14-2
慎「どんな夢だったんだよ?」
既に半信半疑になりながら慎一は聞く。
咲「え~っと…結構長いんですけど……」
咲の話をまとめると、
実家で餅を食べてから帰るために家を出たら転び、その拍子に落っこちて自宅アパートの階段の下へ。
階段を上がって部屋に入ると、ゴキブリ出現。
そこへ電話がかかり、聞き覚えのある男の声で、「大変だ! 金庫の番号を教えてくれ!」と言われる。
急いでカーテンを開けて外を見ると、一面火の海。
咲は飛んできたヘリコプターで脱出する。
樹海に降り立ち、しばらく進むと突然背後に野犬が現れ、追いかけられる。
逃げた先で金属バットを持った謎の男が現れ、そいつに襲い掛かられる。
というものだった。
慎「―――で、お前はつまり、最終的に金属バットを持った謎の男に襲われて殺されるかもしれない…と。」
咲「はい、どうしましょう…?」
慎『どうしましょうって…どうもしなくていいと思うけどな~…。』
慎一は苦笑いをしつつ、おびえる咲の主張を頭ごなしに否定するのも気が引けて、少しずつたしなめることにした。
慎「なぁ咲、そんな心配しなくてもいいと思うぞ。だって、結局夢なんだから。実現するって決まったわけじゃないんだし。」
咲「そ…それが……。」
慎「ん?」
咲はまたためらい気味な感じになりつつ、主張する。
咲「それが、途中までは実現してるんです…。」
慎「え?」
咲「だから、実家でお餅食べるところから、家でゴキブリが出るところまでが、もう実現してるんです……。」
慎「え、でも、道で転んだ拍子に家のアパートの階段下にたどり着く時点でおかしくないか?」
咲「いえ、そっくりそのままじゃなくて…。私、お正月は実家に帰ってたのは知ってますよね?」
慎「あぁ。」
咲「それでこっちに帰る日の朝―――つまり、その夢を見た朝なんですけど、お雑煮食べたんです。それで、道で転びはしなかったんですが、家帰って来てアパートの階段上がる時に、足踏み外して転げ落ちかけたんです…。」
慎「……なるほど、微妙に実現してるわけか。」
咲「はい、それで家入るなり、今度はゴキブリが……。」
そこで咲は一番気分悪そうな顔をした。
慎一は、しかし楽観的な思考が抜けない。
慎「まぁ…様子見て、ホントにヤバそうなら俺も協力するから。」
咲「ありがとうございます。」
2人の話が終わるころ、担任がやって来て新年初のホームルームが始まった。




