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14-3-2

というわけで咲の家。


慎一は久しぶりに来たなと静かにテンションを上げる。



咲について部屋に入り、久しぶりとは言ってももう見慣れた居間に入って、荷物を置いた。


前に来た時から変わったことといえば洗濯物が部屋干ししてあることくらい。


また、布団はしまわれ、代わりにテーブルが居間の真ん中に置いてあった。


しかしそれ以外は特に年末大掃除をしたような感じもしない、そこそこ散らかってる程度の部屋。



慎『咲なら大掃除まじめにやりそうだけどな。』


イメージとのギャップに1人で笑っていると、不意に妙なにおいがすることに気付いた。




慎「………? ………………!!!」




慎一は急いで台所に駆け込む。


と、ちょうど咲がコンロにやかんを置いてつまみに手を伸ばしているところだった。









慎「スト――――――――――――――――ップ!!!!!」









叫びながら慎一は咲のその腕をつかみ、コンロから離した。



突然の出来事に慌てふためく咲。




慎「あっぶね~~~…。咲、このにおい何か分かるか?」


咲「え、このにおいですか? 分かんないですけど、臭いですね…。」


慎「これな。ガスのにおいなんだよ。」


咲「ガス…。」


咲は聞いたことあるかもそれ、でもよく分かんないといった顔をする。



慎一が改めてコンロのつまみを見ると、やはりガス栓が開けっ放しになっていて、しっかりと閉じた。



慎「このつまみがガス栓な。これが開きっぱなしになってるとガスがどんどん漏れるんだ。で、その状態で火をつけると、部屋に充満した大量のガスに一気に引火して、あっという間に火の海に…、……!」


咲「え…?」


2人はようやくそこで気づいた。



もしここで慎一が咲を止めていなかったら、文字通り、この部屋は火の海と化していたのかもしれないのだ。



慎「……うん、また夢が現実になるところだったなってこと。」


咲はせっかく落ち着いたように見えていたのにまたおびえ出した。



慎「…とにかく、実現しなくてよかったじゃん。換気扇つけよう。部屋の空気を入れ換えなきゃな。」


咲「はい……。」


咲はとぼとぼと換気扇に近づき、ヒモを引っ張る。


そして回り出した換気扇の羽を見て、慎一はひらめいた。



慎「あ、もしかして"火の海からヘリコプターで脱出する"って、"火事を免れるために換気扇を回す"ってことなのかな。」


咲「あ、なるほど…。」



2人は納得したが、それだけだった。


慎一も戦慄していたのだ。



もしかしたら本当に、咲は夢と同じ形で命の危険にさらされるのではないかと。



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