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16-2

そして放課後。


咲と木葉は慎一と勇気がモタモタ準備をしている間にさっと準備をして、何も言わずにさっさと学校を後にした。



咲「やっぱり一言言っておいた方が…」


木「大丈夫よ。どうせあの2人ももう分かってるんだろうし。それよりまずは材料買ってこないと。」


咲「…そうですね!」


咲は無性にワクワクして、後ろめたさもあっという間に忘れ、木葉と一緒にスーパーへ行った。



迷うことなく"材料"を目指して歩く木葉の背中が妙に頼もしく見える。


咲「やっぱり慣れてる人は違うなぁ。…ん? でもこっちって……」


木葉は迷うことなくお菓子売り場に来て、適当に板チョコをかごに入れた。


咲「チョコ買うんですか?」


木「ん? そうよ?」


咲「え、だってチョコ今から作るじゃないですか。何でわざわざ……。」


木『あ、そっか。』「まぁ、…見てれば分かるわよ。ガッカリさせるかもしれないけど、私たちが一からチョコを作るのは無理だからね。」


咲「あ、そうなんですか…。」



咲は忠告通りに少しガッカリした。



その後、木葉はココアパウダーも買い、2人はスーパーを出た。




咲「…チョコをチョコで作るって、手作りって言えるんですか?」


木「言える言える。要は愛情を込める工程があればいいんだもん。」


咲「でもそれって、例えば定食屋でトンカツ定食頼むと、スーパーで買ったパックのトンカツが出てくるみたいなことになりませんか?」


木「………ん?」


咲「え?」



言っておいて咲も自分でよくわからなくなったので、この議論はここでストップした。














―――――――――――――――――――――――












木「さあ、やるよ!」


咲「おー!」


木葉の家のキッチンで、2人はしっかりエプロンと三角巾をして立っていた。



木「じゃあ咲ちゃん! 早速だけど、買ってきたチョコを細かく刻もっか。」


咲「分かりました。」


咲ももう黙って木葉に従うことにした。



チョコの包装をとり、まな板の上に置いたところで、ようやく咲は気付いた。


咲「…これ切れるんですか?」


木「へ? 切れるよ?」


咲「だって何かプラスチックみたいに頑丈そうじゃないですか。」


木「切れるって、ほら。」


と、目の前で、木葉が包丁で手際よくチョコを細切れにしていく。


咲はビックリ仰天である。



咲「え、マジ…えええ…」


木「やってみなよ。」


咲「…よ~し!」


咲は木葉のやっていた通り、角に斜めに包丁を立て、グッと力を入れた。




ゴリッと音がした。




咲「あ、指切っちゃった。」


咲の左手人差し指から割と勢いよく血が流れ出す。


木「うわあ、大変! き、救急箱!!」


咲「あ、別に大丈夫ですよ。このぐらいなら痛くもかゆくもないです。」


木「え、そうなの…? いや、そうだとしても血がチョコに入っちゃったらいけない!」



咲は何かひらめいたような顔をした。



咲「むしろ血ぃ入れちゃったらどうですか? ちょっと大人の味に―――」


木「ならん!!!」



それだけ叫ぶと木葉は咲の指を水道の所に引っ張ってきて無理矢理洗い、ガーゼで拭いてすばやくばんそうこうを貼った。



咲は初体験の中で少しでも自分の案を入れ込みたかっただけに、血が止まってもしゅんとしていた。



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