13-4
弾丸は翔の顔の右側を通り、背後にあった建物の窓ガラスを破砕した。
翔「なッ…!!?? 貴様!!」
明「アンタのせいで慎一くん悲しんでんじゃないのよッ! ぶっ殺してやる!!!」
慎「待っ…五島さん!!」『もし弾が当たったりしたら五島さんが犯罪者に…っていうか相手は殺しのプロだぞ!!』
明日香はわめきながら拳銃を乱射した。
しかし、反動で方向がほとんど定まっていないせいで翔には当たらない。
翔が背中につけてあったライフルに手をかけ、それを構える勢いのまま明日香の拳銃を叩き落とした。
ガシャンと乱暴な金属音がして、拳銃は地面に叩き付けられ、明日香は攻撃手段を失った。
明「あ……」
翔「アンタみたいなのを信じた私がバカだったよ。」
慎『や…ばい…!!』
慎一たちと明日香たちとの間には少し距離があった。
それほどの距離でもないのだが、慎一はとっさに翔の気をこちらに逸らすために叫んだ。
慎「おいこの野郎!!!」
直後放たれた弾丸は、明日香の頭上を飛びこし、慎一の左頬をかすめた。
男扱いされるのを過剰に嫌うのを思い出して言ったのだが、相手の攻撃に容赦がないのを痛感して血の気が引いた。
翔「今何つった…?」
翔がライフルを慎一に向けたまま、ドスの利いた低い声で言う。
慎一は両足がすくんで動けなくなっているのに気付いた。
慎『ヤバい…、こいつやっぱり殺人に慣れてる…。殲滅協会ってそんなヤバいヤツの集まりだったのかよ…。ていうか今俺が動けなくてどうやって咲と五島さんを――――――』
明「うああああああああああッ!!!」
慎・翔「!?」
明日香が雄たけびを上げたかと思うと、翔が構えているライフルにしがみつき出した。
翔「このチビ……放せ!」
明日香はなおも雄たけびながら必死でライフルにしがみつく。
だが、慎一が何か策を練る間もなく振り飛ばされてしまった。
勢いでしりもちをつく明日香に、翔はライフルを向けた。
翔「散々邪魔しやがって…!」
慎『…!!』
気付くと、慎一は明日香の前に立ちはだかり、翔をにらみつけていた。
明「し…慎一く……」
咲「慎一くん!!」
翔もあまりに距離が近いので一瞬たじろいだものの、ライフルは1mmも動かさない。
慎一は恐怖と闘いながら、ひたすら翔をにらみつけ続けた。
翔が不敵な笑みを浮かべた。




