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慎「えっと…、これは?」
焔「刀だ。見れば分かるだろ。」
慎「それは分かってるんですけど…え?」
焔「分かってるならさっさとそれを拾ってかかってこい。お前が咲の許嫁にふさわしいのか、俺が試してやる。」
慎一と咲は、予想通りの返答にいちいち驚愕していた。
咲「に、兄さん! それはいくら何でも無茶な…」
焔「咲は黙ってろ。」
慎『…当事者に"黙ってろ"かよ…。』
慎一は焔の真剣さに、どうやらやるしかないと感じ、とにかく刀を拾った。
が、見た目以上の重さに緊張が解けない。
それを扱える自信はなかったが、ともかく咲のためだと自分を奮い立たせた。
さやから刀を抜き、見よう見まねで構えると、目の前には本物の刀使いが、それを使わずとも眼光で慎一に斬りかかっていた。
慎『くっ……咲のためだ、咲のためだ……!』
咲のためだということだけは分かっているのだが、その刀でどうすればいいのか慎一には全く分からない。
もちろん刀が人を斬るための武器であることは知っているが、そんな危険なことをしたことがない慎一に、それをいきなりやってのける勇気はなかった。
焔「どうした? 来ないならこっちから行くぞ。」
慎「え……」
慎一が声を漏らす頃には、焔は慎一の懐に踏み込んでいた。
反射的に後方へステップして焔との距離を空ける。
が、気付くと慎一は右の太ももに切り傷を負っていた。
慎「!?」
慎一はそれを視認するまでまるで気付かなかった。
そして気付くとすぐ、鈍い痛みが走り始める。
慎「くっ…。」
焔「どうする? このままだと咲は殺されてしまうぞ?」
慎「…!」
そうだ。もし会員と同じような状況になったら、俺は咲を守れないということになる。
それじゃあダメなんだ。
それじゃあ……
慎「うおおおおおおおおおお――――――――――――――ッ!!!」
慎一は無我夢中で叫びながら焔に斬りかかった。
そして、あっさりと受け流され、その拍子に今度は左腕を切られた。
慎「くそ…!」
焔「無駄な動きが多すぎる。会員のほとんどは戦闘訓練を受けているのに、それじゃ当たるワケがない。」
慎「う…うるせぇんだよおぉぉ!!!」
叫ぶと、慎一は同じことを繰り返し、同じようにまた傷を負った。
慎「グッ…!!」
咲「慎一くん……。」
咲はハラハラしながら2人の決闘を見守るしかなかった。
慎一は未だ、焔に傷一つつけていない。




