護衛依頼 5
次の日から、ラクルの態度が変わった。今までは、友達になりたいっていう感じはあったけど、今はまるで恋人のように扱ってくる。
そんな扱い、前世でも経験した事ないから、戸惑いしかない。
当然眷属達も気がつく訳で。
(マナ、何かあった?)
(うっ…寝てる時に偽装が解けて、髪と瞳を見られた)
(あー…。なるほど)
(何か対策を考えないといけないかしらね?)
(そうだね。依頼放棄は出来ればしたくないから、…うーん)
(とりあえずマナ、そんな相手を見かけだけで判断するような男に、騙されちゃダメよ!)
(それは大丈夫だよ。いくら恋愛経験ないからって、それ位分かるよ)
もう、二人ともえーって顔してるけど、私がそんなに迂闊に…ええと。
ちょっと今までの事考えてみた。……今から頑張ればいいよね!
次の町では、ギルドで盗賊達の事を聞かれた。事前に連絡が行っていたから、状況説明に齟齬がないかの確認だけだ。
最後に水晶に手を乗せて、すぐに終わった。盗賊達の討伐は、別途報奨金が出るらしい。
「終わった?なら、買い物に行こう。今日はここで一泊するみたいだし」
うう…でも買い物は私もしたいのさ。国境越えたから、何か珍しい物があるかもしれないし。
とはいえ、そうそう珍しい物がある訳ではない。というか、スーレリアの国は何度も来た事がある。王都もだ。
「食料品ばかり?お洒落には興味ない?…その腕輪は、いいデザインだよね。どこで買ったの?」
これは自作だし、色んな付与が付いた実用品なのさ。
ていうか、お洒落より珍しい食べ物を見つける方が私には重要。
「さあ?どこだったか…覚えてません」
「そんなに前に買ったなら、サイズ自動調節の付与が付いているかもしれませんね。素材もミスリルみたいだし、いいものだね」
元手はかかってないけどね。
「髪もただ縛るだけ?リボンは可愛いけど」
「動くのに邪魔にならないように縛ってるだけです」
うん。売ってるのは全部育てられる物だ。
あ、でもマトマは買っておこう。料理でよく使うし。
「随分たくさん買うんだね」
「料理で使うので」
「料理もできるんだ。すごいね」
「いや。普通です」
あとは、丸芋も買っておこう。アオナはいいかな。
季節の野菜を買って、収納庫に入れていく。
うん?あれは…木じゃないな。嗅いだ事のある香り?
看破 カシオブツ カシオブツの木を乾燥させた物。香木。食用可。
鰹節だ!…木、なんだ。びっくりだけど、これで和風料理が美味しくなる!やった!
ふふ。折角畑も拡張したし、カシオブツの木も売りに出されるといいな!
以外に安いカシオブツの木を買った。
「カシオブツはいい香りだよね。でもマナさんには、花の香りとかの方がいいんじゃない?」
いや、食用としてしか使わないし。香水とかって好きじゃないんだよね。汗かいてもクリーンかければ臭くないし。
あ、これは湖の近くのダンジョンで採れる花の香りの水飴だ。紅茶に入れると美味しいんだよね。また採りに行こう!
ん?こっちの水飴は、香りが違う。それに値段も高い。
「済みません、こっちの水飴は、どこで採れた物ですか?」
「同じダンジョン産だけど、たまに香りが違う水飴が採れる時があるのよ」
「おー!今度行ってみよう!」
「お嬢さんは冒険者かい?小さい子は無理しちゃダメよ」
「…あ、家族と行くので大丈夫です」
「マナさんは、Aランクなんだから、誇ってもいいのに」
「別に。私子供だから、あんまり信じて貰えないからいいの」
一々説明するのも面倒だし。
「ラクルさん、私に付いて歩っても食べ物しか見ませんよ?」
「あ…でも一緒に居たいからいいんだ」
どうせなら、ルビー母さんと見て歩きたいんだけどな。二人は、貴族夫婦に付いて歩っている。仕事だから、仕方ない。
マナは、次の食料品店に入った。自由に動いているけど、一応このお坊ちゃまの護衛って事になっている。
夫婦揃って喜んで送り出した所から、私とラクルをくっつけたいんだなと思う。
貴族の世界は分からないけど、伯爵と当代限りの準爵が釣り合うとは思えない。養える力さえあれば重婚できる世界だから、それなりの身分の人の下になるかもしれない。まあ、私にその気がないので全くの無意味になるけど。
何でそこまで私に…というより、金の瞳に拘るのかな?
サマルト様が体を作ってはくれたけど、私はちょっとレベルが高いだけの、ただの子供なのに。他の冒険者がどれ位強いか分からないけど、100超える人はたまにいるって話だし、強さなら私じゃなくてもいいよね?
食料品ばかり見ている私に、ラクルは不満そうだ。
護衛なんだから、行きたい所に付いて行くのに。変なの。




