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-序-

 -序-

 真司は夢を見た。


 その人は、桜の気の下で微笑んでいた。

 風が吹くと長い髪が揺れ、同時に桜の花弁もひらひらと舞い落ちる。その人は揺れる髪を耳に掛け、微笑みながらこっちを見ていた。

 ただ、ずっと、見ていたのだ。

 真司は何かを言おうと口を開く。でも、それはその人の方が先だった。

 その人は微笑みながら、ゆっくりと口を開くと、あることを言葉にするが、真司にはその人の言っていることが聞き取れなかった。


『――――』


 ――え? 聞き取れなかった。もう一度言って。


『――――』


 その人は同じ言葉を口にする。だけど、やはり真司には聞き取れなかった。

 すると、その人の姿が段々遠ざかって行った。


 ――待って。何処に行くの? ねぇ、待って!


 手を伸ばして掴もうとするが、それは無意味だった。

 その人は離れながらも何かを話している。


『――――』


 ――お願い……行かないで……待って!


「待ってっ!!……っ!?」


 真司は真司が伸ばした手を見つめ、ハッと我に返る。


 ――ピピピピッ。


 頭の上で目覚まし時計が鳴っている。真司は身体を起こし伸ばしていた手を見た。

 何かを掴もうとしていたのか手をギュッと握っている。真司は握っていた手をそっと開くと、掌には桜の花弁が一枚乗っていた。


「……桜?」


 そう呟いた瞬間、真司の髪が微かに揺れた。

 どうやら、窓から風が吹き込んだらしい。案の定、机の上には外から入った桜の花弁が数枚落ちていた。

 真司は、今もまだ鳴り続ける目覚まし時計を止めた。

 そして、手に持っていた桜の花弁を机の上に置き、壁に掛けてある学ランに着替える。大きめに作っておいた学ランは、少しだけピッタリになったような気がした。


「身長伸びたのかな?」


 自分ではよくわからないが、何となくそう思った。

 もしかしたら、気のせいかもしれない。だけど、真司はそう思うことにした。


 だって、今日から新しい学年――二年生になるのだから。

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