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15-2

部屋に着き、咲がお茶を淹れて一旦落ち着くと、焔が口を開いた。





焔「率直な話、俺はあの許嫁をよく思ってはいない。」






やっぱり……。



咲は予想通りの言葉にも何か動揺していた。




咲「…焔兄さんは、どこで彼を?」


焔「去年の12月25日にな。ほら、咲と咲の許嫁、2人して会員の襲撃にあっただろう。」


咲「え、あの時に…?」


焔「会員に撃たれそうになっている時に助けた。」


咲「? ……あ、じゃああの時の銃弾は兄さんが…。」



焔は小さく頷き、続ける。



焔「全く、情けない許嫁だったな。あんな会員1人ろくに追い払えないとは…。」


咲「な…そ、そんなことないです! 今までだって何回も助けてくれたし―――」


焔「何回助けたかじゃない。男として、ちゃんと咲のことを守り切れていないってことだ。」


咲「う……。」



確かに、思い返すとあそこで焔が助けてくれなければ2人とも―――明日香も含めて3人か―――死んでいたかもしれない。


慎一は咲のことを守り切れていなかったかもしれない。





咲「……でも、」


焔「?」


咲「でも初めて、私たち鬼灯族のことを認めてくれた人です。いつだって、私を守るためなら立ち向かって、逃げようとしたことなんてない。大切な人なんです。」


焔「俺は咲のことが心配なんだ。」


咲「……私は、慎一くんが一緒なら―――」


焔「死んでもいいなんて言うんじゃねえぞ? お前はそれでいいかもしれない。でも残される俺達のことを考えろ。自分の命がどれほど重いか考えろ。」



咲は言葉に詰まった。





一瞬の沈黙は、焔が立ち上がった時に破れた。




焔「俺は咲の許嫁を信用していない。鬼灯族を認めてくれるのは嬉しい限りだが、それだけで夫になれると思われていては迷惑だ。夫には信用以外にも、妻を守る強さがなくてはならない。」



焔は咲を見下ろす形で強く言い放つと、踵を返した。



焔「咲の許嫁―――東 慎一が、本当に咲にふさわしい男か、俺が見極めてやる。」


咲「え?」




焔はさっさと咲の家を出ていってしまった。





咲「……見極めるって…。」




咲は数分ぼーっと考えたのち、いつの間にかたまっていた涙をふきながら、一口も飲まれていないお茶を片付けた。




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