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13-1-2

服屋が立ち並ぶ商店街は、いつにも増して活気と人であふれていた。


そしてその人のほとんどがカップルである。


それに混じる慎一と咲も例外ではない。



2人ははぐれないように手をつなぎながら、服屋を吟味していた。




慎「クリスマスプレゼントだから、あんまり高くなければ買ってやるよ。」


咲「え、そんな、悪いです…。」


慎「いいっていいって。普段あんまり服とか買わねえんだろ?」


咲「それはそうですけど…。」


慎「ほら、せっかくいい機会なんだから、服の買い方も慣れとかねえとな。試着とか。」


咲「しちゃく?」


慎「…よし、とりあえず見てみよう。」



慎一は少し無理矢理咲を適当な服屋に引っ張り込んだ。















――――――――――――――――――――――













人は多いものの、広めの店内で2人を取り巻くスペースには余裕があった。


慎「ほら、どれがいい?」


咲「ええ、えっと……」


咲は観念したような、嬉しそうな表情で手近の服を見始める。



慎一は小遣いを下ろしてきたので懐に余裕があり、それで彼氏として太っ腹なところを見せようという魂胆だった。



咲もだんだんノってきて、手近の服を見終わると少し店の奥の方に踏み込んでいった。


慎一もついていき、咲の買い物に付き合う。




しばらくすると、「あ、これ可愛い」と咲が声を上げた。


咲が手に取っているのは、ベージュの生地の内側に白いふわふわが施されたオシャレ目な上着だった。


慎一はとっさにそれを着ている咲を想像し、心の中でサムアップした。



慎「それがいいの?」


咲「はい。」


慎「よし、じゃあ試着しないとな。」


と、また小首を傾げる咲をよそに、慎一は近くにいた店員に声をかけた。















――――――――――――――――――――















咲「どうですか…?」


その上着を試着した咲が、褒めちぎっている店員に愛想笑いを浮かべながら慎一に聞く。


慎一は慎一で、想像よりも似合っていたので思いつく限りの言葉で褒めちぎり、咲は恥ずかしさでどうしていいか分からなくなり始めた。




慎「よし、それ買ってやるよ。」


咲「ホントにいいんですか?」


上着を脱ぎながら、若干甦った後ろめたさで聞くが、慎一は構わずその上着を受け取った。



服をレジに持っていき、そこで初めて値札を確認する。


慎『………!?』





19,800円





慎一もあまり服を買うことに慣れていないので、予想以上の金額に一瞬「えっ」と声が出そうになり、慌てて飲み込んだ。



慎『い、いや、大丈夫…。俺の手持ちの3分の1くらいだ。大丈夫!』


慎一は意を決し、その服を購入した。





少し離れたところで他の服を見ながら待っていた咲の所に、慎一は勇者の顔で戻ってきた。


慎「メリークリスマス。」


と言って紙袋に入った服を手渡す。



咲は満面の笑みになって受け取った。


咲「本当に、ありがとうございます! 私にも何かプレゼントさせてください!」


慎「え、いいよ、そんな、気にしなくても。」


咲「いえ、私もプレゼントしたいです。それに、バイトやってるからお金には余裕あります。」



あ……と、慎一は思った。


全部親の小遣いを貯めた金より、自分で働いて稼いだ金の方がランクが上に見えた。




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