破天荒な女神現る-十二‐
しかし、こうも当てられると少し戸惑ってしまうもの。真司は目を逸らし「は、はい。会いました……」と、少し気まずい気持ちで菖蒲に言った。
「でも、どうして―――」
「わかったのか、かえ?」
「は、はい」
菖蒲は、フッと笑う。
「簡単なことじゃよ。お前さんに残り香があるからの」
「残り香? え、何か匂いますか?」
腕を鼻先に当て、スンスンと自分の匂いを嗅いでみる真司。しかし、匂いはいつもと変わらない服の柔軟剤の匂いがするだけだった。
真司は、ふと、この行動にデジャブを感じる。
(あれ? そういえば、この流れって……)
そう、残り香の話は多治早比売命から聞いたことだった。
そして、今、真司がしているこの行動も又、あの神様と同じことをしていた。
違うといえば話し相手が違うぐらいだ。しかし、その話の下りを知らない菖蒲と戻ってきた白雪は、匂いを嗅ぐ行動に可笑しく思ったのかクスクスと笑っている。
「ふふふっ」
「ふふっ」
「うっ、白雪さんまで……」
二人に笑われたのと、同じことを二度してしまったことに恥ずかしくなり、思わず下を俯き、長い前髪に触れる。
照れ隠し成らぬ恥ず隠しだ。
白雪は各々の前に紅茶とお茶を置くと、お雪の隣に座った。
「ふぁふぃふぁとー♪」
「……ありがとう」
「ふふっ、どう致しまして」
「ありがとうございます。あ、そうでした。さっき思い出したんですけど、残り香って確か気配ですよね? 神様が教えてくれました」
「ふむ。間違ってはおらんの。正確には"気"じゃ」
「気?」
「オーラとも言いますね」
「……んん?」
真司はよくわからず、首を傾げる。
「神は清浄な気を纏う。その神の気が残っておる、ということじゃ」
「はぁ……」
菖蒲の話に曖昧な返事をする真司。
菖蒲は真司がよくわからないでいることに苦笑いすると話を続けた。
「普通の妖怪は気づかぬな。私や白雪みたいに力があれば気づく、微小なものじゃ」
「そういえば、真司さんは感じませんでしか? 神様の隣にいて」
「隣にいて、ですか?」
「えぇ。いつもと違うことをです」
真司は何も無い天井を見上げながら考えると、ふとあることに気がついた。
「あっ! そういえば、離れていても変な物がいるなってわかるのに、今回は全然わからなかったです!」
(そうだ。確か、あの通りは林に覆われて薄暗く、人じゃないモノもいたんだった。でも、あの神様と歩いた時はいなかった……)
真司の言うことに菖蒲は小さく頷く。
「ふむ。私達なら兎も角、下級やそれ以外のモノは神の纏う清浄な気には弱いからな。何せ、最悪、浄化されてしまうからのぉ」
「じょ、浄化ですか……?」
「ま。ざっくり言えば消えるということじゃな」




