人はそれを……と呼ぶんでは? 2
魔法は、その持続こそが難しい。そう高度ではない術でも、長く効果を保ち続けようとするには、相当な精神力が必要だ。だから、俺たち魔を操る者たちは、精神力が減ってきたときには体力を精神力に置き換えてチャージする術を唱える。
とは言え、潤沢に魔力を持つ俺はチャージせねばならぬほど枯渇することは今まで経験したことがないが、あまり魔力が高くない者でも懸命に体を鍛えて弱いが持続する魔法を駆使し、魔法騎士として名をあげた者もいるし、総じて王宮の魔術師たちは体力づくりに余念がない。
自室に戻った俺は、早速『彼女』が今何をしているのかと横になった。『彼女』の夢を見るためだ。
彼女はさっき一緒だった仲間たちと歌を歌っていた。
それにしても不思議なのは、彼らが小さな板に何かを書き込むと、さっき入っていった部屋の真ん中に鎮座している光る箱から楽器もないのに急に歌が流れ出すのだ。その際にも、誰からも呪文の詠唱はないし、魔力の移動や流出はない。そもそも、『彼女』から以外魔力は欠片も感じられないのだから。信じられないことだが、こんな魔法的なことを彼らは魔術を一切介さずにしているようだ。
そして、どうせ何を歌っているのかも解らないし、早々に『アクセス』を切り上げようと思っていた時だった。
「I need you」
という歌詞がいきなり俺の耳に飛び込んできた。それで注意してよくよく聞いてみると、ほんの少しではあるが、断片的にオラトリオ語が使われているではないか!
そのうちに、『彼女』が別の女性から歌うときに手にするロッドのような物を受け取って立ち上がった。
【いつものやつ、いくん?】
『彼女』はその女性に何か言われて頷くと、ゆったりとしたメロディーが流れ出す。
そして歌いだしたのは、なんとオラトリオ語の歌だった。凛として歌う姿は、その天を讃える歌詞も相まって、さながら天の使いのようだった。
タッチパネルでカラオケしてるのも、そういうことを全く知らなければ、きっと魔法に見えるんじゃないでしょうか。
ホントはもう少し進むつもりだったのですが、フレンのクソ長い説明で疲れてしまったので、次回。
次回はやっと……来ます、たぶん。




