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【Web版】どうも、勇者の父です。~この度は愚息がご迷惑を掛けて、申し訳ありません。〜  作者: 赤金武蔵
第五章 海の国

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第102話 海水、展開する

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 海に住む巨大な怪物、クラーケン。

 ネプチューンと同等の大きさを誇るそれは、8本の脚と2本の触腕をうねらせて王城へ入ってくる。

 さすがの気持ち悪さに、ネプチューンは顔をひきつらせた。



「ジュニア……奴の(せがれ)か」



 思い出されるのは、20数年前。クロアが初めてここを訪れた時。

 当時、ディプシーの近くに巣食っていたクラーケン。

 ネプチューンでさえ苦労していたクラーケンをクロアが仕留め、ゲソ焼きにしたのはいい思い出だ。

 あれに比べたら確かに小さい。子供というのも頷ける。

 が、たった20年でここまで大きくなるとは思わなかった。



「こいつはちいせぇ時に海で拾ったのよ。げひひひひっ。大切に育て、ディプシーは敵だと教育した……こいつで、このディプシーに住む魚人を支配する!!」



 ギャングの頭領がクラーケン・ジュニアの頭に立つ。

 ネプチューンを睨む眼光が鋭い。今にも食ってかかりそうなほどだ。



「貴様の親は、確かに化け物だった。海の悪魔と呼ばれるのも頷ける。……だがしかし、貴様はあれに比べれば小悪魔よな」

「────!!」



 クラーケン・ジュニアが触手のように手脚を動かし、ネプチューンへ襲いかかる。

 トライデントを手に、触手を切り裂き、貫く。

 いくら武器を持っているとはいえ、クラーケン・ジュニアの手脚は10本。

 しかも超速再生能力まであるからか、切り落としてもすぐに生えてくる。

 それに加え、切り落とした触手の生命力も半端ではない。

 本体と離れているのにまだ動き、ネプチューンへ迫る。



(くっ……! やはり奴の遺伝子を継ぐだけあり、しつこい……!)



 このしつこさが、ネプチューンを長年苦しめてきた。

 クロアがこれをどうやって仕留めたのか、本当にわからない。

 本人曰く、殴って終わりと言っていたが、これを拳で倒せるなんて想像できなかった。


 しかもそれに加え、ギャングたちも隙あらば攻撃をしかけてくる。

 鬱陶しいことこの上ない。

 このままではジリ貧だ。



(早々に終わらせる……!)



 触手を弾き、ネプチューンはトライデントを地面に突き刺した。

 胸の前で手を合わせると、膨大な魔力が迸る。



立体魔法陣(、、、、、)──」



 ネプチューンの手のひらに、正四面体の魔法陣が現れる。

 水色のそれは瞬く間に巨大化し、ネプチューンの体をすっぽり覆った。



「──神域・天冥水領」



 直後、発動。

 一瞬の内に部屋を覆うほどに魔法陣が巨大化すると、内側に大量の海水が現れた。

 今まで見たことのない魔法に、ギャングたちは困惑する。



「これはっ、海水……?」

「馬鹿め、俺たちも魚人!」

「あんたにはおよばないけど、アタイたちだって……!」



 水中を高速で移動するギャングたち。

 地上で手に入れた銃火器は使い物にならなくなったが、それ以上に自分たちの身体機能が向上した。

 まさに水を得た魚。連携の取れた動きで、ネプチューンへ攻撃を仕掛ける。


 ──が。



「この領域が、本当にただの海水だと?」

「何……? ぁ……がっ、ぼっ……!?」

「おぼっ、べっ……!」



 急に動きが止まり、1番近くにいた魚人たちがもがき苦しみ始めた。

 突然の変化に、他の魚人たちは目を見開いて距離を取る。

 その間にも、徐々に、徐々に圧縮されていく。

 手足が、体が、首が、全てが折りたたまれていき……最後には血を流すことなく、手のひらサイズの赤黒い球体となった。



「な、なんだ? どういうことだ……?」

「わ、わかりません。何が、何やら……」



 頭領を中心に困惑の色が広がる。

 仲間が死んだ。許せないことだが、それ以前に死因がわからない。

 魚人はいかなる水圧の中であろうと死ぬことはない。

 だが今のは、どう見ても圧死だ。

 ネプチューンはトライデントを引き抜き、肩に担いだ。



「この神域において、余を中心に3つの罠を貼らせてもらった。余に最も近い罠が圧力。次に窒息。最後に斬撃……逃げも隠れもできなければ、神域から逃げることは不可能である」



 ネプチューンの眼光が妖しく光る。

 底知れぬ威圧感に、魚人たちは絶望感をあらわにした。



(まあそれでも、あのゲソにはほとんど効果ないのだがな)



 クラーケンの遺伝子を継ぐのなら、例の可能性(、、、、、)も考えられる。

 ネプチューンは油断せず、トライデントを構えてクラーケン・ジュニアを睨みつけた。



「雑魚はどうでもいい。……貴様は、余の手で殺す」

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