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15-1

咲「今日の夕飯は、…いつもお肉ばっかりだし、たまには野菜も食べないと体に悪いよね。」


ある日の夕暮れ、咲は近所のスーパーで夕飯の買い物に来ていた。


独り暮らしとはいえ、生活費はほぼ巨額の仕送りでまかなっており、結構贅沢なものを食べても支障がない毎日。


これではいけないと、野菜コーナーに足を踏み入れる。



が、どれを見てもどんな調理をすればいいのかいまいち分からない。


咲「何だろうなぁ……。とりあえず焼けばいいのかなぁ。」


咲はよく分からないまま、とりあえずキャベツを1個カゴに入れた。


ともかく見たことのあるヤツは確保しておこうという寸法である。




そのあとはまた肉類を順当にカゴに入れ、支払いを済ませて店を出た。



咲「先を見越してたくさん買ったけど、重たいな…。」


両手で一つのビニール袋を持ち、よたよたと帰路に就く。







?「咲。」


咲「え?」




急に背後から名前を呼ばれた。


それも、聞き覚えのある声。



振り返ると、濃い青の着物に下駄を履いた青年が立っていた。




咲「あ、(めら)兄さん!」


焔「久しぶりだな、咲。」



(めら)は、鬼灯御三家のひとつ、蒼鬼灯家の末裔である。


今は咲と同じで、人間社会に下りてきて大学生として生活している。



咲「本当に久しぶりですよ。兄さんたまの集まりにも全然帰ってこないから。」


焔「はは、悪い悪い。人間の大学生ってのは色々忙しいんでな。」


咲「やっぱりいっぱい勉強するんですか?」


焔「まぁそんなところだ。結構遊びの方が比率は高めなんだが。」



久しぶりの再会に話しが弾みかけた時だった。



焔「ところで、咲。」


咲「はい?」


それまで笑っていた焔が、突然神妙な顔になる。


焔「お前、人間の許嫁を見つけたんだってな。」


咲「あ、はい。」


焔「それについてちょっと話があるんだ。」


咲「え…?」




咲は何かただごとではない雰囲気を感じた。


焔は、咲の許嫁である慎一に何か不満を持っている。


ただ、焔は一度も会ったはずがないという矛盾があった。



しかし今それを聞くことはできない。



咲「…兄さん。」


焔「ん?」


咲「とにかく…、私の家に来てください。すぐそこですし。荷物が重いんで、ここで話すのはちょっと…。」


焔「…こんな大事な話を道でするわけないだろう。」


焔は若干呆れ顔で咲に近づき、咲の持っているビニール袋をひょいと持った。


途端に両腕にかかる荷重が消え、あとには軽い筋肉のけいれんだけが残った。



焔「じゃあ案内してくれ。」


咲「あ、はい、こっちです。」



2人はそれぞれ緊張を伴って歩き出した。


夕陽色の街に、カランコロンと下駄の音が妙に大きく響いた。

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