表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Cheeze Scramble  作者: 神山 備
魔法使いの妻編
47/61

VSお姉

神部姉妹の攻防戦、しかも語りが千鶴。会話も地の文も全部大阪弁一色で読みにくいかもしれませんが、お付き合いください。

「ちる! ちるとちゃうのん? あんた何でこんなとこにおんのん。幽霊……ちゃうよな」

お姉は子供の時からの懐かしい呼び方であたしを呼んだ。けど、

「あ、かんちゃんのお姉さんですか? 初めまして、あたしは千鶴さんのツレやったマナミ・ノエ・レ・ロッシュと言います。

千鶴さんが亡くなったんは、人づてに聞いて知ってたんですけど、あたし今、『イギリス』に住んでるもんで、お参りに来んのがエライ遅れてしまいました」

あたしは『お姉』と呼びたいのをぐっと堪えてそう挨拶した。あたしはもうこの日本では死んどんやから。

生きててもパラレルワールドなんておいそれと行かれへんとこにおる以上、死んどんのと一緒やから。ゴメンお姉、あたしフレンの方採るわな。

 それを聞いてお姉は一旦

「はぁ、それはどうも」

てあたしに頭下げたけど、ちょっと首捻ったかと思うと、

「あんたやっぱりちるやろ! 野江愛実って、それあんたが一回だけエロ書いたときのペンネームやないか。何で、うちにまで正体隠そうとすんや。あ、うしろのそいつに脅かされとんか」

とあっさり正体を見破って、フレンを睨む。しもた、お姉はあたしの小説の一番のハードユーザーやったんやった。もしあたしの小説のキャラの名前で誤魔化したとしても、お姉やったら『〇〇(作品名)の脇キャラやろ』て言うかもしれん。そう言うても、今まで何かに使こてない名前なんかぱっと思いつかんもん。お姉にはバラさなしゃーないか。

「バレたらしゃーないわ。お姉、久しぶり」

「何が久しぶりや。うちらがどんだけ心配したと思てんのん」

観念して言うたあたしに、お姉はそう言うて鼻息を荒うする。

「それはホンマにゴメンて。せやけど、あん時は連絡の取りようがなかったんや」

せやからあたしは、頭の前で合掌した手を振ってそう返した。

「怪我とかしとったとか? ほんなら動けんやろし、記憶喪失とかベタなこと言うんちゃうやろな」

ま、普通考えるとしたらソコしかないやろな。経験してへんかったらあたしでもそう考える。

「えーっと……ああ、説明しにくいなぁ、説明しても信じてくれへんやろから」

どうやって説明しょう。頭抱えてるあたしに、

「そんなもん、言うてみな判らんやろな」

お姉はそう言う。

「ほな言うけど、途中で茶々入れなや……あんな、あたしあの爆発で異世界に行ってもうてん。そこで拾てくれたんが、このフレン」

と説明してから、

【フレン、これがあたしの姉の晴海・中川】

とフレンの方向いてオラトリオ語でお姉を紹介する。

【義姉上、お初にお目にかかります。フレン・ギィ・ラ・ロッシュと申します】

そしたら、フレンは胸の前に手を置いて、優雅にお辞儀した。その仕草にお姉はちょっとビックリした顔はしたけど、

「アホらし、ウソつくんやったらもうちょっとマシなウソつきぃや」

て言いながらヒラヒラと手を振った。

やっぱし……

「ほら、信じひん。せやから言うのイヤやったんや」

あたしは、そう言うてお姉を睨み返したった。ほんだら、

「そやかてあんたら英語しゃべってるやん」

てお姉から返ってくる。せやから意地んなって、

「ちゃうもん、似てるけどコレ、オラトリオ語やもん。

かなり英語に近いんやけど、微妙にちがうねんから。

行った最初の頃は、電子辞書は一緒に向こう持って行ってたから引いてみるんやけど、分からへんこともようけあったんや。結局習うより慣れろを実践してこの三年半きたんやで」

てあたしは力説したけど、

「ふーん」

てお姉の反応は暗い。

「ま、信じても信じんでも、事実に変わりないからな。

ほんで、フレンとフレンの家族はどっこも行くとこのなかったあたしを、家族の一員みたいに可愛がってくれて。あたしら一年半ほど前に結婚してん」

どうせ、この話も絶対にツッコミ入るのは判ってるから、あたしは残りの話を一気にしてまう。

「結婚? 結婚てちょっと待ちぃや。親にも連絡せんで結婚はないやろ」

案の定お姉は、結婚という言葉に眉毛を大きくつり上げて、

【ちょっとあんた、他人様の大事な娘に手を出して、シカトって、どういう事よ】

とフレンに詰め寄る。胸座も掴みたかったみたいやけど、それはあたしが間に入って止めた。

【いや、それに関してはどれほど詫びれば良いのか。俺がもっと早くに戻れるよう、計らうべきだったと反省している】

ほしたら、フレンは恐縮してで小そうなってそう答えた。

「せやから、やっと戻れたんやて!」

もう、メンドいなぁ。どない言うたらええんや。他のことはともかく、異世界トリップの事実だけは理解してもらわんと前に進めへん。

「こっちに戻ってくる魔法が分からんかってんもん、しゃーないやん」

せや、魔法があった! 何か魔法出してみせたら、さすがにお姉かて納得するしかないやろ。あたしは、

「魔法て、なに寝言言うとんねん」

と言うお姉を引っ張って駐車場まで行き、

「お姉の車て今でもコレやよな」

と、オレンジ色のラテを指さして、

「当たり前やん、そんなしょっちゅう変えてられるかいな」

と言うのを聞いた後、あたしはすっと胸の前に手を出すと、

[汝、その重さを羽の如くし、我の手の動きに従え Move!]

と叫んでお姉の車を持ち上げた。


お姉の車が「ラテ」だけに使う魔法はもちろん「Move」(なんのこっちゃ)


ホント、女3人寄ったらかしましいとは言いますが、こいつらは2人でもこのやかましさ。しかも延々とマシンガントークを続けるので、何遍「じゃかぁしい」と怒鳴ったことか……


お姉の車は果たしてどうなる? ということで、次回。


※最近、お姉というと性別が……なのですが、晴海は生物学上も女性ですので、お間違いなく。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ