ミグの実と魔晶石
しばらく北に進むと、遥か先に大きな山が見えてきた。
「おおー。冠雪してるね」
「随分高い山だね」
「うにゃ…雪は嫌にゃ」
「!あ…もしかしてこれ?」
草花の間に紛れて、実を付けている。
クリーンをかけて、口に入れると、ぐにぐにした食感の、キャラメルだ。
「やった…!へえ。本当にそこら中に生えているんだね」
「満足した?」
「多分ね、これ、気温が高いと溶けちゃうと思うんだ。だから育てられないかもしれないから、沢山集める!みんな手伝ってね!」
「いや…ゲート開けておけばいいんじゃ?」
「ううん!夏しか生えないかもしれないから、いっぱい採るよ!」
一つ一つが小さいから、なかなか集まらないし、ルードは早々に飽きて昼寝始めちゃうし、ユキも虫を追いかけて行ってしまった。
「マナ、ごめん。僕も無理」
人化が解けたスカイが、影に入った。
「うーん、腰に来るわね」
「じゃあ、また今度にしようか」
結構集まったし、当分は保つだろう。
亜空間に入って一休み。ルビー母さんがお茶を用意している間に、私は魔石の合成だ。小さな魔石を幾つも合成して作った大きな魔石に、同じ位の魔石を合成する。…!やった?
綺麗な球形になった魔石は、看破してみると確かに魔晶石と出た。
「やった…!やっと第一段階クリアだよ!」
「え?マナ、魔晶石、出来たの?」
「うん!…えへへ。やっと出来たよ」
「…相変わらず非常識だな。マナは。普通は何年も錬金術の修行をしないと作れないよ?…まあ、マナの場合、今更か」
「何それ!まるで私が他の事でも非常識みたいな言い方。確かに常識には欠けてたけど、学校にも行ったし」
「いや、そういう意味じゃないよ。次は魔宝石だね」
「そうだね…先は長そう」
ソフトボール位の魔晶石を手に、ため息をついた。
農園に入って、アカツキの頭部に魔晶石を埋め込んでみる。
「どうかな?」
一応魔力は込めてみたけど、そんなに消費した感じはないから、微妙かな?
(上位魔法1回分デスネ)
あー。やっぱりそんなもんか。
元のボディには、既に搭乗出来るようになっている。少し胴が短かったので、くり抜いた部分を胴に練成し直したら、ちょっと胴長になってしまったけど、まあ、許せる範囲かな。
アカツキの制御核と魔晶石を元のボディに取り付けて、ルードの鱗を繋げて作った扉部分から乗り込む。
「アカツキ、海岸の大岩まで移動、そこでロケットパンチやってみて」
うわわ。思ったよりも揺れる。これも要改善かな?
「ロケットパーンチ!」
叫ぶのはちょっと恥ずかしいかな。
大岩は粉々に砕け散り、同時に魔晶石に込めた魔力も、ぐっと減った。
ダメだ。効率が悪すぎる。
「そういえばアカツキ、目からビームは、魔力使わないの?」
(裁キノ光デスカ。自然回復分デスネ。回数ハ制限サレマス)
ミスリルもヒヒイロカネも魔力はよく通すけど、制御核の近くにそんなに沢山魔晶石を付けられないし、やっぱり魔宝石を頑張って作るしかないかな。
ミグの実は、魔の森辺りの気温だと、溶けてしまう。亜空間だとギリギリ溶けない温度だ。農園は亜空間よりも少し暖かいので、無理だろう。種が出て来ない。
ただのおやつなので、欲しくなったら採りに行けばいいかな?
魔の森の魔石を合成すると、一発で魔晶石になる。
とりあえずそれで量産して、魔晶石同士を合成すると、呆気なく砕けた。
ここで挫けるのも悔しい。ネバーギブアップだ!
そういえば、ダスカーの王都はどこにあるんだろう?
あの大きな山にも登ってみたいな。富士山よりも高いのかな?
とりあえず付与はいつやりたくなるか分からないから、少しは魔石も取って置こう。
まだ、魔晶石も100%出来る訳じゃないから、技術が足りていないのだと思う。
今まで独学で錬金術も頑張ってきたけど、誰かにちゃんと教わるのもいいかもしれないな。
ポーラもおばあちゃんに教わって錬金術師を目指しているんだよね。どうすれば錬金術スキルが上がるか聞いてみようかな?
ツリーハウスに戻って、ルビー母さんが作ったお好み焼きを食べた。あ、ブタ玉だ。ブタじゃなくてハイオークだけど。
薄く削ったカシオブツがたっぷりと乗っている。
「こんなに、誰が削ったの?」
「にゃーが削ったにゃ。大きいのを囓るのも美味しいけど、薄いのも美味しいにゃ!」
「そうだけど、ユキが削っていると、増えるよりも減る方が速いのよね。削る道具はマナが二つ用意してくれたから、あとはルードにお願いしたわ」
ルードって、意外と単調な作業好きだよね。薬草摘む時は、お日様の誘惑に負けてすぐ寝ちゃうのに。
「明日は私、ポーラの所に遊びに行って来るね!」
「あら。珍しい。でもいいと思うわ。最近マナは根を詰め過ぎだと思うから」
何かに熱中すると周りが見えなくなる所は、前世から成長してないな。私。




