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【Web版】どうも、勇者の父です。~この度は愚息がご迷惑を掛けて、申し訳ありません。〜  作者: 赤金武蔵
第五章 海の国

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第100話 勇者の母、勘づく

   ◆ウィエルside◆



 市街地へやって来たウィエル。

 頭の中の地図を元に、若干迷いつつ到着した。

 が、迷っている間に王国軍と海のギャングたちは全面交戦していて、あちこちで煙が上がっていた。

 上空からそれを見て、眉間にシワを寄せる。



(こんなにも自分の方向音痴を恨んだことはありません……!)



 歯がゆい気持ちもすぐに切り替え、ウィエルは瞬時に魔法陣を展開。

 面から弧に。弧から球へ──。



「立体魔法陣展開……星の源流よ、護り、癒し、夢の流れに導け──《無垢の星鎧(イノセント・アーマー)》」



 直後、魔法が発動。

 防御魔法が、市街地にいる全市民(、、、)へ掛けられた。

 今まさに襲われそうな女性を包み、護り。

 傷付き倒れている子供を包み、癒し。

 怖いものを見せないよう、眠らせる。



「なっ!?」

「なんだこれは!」

「魔法!?」

「どこからだ!」



 あちこちから戸惑いの声が聞こえてくる。

 王国軍も、海のギャングも、未知の魔法に困惑していた。

 と、そこに聞こえるネプチューンの声。

 要約すると、この魔法は味方の魔法だから安心しろという内容に、王国軍は一気に活気づいた。



「ナイスアシストです、ネプチューン様」

『なに、当たり前のことをしたまでだ。余もできることはする。ウィエルも、為すべきことを為せ』

「はい。ここは私に任せてください」



 ネプチューンからの念話を切断し、再び立体魔法陣を展開する。

 今度は王国軍へ強化魔法を掛けようとした──次の瞬間。



「む」



 遠隔から放たれた魔法の気配に、立体魔法陣を瞬時に防御魔法に切り替えた。

 間一髪、水の刃が防御魔法に阻まれて霧散する。

 流れ弾ではない。間違いなく、意図的に狙ってきた魔法だ。

 魔法に込められた魔力の気配を辿り、実行犯へ視線を向けた。

 逃げている。バレないと思ってるのか、街の中をジグザグに動いて。



「甘いですね。《ライトニング・ボルト》」

「────!?!?」



 ウィエルから放たれた雷の魔法が、逃げている魚人を襲う。

 当然向こうも防御魔法で対抗したが、あまりにも力の差が大きすぎて一瞬で貫かれた。



「邪魔をしないでいただきたいですね」



 改めて王国軍へ強化魔法を施したウィエルは、地上へ降り立ち穴へと向かった。

 廃墟の地下に開けられた穴。

 倉庫の在庫でカモフラージュされている穴。

 穴、穴、穴。

 とにかく大量の穴が、至る所に開いている。



「よくもまあ、ここまで穴を開けましたね……」



 魔法によって無から巨大な岩を創り出し、すっぽりと穴を埋める。

 埋めて、埋めて、埋めて。たまに出くわしたギャング諸共埋めて、潰して、埋めて。

 どれだけ埋めてもキリがないし、色んなところからギャングが出てくる。

 クロアの読み通り、こっちが本隊みたいだ。



「それにしても……向こうも本気みたいですね」



 建物は破壊され、黒煙が上がっている。

 被害はかなり甚大だ。

 が、なぜこうまで派手に暴れているのかがわからない。



(何か別の目的が? 陽動……? それにしても、あまりにおざなりなような)



 こりずに襲ってくるギャングたちを蹴散らし、屋根に上って辺りを見渡す。

 略奪、強奪の限りを尽くす海のギャング。

 しかし王国軍のおかげで、ある程度は凌げていた。



「さすが軍隊ですね。統率されてますし、練度が高い。これなら……あれ?」



 と、気付いた。

 海のギャングから市民や街を守るため、王国軍が集まっている。

 ということは、城には最低限の警備しかいないということ。



「──ネプチューン様……!」



 ウィエルの視線が城へ向く。

 直後、城から爆音と共に黒煙が上がった。



「チッ! ネプチューン様、聞こえますか!?」

『ウィエルか。こっちは大丈夫じゃ。余に任せよ』

「ですが、あなたはこの国の王で、海の神です。何かあったら……!」

『ふはははは! 余がこの程度の賊にやられると思うか? 海神の恐ろしさを見せつけてくれようぞ』



 ネプチューンとの念話が切れると、城の方から莫大な魔力を感じた。

 魔力量で言えば、ウィエルと同等……いや、もしかしてそれ以上かもしれない。



「海神の名は伊達じゃない、ということですか……」



 確かにあれなら、手助けに行く必要もなさそうだ。

 ウィエルはすぐに頭を切り替えると、まだ開いている穴を塞ぐために街へと飛び降りた。

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[一言] 面白いです。 良い物語をありがとうございます。
[一言] ピンチになったらクロエが助けに来てネプチューン様が惚れ直すみたいなことになりそうやな!
[一言] 100話おめでとうございます
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