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【Web版】どうも、勇者の父です。~この度は愚息がご迷惑を掛けて、申し訳ありません。〜  作者: 赤金武蔵
第五章 海の国

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第93話 弟子二人、未来を担う

「申し訳ありません、女王陛下……!」



 三人を取り逃した軍団長は、謁見の間でネプチューンに深々と頭を下げていた。

 国主であるネプチューンの許可を得ず脱国……国抜けは重罪だ。

 魚人族というのは、亜人の中でも特に珍しい種族である。世の中には、死体でもいいから魚人族の体を手に入れたいというものまでいる。

 しかもそれが王国軍の騎士となると、深海の国ディプシーの機密情報を持っている可能性がある。

 そんなものが外部に漏れたら、ディプシーの存在を知り、狙う者も増えるだろう。

 これは由々しき事態だ。



「軍団長、面を上げよ。原因の追求は後回し。今は捕獲が最優先である」

「ハッ。現在、王国軍の精鋭が捜索を続けています」

「引き続き捜索せよ。軍団長は指揮を取れ」

「ハッ」



 軍団長は足早に謁見の間を去ると、場に静寂が訪れる。

 それを見ていたミオンは、心配そうにウィエルへと話しかけた。



「一体どうして脱国なんて……」

「わかりませんが……もしかしたら、ここ最近のことが原因かもしれませんね」

「ここ最近の?」

「ドーナさんの件です」



 ウィエルの言葉に、ドーナは目を見開いて驚いた。



「お、俺っすか……!?」

「うむ。可能性はゼロじゃないな」



 クロアが深く頷き、顎に手を当てる。



「今まで自分こそが絶対優位だと思っていた相手に、こっぴどく負けたんだ。いづらくなるのも頷ける」

「だ、だからって脱国までするっすか……!?」

「理由なんて様々だ。リンゴ一つの奪い合いで喧嘩にもなるし、友情が壊れることもあるし、戦争に発展することもある。もしかしたら日頃のストレスが積み上がって、今回のことで脱国に踏み切った可能性もある。そんなものだ」



 クロアの言葉に、ウィエルとネプチューンは頷く。

 だが人生経験の浅いミオンとドーナは、どうしても納得が出来なかった。



「しかし、行き先がわからんな。女王陛下の水域探知から逃れるために地上に出るのはわかるが、たかが魚人が三人。地上で生きられるとは思えない」

「そうですね。少しでも水域に入れば、ネプチューン様の探知に引っかかって居場所が知られますし……」



 クロアとウィエルの言葉に、ミオンも思考を巡らせる。

 確かに二人の言う通りだ。外の世界ではめずらしい魚人が、たった三人で生きられるはずがない。

 食料の確保も難しいだろうし、野宿をするにしても危険が沢山ある。いつまでも野宿をする訳にもいかないだろう。そんなこと、あの三人も承知の上だろう。

 となると、脱国しても問題ない何かがあるということ。

 どこかもどかしいというか、モヤモヤしていると──ドーナが「あ」と言葉をこぼした。

 耳聡くそれを聞いたネプチューンが、ドーナへ問いかける。



「ドーナ、思い当たる節があるのだな?」

「は、はい。あ、いえ。多分というか、確証はないんですけど……」

「よい。発言を許可しよう」



 全員の視線がドーナに集まる。

 ドーナは生唾を飲み込み、震える口をゆっくりと開いた。



「お、恐らくですけど……海のギャングの所へ行ったのではないかと……」

「────。……そうか、その発想はなかったな」



 ネプチューンが苦虫を噛み潰したような顔で拳を握り締めた。

 海のギャング。ディプシーで悪事を働いたため、追放された者たちが作った組織。水域へ近付くことすら許されない、真なる悪人たちだ。

 本来魚人族は、陸で生きては行けない。実質島流し……死刑のようなものだ。

 だが海のギャングは、それを生き延びた者たちで構成されている。

 それを頼りに脱国したと考えると、辻褄が合う。



「チッ。やはり追放などせず、余の手で葬るべきだった……!」



 ネプチューンはこめかみを指で抑えると、目を閉じて集中し始めた。

 魚人族は、念波という特殊な能力を持っている。遠くにいる者同士でも会話ができる、異能だ。

 使い手によって距離はまちまちだが、海神ネプチューンは海底の国ディプシー全土へ念波を届けることが出来る。



『軍団長、おるか!』

『ハッ、女王陛下』

『例の三人だが、恐らく目的地は海のギャングのアジトだ! 速急に部隊を編成! ディプシーの護りを固めよ!』

『海のギャング……!? しょ、承知しました!』



 王国軍の騎士が海のギャングの元に行ったとなれば、恐らくディプシーの警備の穴も知られることだろう。

 そうなれば、いつ海のギャングが攻めてきてもおかしくない。

 ネプチューンは珍しく焦燥していた。



「クソッ!」

「女王陛下、落ち着いてください」

「クロア……気持ちはありがたいが、これが落ち着いていられるか。このままでは国が……!」

「大丈夫です」



 クロアとウィエルは互いに顔を見合わせると、どちらともなく頷いた。



「海のギャング、俺たちが潰します」

「ッ! ……いや、ダメだ。頼りたいところだが、これは国の問題。このような国難を乗り越えない限り、国の成長は止まって……」

「失礼。言葉を訂正します」



 クロアはミオンとドーナの肩に手を置くと、不敵な笑みを浮かべ──。



「未来を担う、俺たちの弟子にやらせます」



 ──とんでもないことを口にした。

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[気になる点] 末端の兵士三人の情報が漏れる程度で国が危機に陥るような敵がいるのだったら、 もっと早い内に潰しておかないといけなかったし 確実に海のギャングを潰せる力を持つ上、高潔な性格のクロアが協力…
[良い点] クロア「丁度いい試験のネタが転がってきた」 とか思ってそうw
[良い点]  ああ、これは……例えたら織田上総介殿が名物の『出来ると信じているからこその、無茶ぶり』てやつですかね。
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