13-6
翔「うぁっ…!!」
慎・咲・明「!!?」
翔は右手を抑えて苦しみだした。
慎『咲!? …いや、咲は銃を下ろしてる…。』
翔も含め、その場の4人が銃声のした方を見たが、そこには誰もいなかった。
だが、そのすぐ後に何人かの人影が現れた。
「警察だ。犯人は抵抗せず、大人しく投降せよ。」
メガホンを通した声が聞こえる。
慎『や、ヤバイ!』「咲! 銃を落とせ!」
咲「え?」
慎「今お前しか銃持ってねぇんだ! 疑われるぞ!」
咲「あ!」
咲はとっさに拳銃を落とし、条件反射で両手を挙げた。
翔「くそ…!」
翔は一声毒づくと、左手でライフルを拾い、背中に戻しながら逃げ出した。
人影は次々に路地に入ってくる。
警「君たち、大丈夫か? ケガは?」
慎「あ、はい、大丈夫…です。」
数人が慎一たちの所で立ち止まり、後は翔を追って走って行った。
慎『……助かった…。』
慎一はふっと力が抜けて、その場にへなへなと座り込んだ。
咲も安心のため息をつき、明日香は慎一の背中を見つめながら、それぞれ警察に保護された。
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その後。
3人は一旦警察署に連れて行かれ、軽く事情聴取を受けた。
とにかく咲の身柄はバレないようにしないといけないので、パトカー内で耳打ちで相談し、「翔のことはとにかく知らないで通す」ことにした。
結果、やはりあまりに異常な事態だったので、知らない人に突然襲撃された不幸な高校生3人以上の扱いは受けず、夕方ごろ、3人は解放された。
慎「あ~あ、とんだクリスマスだったよ…。」
咲「ホント、何でこんな時にまで仕事するんでしょうね? 日本人だからですかね?」
慎「何だそりゃ。」
と、2人の後ろから明日香が呼び止めた。
明「あ、あの…。」
慎・咲「ん?」
明「その……今日はゴメンなさい…。私色々勘違いしてて……。」
明日香はうつむき気味に2人に謝った。
どんな反応が返ってくるか全く分からなくて、明日香は泣き出しそうになった。
慎「別に良いよ。五島さんだってアイツにそそのかされただけだろ?」
明「え…でも、最初はホントに南さんを殺すつもりで―――」
慎「最終的に思い直してくれたんだからいいって。」
咲も何か声をかけたかったが、ついさっきまでそれほど憎まれていたとなると、何か言うのは火に油を注ぐような気がして何も言えなかった。
明日香は明日香で慎一の言葉が胸に詰まって何も言えない。
だが、とにかくこれだけは言っておこうと心に決めた言葉だけは何とか伝えた。
明「…南さん。」
咲「え?」
明「今までごめんなさい。慎一くんのこと、よろしくね。」
咲『………今まで?』「そ、そんなの、いいよ、気にしなくても。私も何か…ごめんね。」
明「え、いや、南さんは謝ることなんかない…。」
慎「まあまあ、何かよく分かんねえけどさ。」
慎一が不意に咲と明日香の手を取った。
咲「?」
明「!!!!!?????」
そしてその2つを無理矢理つなげた。
慎「ほら、これで仲直りってことでいいだろ?」
咲「…そうですね。」
慎一と咲は笑顔だったが、明日香はあまりに突然の接触にテンパりまくっていた。
そして慎一が手を離すと同時に後方にステップして距離を取った。
慎・咲「?」
明「あ、えっと、じゃあ…うん! じゃあ! ね! バイバイ! お騒がせしました!!!」
明日香はまくしたてるが早いか、全速力で走り去っていった。
取り残された2人は瞬時あっけにとられた。
慎「………まぁ、あれだ。また1人、ちょっと違うかもだけど理解者が増えたってことで。」
咲「めでたしめでたしですね。」
2人はこれからどうしような~ということを話しながら、何処へともなく歩き出した。
その後、「クリスマスの○×公園に、缶コーヒーでお手玉しながらたまに叫んでいた、不審な小さい女の子がいた」という都市伝説が生まれたのはまた別の話。
第13話 完




