15-5
最初から勝負は見えていた。
剣道のたしなみすらない、それどころか日頃体を動かしていない慎一が、明らかに慣れている焔に勝てるワケはなかったのだ。
既に慎一の両手両足は切り傷まみれになっている。
急所はつかないが、もう動かすのも困難なほど痛みはひどかった。
息も荒い。
一方焔は無傷どころか、息一つ上がってはいなかった。
慎『くそ……。痛ぇ………。』
慎一は痛む腕を痛む腕で抑え、必死に耐えながらまた刀を構えた。
腕も震え始めていて、持っているのもやっとだ。
慎「ぐっ!!」
慎一はもう体を動かすことで漏れる声以外出すことなく、焔に向かっていった。
が、満身創痍の慎一に、焔は容赦ない。
慎一の刀を横に流し、慎一の顔のすぐ右横にそれを突き出した。
慎「うおッ…!?」
いきなり目の前に迫った刃に、慎一は思わずのけぞって尻餅をついてしまった。
慎「?!」
肩に痛みが走った。
右肩が切られている。
慎『マジかよ…。全く切られた感触なかったのに…。』
と、慎一の視界が暗くなった。
見上げると、焔が見下ろしていた。
慎「……。」
焔「話にならないな。お前じゃ咲の夫にはなれない。」
慎「!」
慎一がにらみつけるより前に、焔は持っている刀を振り上げていた。
慎「!? 待っ…」
咲「ダメェ―――――――――――――――――――――!!!」
慎・焔「!!?」
咲が突然焔にしがみついてきた。
焔「わ…ちょ…咲! 離れろ!!」
咲「ダメエェッ!! 慎一くんを殺さないでぇ!!」
焔「くっ…危ないから離れろって…!」
焔も咲を傷つけるわけにはいかず、もがくしかできない。
慎『…い、今だ…!!』
慎一はありったけの力を振り絞り、素早く立ち上がって、その勢いのまま、焔の刀を持つ手を薙いだ。
刀はちょうど手から下に出ている柄の部分に当たり、焔の手から刀が弾き飛んだ。
少し離れたところに落下した刀は、その見た目からは信じられないような重々しい音を立てた。
焔「!?」
慎一は、勢いそのままに、刀を焔の首めがけて振りかぶった。
自分でも気づかないうちに、慎一は一瞬正気を失っていた。
焔はそれに気付くも、無理に避けようとはしなかった。
男同士の真剣勝負の決着だった。
慎「うおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!!!」
刀が焔の首を切り裂く直前、慎一は咲と目が合った。




