表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
130/242

護衛依頼 1

 ジーナから、久しぶりに手紙が届いた。

〈済まない。マナ。マナの簡易転移装置の専用コードが知られてしまった。無茶な依頼が来ても、何も気にせず断っても大丈夫だから〉


 ジーナに何かあった?…もしかして、私と友達ってだけで、ポーラとソーニャにも…!


〈もふもふ家族様に指名依頼が入りました。王都のギルドに速やかに起こし下さい〉


 次に出てきた手紙に、マナの表情が凍りつく。ギルドを通す所が、また狡い。


(ルード、今何してる?)

(狩りだけど、何かあった?)

(戻って来て。相談したい事があって)

 こういう時は、人の社会をある程度知ってるルードが頼りになる。

 すぐに亜空間に来てくれた。他の眷属達も、私の不安な気持ちが伝わったから、来てくれた。

 私はすぐに、二枚の手紙を見せた。

「ジーナって、騎士の娘だっけ?」

「そう。お父さんが、隣のスーレリアの国で騎士してるって」

 マナはルードにぎゅっとしがみつく。


「狙いは誰かな…僕かマナか。相手は相当高位の貴族だと思った方がいいね」

 ルードが頭を撫でてくれる。

「無視したい所だけど、ギルドに依頼内容だけは聞きに行かないと。そこで受けるかどうかは判断すればいい」

「断っても大丈夫なの?ジーナに、友達に悪い事が起こらない?」


「絶対とは言えないけど、大丈夫だと思う。マナは何度か友達と手紙のやり取りをしてたから、簡易転移装置の所持にはギルド側も気がついていたと思うけど、そこは個人の事だから、コード番号を探ったりはしない」

「私が迂闊だったから」

「マナのせいじゃない」

「とにかく、これだけじゃ情報が足りないから、ギルドには行こう。ね?」


(僕は留守番…だよね?)

「特別枠に認められなかったからな。それにまだ、人化の維持に不安がある。本当にパーティーに入りたいなら、常に人の姿でいる位の努力はすべきだな」

(うっ…)

「ごめんね、スカイ。でもスキルは使わないと成長しないし。弓も命中もね?」

(分かった。頑張る)


 まだ覚えてから1年も経ってないスキルだから、仕方ないけど、討伐依頼とかだったら連れて行っても問題ないと思うけど、貴族が絡んでいるから違うだろうな。

 はあ。面倒な事になったな。


 王都のギルドは沢山の冒険者でごった返していた。

 というのも、空気を生み出す魔道具を、ギルドが販売まで手掛けているからだ。人数が多いパーティーは、使い回しながら使っているみたいだけど、他人が口に咥えた物を口に入れるのは何か嫌だな。

 新しいダンジョンが見つかったばかりだから、この混雑も仕方ないのかな?

 

 大人しく並んでいたら、順番が来た時に頭を下げられた。

「お待たせして済みません。ですが指名依頼なのですから、次回からは直接ギルマスを訪ねて下さい」

 指名依頼、のくだりで皆ギョッとしたように私達を見る。

「指名依頼だ?こんな若造のパーティーが?嘘だろ」

「姉ちゃん、そんな弱そうな奴らの所にいるよりも、俺達の所に来ればいい思いさせてやるぜ?」

 ルビー母さんは、さっきまで度々誘われてきたけど、その度に相手を威圧してたんだけど、懲りないな。

 因みに私は一度も誘われていない。ちょっとは私も、胸大きくなったのに!

 ユキは白い髪と赤い瞳なので、ルビー母さんと姉妹だと思われているみたいだ。

 

 とりあえず、指示された通りに、2階に上がる。

 ここのギルマスには前に散々怒られたから、ちょっと怖いな。


「おや、お久しぶりです」

 あれ?部屋間違えた?

「あ、間違えてませんよ?ギルマスが所用で外しているだけです。どうぞ」

 あ、ちょっと安心した。

「それで?どこの誰がマナ個人のコード番号聞き出した訳?」


「はあ。今回の依頼主とは別の方ですが」

「けど別に、ギルドに情報を売った訳じゃないだろ?」

「とりあえずは今回の依頼内容ですが、隣のスーレリア王国の王都まで、バレッタ伯爵様ご一家を護衛して頂く事です」

「ふうん…フォスター家は関係なさそう?ていうかさ、魔の森を突っ切るっていうんならともかく、わざわざAランク冒険者を指名する依頼でもないよね?」


「それが、こちらでもかなり有名な冒険者チームが盗賊達に同じ行程で大怪我を負いまして、かなり手練れの盗賊団が住み着いたようなのです」

「伯爵なんだから、私兵位いるんじゃ?」

「それでは不安なのではないでしょうか?」


「質問いいですか?確かギルド規定で、10歳以下の子供は護衛任務に就けないのでは?」

「そこはスーパー冒険者という事で。確かマナさん達は、対人戦はまだ経験ありませんよね?」

「そういえば、対人戦闘もこなせなければ高ランクにはなれませんでしたよね?」

「そうだっけ?」


 対人と言えば、先生をしばいたのは戦闘に入らないのかな?まあ、単なる半殺しだし、終わったあとちゃんと治療したし。ていうか、先生が指導して欲しいって言ったんだけど。

「普通はそうですけど、実力が違うので。これを機会に対人戦闘もこなせる事も証明して欲しいですね」


 さすがサブマスター。優しいだけじゃない。

 こんな風にいわれたら、断りづらい。

 ルードもそう感じているのか、眉根を寄せている。

 母さん達は交渉事には向かないので、最初からルードに任せる事になっている。

「マナにはそんな経験、させたくないわ」

「母さん、ダメだよ。これは仕事だよ?子供だからとか、そういう事言えないよ」

「道中に護衛対象に無茶言われても、断る権利はあるんだよね?」

「勿論。皆さんは王の賓客でもありますから。どういう経緯でそうなったか私達は知りませんが」


 うん。だからこそ、実力が知りたいって所かな?

「分かった。家族全員で当たるって事でいいのかな?」

「あ…申し訳ないのですが、獣人のユキさんにはご遠慮頂く事になります」

「何故だ?」

「奥様からの要請です。人族以外と旅は出来ないと」

「なら何でウチを指名したのさ?ユキが居るの知ってて」

「それは…済みません。ですが、兵士達も一緒なので、三人でも問題ないと、先方が」

「にゃーは要らないにゃ?」

「そうだね。本当ならそんな失礼な人、守りたくないんだけど」

 ていうか、そんな事言ったら、ルードやルビー母さんも参加できなくなっちゃうじゃん?魔物なんだから。

 

「それなら、それを理由に断る事もできるよね?」

「いえ、一度受けると言って頂いたのですから」

「後から条件変わるなんて、契約違反にならないのですか?」

「依頼相手によって内容が変わる事はよくありますから」

「確かに…仕方ない。ユキは今回はお留守番だな」

「別に一人じゃないし、いいにゃ。仕方ないにゃ」


 うーん。当分もふもふ無しか。仕方ないな。


 

 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 特別枠で、指名依頼されていたら、どこが特別なのと思ってしまうね。
[一言] 130話部到達おめでとうございます。 師走でご多忙かと思いますがお身体にはお気を付けて。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ