とりあえずの終息
土魔法と木魔法で作った臨時の橋も、崖からの高低差で上手く架からない。
ダンジョンに近づくと威圧と謎の精神攻撃に晒される。
そこに黒竜まで飛んで来た。騎士達は、本国に戻るしかなかった。
あれだけ脅せば、私なら来ないけど、大丈夫かな?
「師匠、ありがとうございました」
「ラスボス扱いしちゃってごめんなさい」
「面白かったので、いいですよ。それに私が現れても不思議はありませんから」
まあ、距離は離れていないし、私達も一度も姿を見せてないから黒竜と人が結託したとは思われないだろう。
「もうあとは放置でいいんじゃないですか?この先エルフと鳥人族がどのような関係を築いていくのか分かりませんが、良い関係でいようとするなら精霊が知らせる位は出来ますし、それに、あまり一つの種族ばかり贔屓するのは良くない事ですよ?」
「私はただ、折角助けたウィンゼル島を放ってはおけなかっただけです」
それに聖別の魔道具を解析されると不味いかなと思った。
それでも贔屓になるのかな?
エルフの人達は優しくしてくれたし、錬金術も教えて貰った。スカイもお世話になっているから、思い入れはあるけど鳥人族の人達は、別にそこまでは…。
多分結界碑は大丈夫だと思うし、たまに橋が出来そうだったら壊してあげようかな?まあ、サマルト様の作った結界碑が破られるとは思えないけど。
あと、しなきゃいけないのは、とりあえず撤退した事を話さないと。
「私、エルフの国に行ってくるね」
「僕も行くよ。スカイとユキは帰ってて大丈夫だよ。ご飯の用意しておいて」
「任せるにゃ!」
結界碑に拒否されないから、亜空間移動で直に来られる。
「マナ様、何かありましたか?」
「安心して、いい報告なので。とりあえず長の所に。鳥人族の長のアーサーさんも呼んで貰えますか?」
ご飯も出してもらっちゃったけど、ルードなら用意してくれた物も、ユキが用意してくれた物も全部食べてくれるだろう。
「とりあえずは撤退しました。結界碑も破られてませんし、散々脅したので、もう終わるかもしれません」
「僕達もこの件からは手を引こうと思っているので、あとは長同士話し合ってこれからの事は考えて下さい」
「もし、また現れたらどうしたらいいですか?」
「そっか…精霊の言葉が分かるのはエルフの人達だけだから、…エルフの人達は飛べないし。そこは何か考えてみます」
「確かに、ずっと頼る訳にはいきませから。魔道具が無事なら島は守られるのですよね?」
「下手に荒らされないようにする事が目的ですから、普通に攻略するなら問題ないですよ。今までみたいに、モチゴメを刈った後の藁なんかはダンジョンに捨てて下さいね」
「はい。家を建てながらなので時間はかかるかもしれませんが」
「隣り合う国どうし、こちらもできる限り支援します」
「本当に、このご恩をどうやって返したらいいか」
「お礼ならダンジョンコアに言って下さい…って、私以外会えないんだよね。でもダンジョンコアは鳥人族の人達の事、すごく気にかけてくれていますから」
「我々にはなくてはならないダンジョンに、そのように思ってもらえていたなんて…マナ様、どうかダンジョンコア様にお礼をお願いします。我々でできる事なら何でもします」
「伝えておきます」
強力な魔道具が開発されても、私の結界碑は多分大丈夫。新しい魔道具を持ってきたら様子を見てもいいけど、多分先にここの結界を破ろうとすると思う。
ルビー母さんにも伝えたけど、新しい設計図を持ってくるまで引きそうにないな。無理はしてほしくないけど、どうやってもらっているかも分からないからな…。
ツリーハウスに戻ってスカイとユキをもふもふしていたら、メールが届いた。
〈今回の事は、マナがどう判断して動くかを見せてもらったよ。ちょっと関わり過ぎかな?頑張りは評価するけど、最終的にはそこに住む者の力でどうにかできるようにしないとね。もっと広い視野で物事を判断できるようになろうね〉
今までは、好きに生きていいってスタンスだったけど、それは子供だったからなのかな?うーん。大人になるためのアドバイスかな?
「マニャ、どうしたにゃ?」
「ん。サマルト様からのメール。もっと広い視野を持てって」
「へえ。マナがいつまでも子供だから、サマルト様も心配になったのかな?」
む。まあ、逆に考えればすごく気にしてくれてるって事だよね。
そうやって考えてくれてるから、色々設備が増えて美味しい物も食べられるんだし。




