13-3
咲『え、女の子…?』
慎「お前確か……去年同じクラスだった………」
明日香は慎一が自分に喋っている緊張で言葉に詰まった。
?「五島 明日香。」
慎・咲「!?」
突然別の男の声がして、2人はまた驚いた。
明日香の背後の暗闇から、ライフルを携えた、格好は女なのに顔は男っぽいヤツが現れた。
慎「お、お前は…!」
咲「あの時の……。」
翔「久しぶりだね、2人とも。」
翔は余裕たっぷりの笑みで言う。
翔「こいつがね、咲を殺したくてしょうがないらしいんだよ。だから協力してもらってる。」
明日香の肩に手を置きながら言った。
明日香と面識がある慎一は驚き入るばかりだ。
慎「ご、五島さん…、何で……まさか五島さんも殲滅協会の会員なのか?」
明日香は一息飲んで、恥ずかしさでつむっていた目を開いた。
そして、夢中で口を動かした。叶わぬと知って。
明「……………好きだから。」
慎「…は?」
咲「え……」
明「私は―――慎一くんのことが好きだから!」
力を入れたせいで肩がいかり、腕が下がっている。
しかし、言い終わると、またすぐ拳銃を構え直した。
慎一が何か言う前に、明日香が繋げた。
明「だから、咲が邪魔なの! それだけよ!!」
恥ずかしさが極まってまたキレ気味に叫ぶ。
うっすら涙がたまっているのは、暗闇でも慎一には分かった。
慎一と咲は、何も言うことができない。
驚き以外の感情はよく分からないが、少なくともひとつではなかった。
翔「そういうわけだ。さ、咲を殺してくれ。」
翔は明日香の背中をトンと押した。
明日香は一度自分の両手に収まっている拳銃を眺めた。
今までさんざん策をこねくり回して、それでもできなかった咲の抹殺。
それが、もうすぐ叶う。
明日香は両腕をまっすぐ伸ばし、銃口を咲の顔に目がけた。
慎「!! ま…待ってくれ、五島さん! 咲を殺さないでくれ!!」
咲は、自分のせいで明日香が苦しんでいると思うと、殺さないでと言うことができなかった。
代わりにではないが、慎一だけが明日香に叫び続ける。
その慎一の懇願が震わしたのは、明日香の鼓膜だけではなかった。
明日香は慎一の顔を見た。
――――――笑ってない。
大好きなあの笑顔じゃない。
どうして? 笑ってよ……
あの日一國堂で見た、慎一の笑顔が視界を覆った。
慎「五島さん!!!」
銃声が響く。




