VSちび黒ちゃんママ
※残酷表現アリ。
「ねぇ、あたしはこのちび黒ちゃんと遊んでただけで、何も苛めたりしてないよ」
あたしはちび黒ちゃんママにそう叫んだ。その声を聞いて、ちび黒ちゃんママはフレンの方を向いていた顔をあたしに向けた。
(あんたか、あたしの可愛い仔にちょっかい出しとる奴は)もちろん人間の言葉はしゃべられへんけど、ちび黒ちゃんママの目はそう語っていた。
一方、フレンはそんなあたしの叫び声に思いっきり舌打ちをしてあたしを睨んだ。どうせ、余計ことすんなと思てんねんやろけど、あたしは気にせんとちび黒ちゃんママの方を睨む。何でて、こういうときは目逸らした方が負け。誰や、お前はヤンキーかって言う奴。せやかて普通そうやんか。大阪では常識やで(作者注:そんな常識ありません)
そして、フレンは睨み合いを続けているあたしとちび黒ちゃんママを横目で見ながら、なんか魔法を詠唱し始めた。魔法もようしたもんで、その威力が巨大になればなるほど詠唱時間は長ごなる。その間の時間稼ぎだけでもこの状態が保ってくれたらええと思いながらあたしも睨み合いを続ける。
やがて、ちび黒ちゃんママの上に轟音を上げて雷が降り注いだ。ちび黒ちゃんママがどうっと倒れる。倒れた母親にちび黒ちゃんはトコトコと近づき、
「みゃぅ~」
と切ない声を上げながら母親の体をペロペロ舐めた。あたしは、
「フレン、ちび黒ちゃんママ死んだの?」
と、聞いた。そしたら、フレンが
「いや、死んではいない。しかし、しばらくは動けまい」
と言うので、安心する。けど、
「ごめんね、ちび黒ちゃん。お母さん、痛い目に遭わせて」
とちび黒ちゃんに謝ってたら、
「ぐずぐずしてないで、ほら行くぞ」
とフレンは私の手を引っ張ってとっとと山を下りようとする。そやな、いつまでもここにおったら、その内ちび黒ちゃんママ復活するもんな。
あたしたちは手をつないだまま無言で山を下った。
そして、後もう少しで街道に差し掛かるというところで、あたしたちの前に黒い影が横切った。それはなんとちび黒ちゃんママ。あの雷食らって、追いつけるやなんて、どんな身体能力しとんねん。雷食らったダメージは少なないとは思うんやけど、その分食らったことに対して怒りマックスに達してるから差し引きゼロというか、メラメラと炎が見えるほど怒ってんのが判る。
こうなってまうと、あたしの似非睨みなんて全然役に立たへん。ちび黒ちゃんママはまっすぐにあたしの喉笛目がけて飛びかかってきた。あかん、もう終わりやと思たそのとき、フレンはあたしを突き飛ばしてあたしの前に立ち……
「ぎゃぁ、フレン!」
フレンはガブっとちび黒ちゃんママに噛まれた。割り込んできたんで、喉笛からはちょっと外れたけど、それでも首の下の方。フレンの体から、一気に血が噴き出す。
あかん、このままやったら二人とも殺されてまう。結果なんか考えてる間ない。
あたしは電子メモを出さんと自分が得意な炎系、しかも最大級の魔法を自分の口で唱えた。
無事、魔法が発動しますように……




