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薬草園

翌日から俺はチーズを伴って薬草園に行き、彼女に土興しからやらせた。彼女がいなくてもビーノの植え付けはやるつもりだったし、何より、彼女が『界渡り』の大魔法を使いたいのであれば、この非力そうな腕を少しは鍛えねばな。

 ただ、俺はそれを教えてやる気はない。自力でそこにたどり着くにはますます体力が必要だからな。

 

 ところで、ビーノは野生と栽培とでは薬効が著しく変わってしまう繊細な植物だ。おそらく、土が問題なのだろうと思って、今回ビーノが群生している山から土を採取して大量に運んである。それ以外に通常の薬草園の土でも栽培し、さらには収穫時に野生のビーノも採取して、3つの薬効を比較しようというわけだ。


 チーズは土興しを命じたとき、あからさまに俺をにらんでいたが、だからといって騒ぎだすことなく、黙々と作業を進める。こいつ、頑固な上に相当な負けず嫌いと見える。


 そして、それから約三日、ようやく土興しと作付けが終わった。

 チーズはホッとしたのか、ハンナが用意した弁当を食べ、木陰でうとうとしている。眠っている顔は、それこそ幼子のようだ。俺はその髪に思わず手を伸ばしてそれを撫でつけ、ひっこめる……俺は何をやってるのだ。顔は幼くても働いているようだから(よくは判らないが、毎日移動して光の箱に向かっている、あれは仕事だろう)こいつは歴とした成人だぞ。

 

 北のガッシュタルトやグランディールに比べれば大したことはないが、それでもこの季節はここアシュレーンでも汗ばむほどの暑さになる。土いじりに慣れていないであろう彼女がここまで頑張ったのだ。少し休息をやろう。俺はそう思って、薬草園の奥に向かった。ここ三日、ビーノの作付け作業にかまけて他の作業はまったくと言ってお留守だったからだ。

 とは言え、元は野草。そんなに手入れ必要ではないが、中には時期を外せないものもままある。アスパルに土をかぶせるのもその一つだ。

 アスパルはそのままでももちろん使えるが、土を被せて太陽を遮断することで、体への吸収が格段に良くなる。ちょっとしたことで速効性があがるのだから、やらない手はないだろう。

 そして、その作業に夢中になっていた俺は、薬草園に近づく者があるのを不覚にも見逃してしまったのだ。


 入り口の方で、馬の嘶く声がした。今日は客の来る予定はなかったがと思いながら声のする方を見ると、馬車がものすごい勢いで走り去るのが見えた。


 悪い胸騒ぎで、俺の心臓がドクンと跳ねる。俺は、作業道具をかなぐり捨ててチーズのいた木の下に走っていったが、果たしてチーズはそこにはいなかった。


こちらではアスパラガスは薬草のようです。大体、オラトリオでは医食同源なので、食用として栽培してなかったというだけで、かなりの野菜が薬草登碌。


さぁ、千鶴が消えました。フレン、なりふり構わず千鶴の許に走れ!

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