第101話 海神、薙ぎ払う
◆ネプチューンside◆
「はてさて……貴様ら、覚悟はできているな?」
ウィエルとの通信を切ったネプチューンは、眼前に広がる魚人の群れを睨めつける。
全員武装している。その上どこから仕入れたのか、爆弾や大砲も準備していた。
ウィエルの察したとおり、今は王城の警備は薄い。
指示を出したのはネプチューン自身だ。
が、ネプチューンの強さは並ではない。正直、警備なんていなくても自分の身は自分で守れる。
それよりも、出し抜かれたみたいで少しだけ虫の居所が悪かった。
(こやつらの目的は余の命と、ディプシーの壊滅か。まったく、安く見られたものだ)
正直、クロアとウィエルがいなかったら危なかったと思う。
けど今そんなことを考えている暇はない。
目の前にある結果が全て。
ならば海神として、ディプシーの女王として、脅威を跳ね除けるのみ。
玉座に座るネプチューンを、ギャングたちは敵意丸出しの目で睨む。
「辛酸を嘗めた先祖の恨み……!」
「貴様を殺し、ディプシーの全てを手に入れる!」
「親父は貴様を恨んで死んでいったんだ……!」
海のギャングたちは、ネプチューンの威圧を受けながらも闘志を衰えさせない。
それどころか、燃え盛る炎のような熱を持っていた。
「余は、余の考えとディプシーの平和を思って追放した。追放された者は、追放されるだけの罪を犯したのだ」
「黙れ!」
「故郷たる海を追われた先祖たちの恨み、ここで晴らす!」
完全にとばっちりである。
が、恨みというのはそういうものだ。
自分の思うように拡大解釈し、自分が信じているものしか信じられなくなる。
ネプチューンは哀れみの目をギャングたちへ向けた。
「……これも、余の甘さが招いた結果ということか。同胞を殺すのは忍びないと思い、あえて追放という形を取ったが──やはり処刑しておくべきだった」
ネプチューンから覇気が迸る。
殺意と敵意を漲らせていたギャングたちは、一瞬で戦意を折られたじろいだ。
それほど、圧倒的な覇気。
それほど、絶望的な戦力差。
ネプチューンは手を上空へかざすと、膨大な覇気と魔力を凝縮させ。
「来い、トライデント」
──神器を召喚した。
神器トライデント。
三叉戟と呼ばれる三又の鎗は、瑠璃色の光を放ち顕現する。
ネプチューンが所持する、正真正銘の神の一振り。
クロアが恐れた海神の魔力が、ディプシーを覆うほど放たれる。
「余の全てをもって貴様らを処罰する」
ネプチューンがトライデントを構え、玉座から立ち上がる。
直後、砲弾がネプチューンに向けて放たれた。
「邪魔だ」
トライデントを一閃。
弾き返された砲弾は、ギャングたちの中心へ着弾。爆発を引き起こした。
それを皮切りに、ギャングたちが一斉にネプチューンへと襲いかかる。
「小賢しい」
乱雑にトライデントを振るう。
それだけで、前衛にいた十数人は粉々に砕け散った。
「ヒッ……!」
「ば、化け物め……!」
ギャングたちの目が恐怖に染まる。
ネプチューンからしたら、化け物と恐れられることには慣れている。今更気にすることもない。
ネプチューンの剛腕を受けられず、次々にやられて行く。
「お、お頭、どうしましょう……!」
「あ、慌てるな! もう少しで奴がここに着く。そうなれば……!」
と、ネプチューンの耳に不穏な言葉が飛び込んできた。
なんのことかはわからないが、あまり時間を掛けている暇はなさそうだ。
「チッ……それにしてもチマチマしおって……!」
いくらネプチューンが巨大でとんでもないパワーを持っていようと、ギャングたちのパワーとスピードも並ではない。
この日のために用意してきたのだろう。予想以上に手強い。
(仕方ない。あまり能力は使いたくなかったが……む?)
そこで気付いた。
奴ら以外にもう一つ、異様に巨大な気配を感じる。
クロアのものではない。ウィエルの魔力でもない。
もっと別で、もっと異質な何か。
「お頭ァ、来ましたぜ!」
「来たか! さあ海の悪魔よ、海の神を引きずり下ろせェ!」
海のギャングの頭領が叫ぶ。
同時に、奴らの背後から巨大な何かが現れた。
「行け、クラーケン・ジュニア──!!」
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