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【Web版】どうも、勇者の父です。~この度は愚息がご迷惑を掛けて、申し訳ありません。〜  作者: 赤金武蔵
第五章 海の国

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第99話 勇者の父、殴り埋める

  ◆クロア・ウィエル◆



 海底の国ディプシーの郊外にある、サンゴの荒野。

 クロアとウィエルは超高速でそこへ向かうと、ウィエルが探知魔法を発動した。



「──あなた、そこです」

「わかった」



 ウィエルが指差す場所へ向かうと、大人一人が通れるほどの穴が開いていた。

 ここが、海のギャングの開けた穴だ。

 こんなものが国中に散らばっているらしい。

 口の中に味のない苦味が広がる。

 クロアは拳を握ると近くの岩を殴り砕き、穴へ投げ込んで塞いだ。

 相当な重さだ。魚人族の怪力と言えど、これを持ち上げることは至難だろう。

 だが、こんなことを一つ一つやっていても埒が明かない。



「ウィエル、俺の脳内に地図を出せるか? 手分けして潰そう」

「わかりました」



 ウィエルがクロアの手を包み込むと、脳内に周辺の地図と穴の位置を表す印が浮かび上がった。

 この付近だけでも三十もある。

 国全域を考えたら、もっとあるだろう。



「俺はあっちを。ウィエルは向こうを頼む。潰した箇所は随時分かるようにしてくれ」

「はいっ」



 ウィエルと分かれ、クロアは脳内地図を頼りに穴を埋めていく。

 近くに手頃な岩がなければ、穴の周りを砕いて埋めた。



「ふむ、殴り埋めた方が楽だな……よし」



 作戦変更。今度は殴り埋めていく。

 殴って、殴って、殴って。その時だった。






「ひゃっはー! 俺が一番乗りぶべらっ!」

「あ」






 突然出てきた魚人諸共岩を殴り砕き、穴が塞がった。

 さすが魚人。なかなかの耐久力で、即死は免れたみたいだ。

 が、それも時間の問題だろう。



「今のが海のギャングか……ウィエル」

『はい、あなた。こちらにも出てきました』



 ウィエルの声が脳内に響く。

 まるでクロアの動向を見ていたように、欲しい言葉が直ぐに返ってきた。



「チッ、少し遅かったか……!」

『穴は市街地の方にもあります。私はそちらに』

「頼む」



 市街地になれば、クロアの馬鹿力よりウィエルの繊細な魔法コントロールの方が有利だ。

 適材適所。ウィエルが空を飛んでいく魔力の軌跡を目で追い、クロアは気配探知を研ぎ澄ませる。

 塞がってない穴は、あと二十一。

 そこから、大量の魚人族が這い出てくる気配を感じ取った。

 場所もバラバラ。数も多い。

 分散して侵入することで、こちら側を撹乱しようとしているのだろう。

 ここまで来たら、普通なら侵入を防げない。



「──上等」



 が、海のギャングが不幸なのは、ここに普通じゃない(、、、、、、)男がいることだ。

 気配を辿り、超高速で穴へ近付く。

 岩場に隠れていた武装している数十人の魚人を、目視で確認した。



「ん? なっ、なん──」

「ふんッ」



 クロアの拳が一人の魚人を殴り砕く。

 突然粉砕された仲間と、その元凶を見て、魚人たちは目を見張って動けずにいた。

 パワーに自信のある魚人族といえど、こんな芸当はできない。真似しようとも思わない。

 クロアは無言のまま素早く視線を動かすと、近くの魚人を掴んで集団へ投げつけた。

 それだけで、十人以上の魚人が砕け散る。

 ありえないパワーに、思わず海のギャングは後退りした。



「ま、待て! なんなんだお前ぷげっ!?」

「待たない。お前らを逃がすと、また不幸な人が生まれてしまうからな。……貴様らは害悪だ。ここで潰させてもらう」



 言い終える前に、この場にいる全員は肉塊と化す。

 時間がない。クロアは返り血を気にすることなく、次の場所へ走っていく。

 その時。ウィエルが脳内に話しかけて来た。



『あなた。ネプチューン様から連絡があり、王国軍もこちらに向かっているそうです』

「わかった。こっちは少なくていい。市街地の防衛を最優先で」

『伝えておきます』



 ウィエルからの連絡が切れ、その間も絶え間なく海のギャングたちを殲滅していく。

 今は時間が惜しい。

 ディプシーを守るため、クロアは更にギアを上げて駆け出した。

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― 新着の感想 ―
[一言] 魔王が出待ちしてるとは誰も思わないだろうなぁ。
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