第97話 勇者の父、最悪を予想する
【勇者の父、予約開始!】
勇者の父の予約が、各オンラインストアで開始しました!
Web版からかなり加筆されておりますので、どうぞよろしくお願いします!
◆
「二人とも、無事にアジトへたどり着いたみたいですね」
海底の国ディプシーから、遠隔で二人の様子を見ていたウィエル。
それを見ていたクロアとネプチューンは、安心したようにそっと息を吐いた。
「無事についてよかった」
「じゃな。一時はどうなるかと思ったが」
「ふふふ、そんなに心配しなくても大丈夫ですよ。ちゃんと地図を描いたのですから、迷うことはありません」
((それが心配だったんだが))
図らずもクロアとネプチューンの心は一致した。
方向感覚と直感が優れているミオンが一緒でよかった。もしドーナが一人だけで向かっていたら、恐らくたどり着けずに干からびてしまっただろう。
そうなったら復讐どころではない。
こんなこと、ウィエルに言ったら拗ねてふてくされてしまうから、言えないが。
ネプチューンは咳払いをすると、「しかし」と口を開いた。
「本当に二人だけで大丈夫かの? 相手は、ディプシーの王国軍が長年捕らえられなかった精鋭ばかりだぞ。いくらクロアの下で一ヶ月修行したとはいえ、厳しい戦いになるのではないか?」
「でしょうね」
ネプチューンの心配をよそに、クロアはあっけらかんと肯定した。
その様子に、ネプチューンは目をぱちくりさせる。
「心配ではないのか?」
「心配ではありますが、二人なら大丈夫でしょう。なんといっても、このために鍛えて来たのですから」
根拠のない自信。だがしかし、クロアの言葉には、大丈夫と言えば大丈夫と思える不思議な説得力がある。
なら自分が心配することではない。
ネプチューンはそっと微笑んだ。
「でもあなた。あの洞窟の中なのですが、少し妙な構造になっている気が……」
「妙な構造?」
「ここからだと、遠すぎて全貌がわかりません。でも、なんというか……あまりにも巨大というか、長すぎる構造になっているといいますか」
「長い年月をかけて集まった組織なんだ。拡張工事を続けていたら、いずれ……」
と、クロアも違和感に気付いた。
海底の国ディプシーから追放された魚人が作った組織、海のギャング。
組織内での結婚や子作りがあったとしても、その数は限られる。
ではなぜ、そんなに長い洞窟を作る必要があったのか。
そして、どうやってディプシーに侵入し、ドーナの家族を殺したのか。
「……まさか……」
「あなた?」
「クロア、どうしたのだ?」
クロアの様子が変わったことに、ウィエルとネプチューンが首を傾げる。
だがクロアの頭の中は、仮説で頭の中がいっぱいになっていた。
「女王陛下、一つ確認が。陛下の水域探知ですが、どこまでの範囲が可能ですか?」
「む? 舐めるでないぞ、クロア。余の水域探知は絶対だ。水のある場所では、世界中のどこであろうと探知することができる」
「では質問を変えます。僅かに空中に浮かんでいたり、海底より下の地下に潜まれた場合……どれほど探知できますか?」
「う。……と、飛ばれると……わからん。地下も、完全に潜られると……」
ネプチューンが気まずそうに指をもじもじさせる。
悪い方の予感が、的中した。
「やはりか……」
「あなた、まさか……?」
「ああ、そのまさかだ。──海のギャングは、長い年月をかけてディプシーに入るための地下洞窟を掘ったんだ」
本来では思いつかないような、ありえない言葉に、ウィエルとネプチューンは目を見開く。
「そ、そんな……! ありえるのか、そんなこと……!?」
「可能性としては大いにあるでしょう。これがひ弱な人間だったら可能性は低いですが、パワーも体力もある魚人なら話は別です」
「となると、あの洞窟の最奥が繋がっているのは……」
「ディプシーだ。恐らくあの洞窟の中は、二人の足止めで残っている魚人しかいないに違いない」
クロアの言葉に、ネプチューンが軍団長へ連絡を入れる。
だがディプシーも広大だ。侵入用の穴も、一つや二つじゃないだろう。
いつ攻めてくるかわからない上に、穴が十や二十もあったら守り切ることは不可能だ。
「ウィエル、行くぞ。移動しながら、穴の場所を全て見つけて埋める」
「はいっ」
さすがのクロアも慌てているらしく、超高速で城を出ると街へと走っていった。
続きが気になる方、【評価】と【ブクマ】と【いいね】をどうかお願いします!
下部の星マークで評価出来ますので!
☆☆☆☆☆→★★★★★
こうして頂くと泣いて喜びます!




