14-3
始業式が終わり、またホームルームの時間になった。
担「はい、じゃあ今から各自宿題を前に出しに来てくれ。」
そういって担任は教卓の上に何枚かふせんを貼り付ける。
担「このふせんに教科名が書いてあるから、これにしたがってプリント出してくれな。」
と、生徒がガタガタと立ち上がって前へ向かう。
慎「咲、俺らも行こう。」
咲「はい。」
まだ少しおびえ気味の咲を連れ、慎一も宿題を出しに向かう。
提出場所である教卓の前はさすがに混雑し、慎一と咲も直前まで来たのになかなか提出できない。
と、咲のすぐ後ろで男子クラスメイトが声を上げた。
男「あ、ヤベ…ここ書いてねえ。見落としてた。」
咲はもちろんそれに自ら介入には行かなかったが、その直後、その男子が咲に声をかけた。
男「南さん。」
咲「はい?」
男「平安京に遷都したのっていつだったっけ?」
突然の質問に驚きながらも、しかしそれは語呂合わせで覚えた年号だった。
咲「えっと、確か"鳴くよウグイス"だから…794年です!」
男「あ、そうだそうだ! ありがとう。」
男子は笑顔で礼を言いながら友達にシャープペンを借りて答えを書いた。
「お前歴史苦手にもほどがあるだろ。」
「うるせぇなぁ、こんなモン覚えて何になるんだよ。」
と、その友達が男子を茶化すのを、咲は前に向き直った後に聞いた。
咲はしばらく答えられた満足感に酔いしれていたが、ふと、デジャヴに似た感覚を覚えた。
咲『あれ…? この感じ……あ!!』
宿題を提出して2人で戻った後、咲は慎一に急ぎ気味に伝えた。
慎「どうした?」
咲「…ま、また1つ、実現しちゃいました…。」
慎「え、夢が?」
咲「はい…。電話で金庫の番号教えてくれっていう所です。」
慎「は? 金庫の番号聞かれたの? ていうかいつ電話したんだよ。」
咲「ち、違うんです。電話でも金庫の番号でもなかったんですが、あの電話、確かさっき私に問題聞いてきた子の声で、しかも私が夢の中で答えた金庫の番号"794"だったんです。」
慎「番号答えてたんかい。」
咲「はい。それでさっき聞かれたのは平安京の年号で、794年。やっぱり1つ1つ実現してます。」
咲はまたおびえ気味に言う。
慎『まぁ確かに、微妙に違うにしてもできすぎだなぁ。』
と、咲は更に言う。
咲「き、今日、私の家一緒に来てくれませんか…?」
慎「え?」
咲「だって…、この次は確か、家の外が火の海になるとこなんですよ…。怖いじゃないですか…。」
慎「あぁ、確かに、もし家が火事になったりしたらなぁ。」
咲「なので……。」
未だ現実味のない事態ではあったが、慎一はあまり咲がおびえているので、了承し、咲の家に一緒に行くことにした。
内心は飛び上がりたいほど嬉しかったのだが、か弱い女の子に寄り添って安心させてあげるイケメンを演じることに徹した。




