!!!!」
そこへ、木葉がオロオロしながら口をはさむ。
木「ゆ、勇気、お酒はマズいって…。」
勇「だいじょぶだいじょぶ、慣れりゃ平気だって。」
木「…? …あ、いや、マズいって味のことじゃなくて……」
慎「とにかく早くしまえ! 先生に見つかったら大変だぞ!!」
言ったそばから担任が教室に入って来た。
扉がガラッと開く音で、慎一はとっさにそれを自分のカバンに隠した。
担「はい、席着けよ~。」
慎「とにかく、後でこれは返すからな。」
勇「分かった、分かった。」
勇気は少し面白くなさそうな様子で、木葉は申し訳なさそうな様子で、それぞれ席へ戻った。
慎「…たく。」
慎一も席に着き、そこで初めて隣の席の寂しさに気付いた。
慎『ていうか南さん遅いな…。まさか、また南さんを狙うヤツらが…?』
慎一が不安を抱き始めているうちにあいさつが終わり、担任が話し始めた。
担「え~、昨日転校してきたばかりの南さんだが、今日ちょっと体調不良で休むそうだ。」
クラスがザワつく。
So does 慎一's mind。
そりゃあ仮にも殺されかけているし、咲のことはまだ少し怖いのだが、いざ来ないとなると昨日のことが頭をよぎって不安でいっぱいになった。
まさか別の財団法人ナントカ協会の会員が咲を手にかけたのではないか。
あるいはまた禁断症状が出て、1人で苦しんではいまいか。
前者に限り助けてやれるのに、と唇を噛み締めた。
後者は無理、死ぬから、と交感神経に活動電位を発生させ、立毛筋を収縮させた。




