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Cheeze Scramble  作者: 神山 備
魔法使いの妻編
41/61

期待

 あれからランスさんはフレンを馬車に乗っけて連れて帰ると、城中の治癒師を総動員して、ホンマに三日で怪我治してもうた。ウォーレンさんがもう少し着くのが遅かったら死んでたやろうって言うてたぐらいの大怪我を。

 

 で、あたしはと言うと、フレンの実家(って感じはせん、とんでもないお城やけどさ)に着いた途端、ジーナさんに拉致られてフレンと離された。

「ギィちゃんはジェドちゃんに任せておけば大丈夫よ。

それより、チーズちゃんにはやることがたくさんあるのよ」

て、広間に連れてこられたと思たら、二人がかりでウエディングドレスの採寸。その横で、あたしに似合う生地(言うても、白の生地なんてそうバリエーションないと思うんやけどな)をとっかえひっかえあたしの体に当ててんのがおったから計三人か。その間にデザインの話は一切なし。ま、お貴族様の結婚式やから、あんまし奇抜なデザインなんかせぇへんやろうし、無難にオーソドックスなローブデコルテで決まりやねんやろ。正直、そういうの嫌いやないしと。実際、シンプルやけど、すごーくすてきなドレスやって、めっちゃ嬉しかった。


 それから、バラ風呂に始まって、香油使って全身マッサージ。終わったときには、タオルで拭きまくった後の猫型ロボットみたいに、鼻まで光ってた。

 まぁ、そこまでは日本でもやるかもしれんけど、大変やったのはここから。招待した王侯貴族への対応ってやつ。

 まず何よりも、三百人からの名前を覚えんならんのには閉口した。

 いや、別にあたしの記憶力はどっちかと言えばええ方になると思う。けど、ここの世界に写真なんかあらへんから、全部字面で覚えんならんし、それも当たり前やけど全部アルファベットやから、覚えにくいことこの上ない。漢字やったらまだ、意味考えながら覚えられんのに。ああ、あっちにスマフォをおいて(カラオケで時間見るのにあれだけ別に置いとってん)へんかったら、フレンに充電してもうて、誰かに写メ撮ってもろたのに……けど、フレンに無理はさせられへん状況やったから、それもムリか。

 それから、王族の方々に対する挨拶の仕方とか。ダンスも一旦は言われた。けど、これはフレンが

「怪我が治ったばかりで上手く踊る自信がない」

と言うたら、やらんでええようにしてもらえた。これでダンスまで練習せんならんかったら、あたしホンマに死んでたと思うわ。


 こんな風に突貫工事のにわか姫のあたしとフレンはたった一週間で夫婦になった。ま、二年前のあのときにいきなり結婚式って言われててんから、それ考えたら二年でもじっくりお互いを見れたんはよかったんかもしれへん。それでもなんだかなぁって感じはする。


 そいで、結婚式を終えた後、あたしはもちろんすぐメイサに帰るつもりやったんやけど、そうはでけへんかった。

 なんでかっていうと、それはずばり、フレンが死にかけたときあたしが切羽詰まって創った魔法、[電話][テレビ電話]をお城の魔法使いみんなにレクチャーせんなんようになったから。

 [テレビ電話]の方はかなり魔力すり減らすんで、使える人はあんまし多くないんやけど、[電話]の方はそんなに魔力要らんのよね。せやから、各地の魔力を持った兵を順にシュバルに呼んで指導にあたることに。おいおい、熟練者に任していくにしても、その子等を育てるまではあたしがやらんならんのよね。折角の新婚生活が台無しや。ま、二年も夫婦みたいに一緒に暮らしてきて、今更新婚生活もないけどね。

 それにしても、フレンを助けるために使ったこの魔法で、一気にこの結婚が進んだんやけど、同じ魔法で新婚生活が脅かされるとは、夢にも思てへんかったよ(ため息)


 そんで、あたしたちはシュバルの外れにある家を買い取って、そこで暮らすことになった。もちろん、ジーナさんは敷地内に建てるて聞かんかったんやけどね。ちび黒ちゃん改めサンボちゃんのこともあったし、(なんせ豹やから。それにフレンとあたし以外には懐かへんもんで、みんなが怖がるんやな、これが)何せあたしら新婚やねんから、ちょっとくらい二人で過ごしてもええやんかってことで。

 ただ、王城に教えに行った帰りとかには、しょっちゅうジーナさんやクレアさん(ランスさんの奥さん)レリスちゃん(ランスさんの娘さん、レミくんの妹ちゃんやね)のとこに遊びに行く。一緒に住むのはちょっと……やけど、遊びに行くのはまた別。所謂スープの冷めへん距離って奴?


「ねぇねぇチーズお姉ちゃま、この本読んだ? 今すごい人気なんだよ」

ランスさん家(ここも本家ほどやないけど、家レベルとはちゃう。ま、住んでる人が家やて言うんやからそうしときましょ)に入った途端、レリスちゃんが一冊の本をニコニコしながら持ってやって来た。

 あたしは、自分で書くぐらいやから、文字を読むのは病的って言うぐらい好き。中学二年生で書き始めるまでは、それこそ親に渡すお知らせの紙までしっかり読む子やった。

 書き始めてからはさすがにそこまでせーへんようにはなったけど、その代わりにネット小説を読むようになったかな。

 けど、ここでは言葉も文字も英語。英語漬けの生活を二年以上も送ってると、それなりにしゃべれるけど、本となるとまた違ごてくる。けど、本は読みたい。

 ほんで、子供向きの本やったらいけるかなと思てレリスちゃんにオススメを聞いたら大正解。絵本から始めて、今はそこそこ難しい本も読めるようになった。

 決め手は音読。特に会話部分は音にした方が、今まで知らんかった単語が挟まってたとしても、カンでいけるんやわ。けど、

「どんな話なの?」

と聞いたあたしは、レリスちゃんの、説明を聞いてフリーズした。

「男の人二人が、乗り物ごと界渡りする話。

その乗り物がまたすごいの。馬もつけないで走っちゃうんだよ」


……馬も付けんで走る車って、それ自動車やん!


ひょっとしてあたし以外にも、このオラトリオに地球人がおんの?

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