表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Cheeze Scramble  作者: 神山 備
魔法使いの弟子編
34/61

二年後……

 あたしが、このメイサと言うか、オラトリオという世界にたどり着いてから、二年という月日が過ぎた。サバを読まれて十八歳にされてもうた年齢も、ついこの間二十歳を超えた。


 最初、魔道語がうまく発音できんかって途方に暮れた魔法も、フレンがあたしが持っていた電子メモに魔法をかけて呪文を詠唱させるという荒技をやってのけてくれたんで、あたしは無事魔法少女(誰が少女って年かって? 煩いなぁ……ええやんか、自分で言うのはタダやん)デビューを果たして、フレンの助手として働くことができた。

 まぁ、確かにそうして魔法使いの弟子としてはすこぶる順調で毎日が楽しいのは事実なんやけど、それでもちょっとまずったなぁと思てることはある。それは……恋愛フラグちゅうかな、それが立たへんこと。

 なんでかって? えーと……それはあたしがフレンの愁波ことごとく[メガトンハンマー]で叩き壊してるから(苦笑)。誰や、それ、お前が悪いんやって言うてる奴。


 そら、今でこそこうやって魔法の師匠としても、薬学(フレンのやってることは医療行為より薬剤師の仕事の方が多い)の先生としても尊敬してるし、いきなりトリップしてきたあたしを置いてくれた家主としても感謝してる。

 けど、こっち来た当初はとにかく帰りたかったしさ、フレンはジーナさん(あ、これ、フレンのお母の名前な)にせっつかれてとりあえず嫁にしとかなあかんとかプレッシャーあってんやろうけど、せやからこそよう知りもせんあたしに寄ってくんのが正直ウザかったんや。 

 ちなみに[メガトンハンマー]ていうのは、そのまま夜店で売ってるアレな。

 フレンが最初になし崩しに迫ってきたとき、咄嗟に有名なアニメのエロいスナイパーさんが頭に浮かんで(せやかて何気に顔も似てるやもん)、[天誅、炸裂しろメガトンハンマー]て言うたらパコンという音と共に、ホンマにフレンの頭にそれが降ってきたんやから。これには出したあたしの方がびっくりした。

 魔道語て言霊と広義では同じみたいやら、魔力さえあったら後は明確な脳内ビジュアル力で案外新しい魔法生み出せるかも知れへん。その面では妄想体質のあたしはオラトリオ一の魔女になれる自信がある。けど、それが出来ても頭に浮かんだ魔道語を正確に言われへん時点でアウトやからな。悔しいから、調子扱いて寄ってくるフレンに毎度お見舞いしてる内に今に至るっと。 

 まぁな、最初はともかく、ええかげんここの生活に慣れて、フレンと一緒におるのが当たり前になっても、せやから言うていまさらそのスタンスを変えられへんというのが本音やねん。


【なぁ、チビ黒ちゃん、どうしたらええと思う? 

……って分かる訳ないか】

で、あたしは今、裏山で(この山全部ロッシュ家の土地や言うねんから驚き)どこにも持って行かれへん話を、このちっこい黒猫ちゃんにしてた訳。こっちの世界の人間やないあたしには、相談する友達なんかおらへんもん。

 けど、この黒猫、別にウチらが飼うとる訳やのうて、ホン今しとととと寄ってきただけやねんわ。人間ちゃうからって大阪弁でしゃべってるし。まぁ、聞いてくれるだけでちょっとはすっとするから、このまま聞いとってな。


「チーズ、少しは集まったか」

そこに、向こうの方で薬草を採っていたフレンが来た。やばっ、チビ黒ちゃんに話しかけとってあんまし集めてへん。

「何をしている。早くしないと山の日暮れはただでさえ早いのだぞ。松明を持って歩くのも不自由だし、何より夜はそろそろ冷える」

案の定、フレンがあたしの集めた量を見てそう言う。

 そう、ここアシュレーンは、昼と夜の寒暖の差がめちゃくそ激しい。で、あたしは最初の冬、あまりの寒さに耐えかねて、ジーナさんに優秀なお針子さんを紹介してもうて、その人に説明しまくってどてらを作ってもうたくらい。  

 けど、あくまでも個人的な注文でつくられたそれは、なんでかあっと言う間に口コミで広がり、本来のどてらとは似ても似つかんヨーロピアンな柄のそれを着てシュバルのメインストリートを闊歩するお嬢様が多数という信じられない現象が起こったんやけどね。


 ま、それは置いとくとして、フレンがそう言うと、チビ黒ちゃんが、

「みゃぅ~」

とあたしとフレンの間に立って威嚇する。

「何だ、こいつは」

それを見て、フレンは露骨に渋い顔をした。こいつ、ヤキモチ焼いとんなと思ったあたしは、

「ん? あたしがクポの実を拾ってたら寄ってきた。

かわいいでしょ」

と、チビ黒ちゃんの頭を撫でながらドヤ顔でフレンを見た。

「可愛いだと! よくそんな恐ろしいことが言えるな。

 チーズ、そいつを愛でている手をすぐに引っ込めるんだ。そいつはお前の世界にいるネコとかいう動物ではない。ファビィだ!」

けど、あたしの言葉に対してフレンがそう返した答えは、ちょっとだけ上擦っていた。


んで……ファビィって何? 

ファビィくん、実は「稀代」の地の文にちょこっと顔を出している動物ですが、本格的な説明は次回。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ