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【Web版】どうも、勇者の父です。~この度は愚息がご迷惑を掛けて、申し訳ありません。〜  作者: 赤金武蔵
第五章 海の国

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第91話 弟子二人、成長する

 翌日、訓練所にやって来たドーナ。

 その顔つきは先日と全く違い、自信に満ち溢れたものだった。

 ミオンも目を見開いて驚いている。

 遠くから見るのと、近くで見るのでは圧のレベルが桁違いだ。



「ドーナ、掴んだか?」

「はい。ありがとうございます、師匠」

「礼は俺に一撃与えてからにしろ」

「押忍!」



 ドーナは刃引きした模造剣を、ミオンは練った魔力を全身に漲らせ、構える。堂に入った、いい構えだ。

 それに対し、クロアは腕を組んだまま動かない。

 成長したドーナの目で改めて見ると、クロアの隙のなさがよくわかる。全く攻めることが出来ない。

 ただ立っているだけで、全方位全種族へ向けた戦闘態勢。それがクロアだ。

 生唾を飲み込んでいると、ミオンがドーナを横目で見た。



「ドーナさん、今何が見えてます?」

「化け物が」

「正解です。あれが普段から私が見てるクロア様です」

「あんなのにどうやって一撃入れるんですか」

「さあ。でもやるしかない。そしてやるには……動くしかないッ」



 ミオンが超高速でクロアへと肉薄する。

 ドーナも少し遅れてミオンを追う。

 十数メートルの距離を一歩で詰め、ミオンが蹴りをクロアの顔面に放った。

 が、クロアは僅かに仰け反って攻撃を避ける。

 それに合わせ、ドーナがクロアの脇腹へ向け拳を捩じ込む。

 しかしクロアはドーナの拳を人差し指で受け止めると、力の向きを変えて吹き飛ばした。

 更にミオンの足首を掴み、ドーナへ向けて投げ飛ばす。

 ギリギリのところでそれに気付いたドーナが、飛んできたミオンをキャッチするも、踏ん張った地面を抉って数メートルも後退させられた。



「くそったれ……!」

「悪態つく暇があったら攻める!」

「お、押忍!」



 二人は左右に分かれ、クロアに接近する。

 ドーナは剣撃を繰り出し、ミオンは蹴りを主体にした連撃を放つ。

 だがクロアは、その尽くを避け、いなし、弾き、受け止める。しかも脚は使わず、全て手で止めていた。

 今度はクロアが二人へ拳を繰り出す。

 ギリギリのところで腕をクロスして防御するも、防御した箇所が急所になったかのようにダメージが刻まれた。



「ふむ……やはり成長したな、二人とも」



 今までなら今の一撃で気絶し、ウィエルが回復していた。

 だが二人はまだ立っている。著しい成長だ。

 それに、クロアの手に残る甘い痺れが、二人の攻撃力の高さを物語っている。



「だが、まだ成長した体に気持ちが追い付いてないな。覚悟が足らないと言うべきか」

「覚悟、ですか? 師匠、それは……」

「ふむ……ミオンちゃんならわかってるんじゃないか?」



 クロアとドーナの視線がミオンへ向けられる。

 ミオンは一瞬考えるも、直ぐに答えが出た。



「……殺す覚悟、ですか」

「……ぇ……?」

「その通りだ」



 ミオンの言葉にドーナは驚き、クロアは笑顔で頷く。



「訓練の相手によって力加減は変えていいが……俺を相手にする時は、殺す気で掛かってこい」



 クロアの言葉に圧が増し、二人の体を強く叩く。

 気の弱い者なら、圧だけで気絶しそうな程の圧だ。

 ドーナの頬を汗が伝う。

 今までの厳しい王国軍の訓練でも、あの三人に痛めつけられていた時も、死をここまで実感したことがなかった。

 殺す覚悟なんて、今までの人生でしたことがない。

 正真正銘……命のやり取りだ。

 体と魂が震えているのがわかる。

 だが王国軍に入ったのは、海のギャングへの復讐のため。

 いつか訪れるはずだった命のやり取りの瞬間。それが今になった。それだけだ。



「ドーナさん、大丈夫ですか?」

「……はい。行けます」

「では、私がドーナさんに合わせて動きます。ドーナさんはとにかく、クロア様を殺す気で攻撃してください」

「押忍」



 ドーナが剣を構え、息を深く吐く。

 目付けは一点に集中するのではなく、遠くの山を見るように。

 気持ちは炎のように熱く。だけど思考は氷のように冷たく。

 そして、駆け出した。

 一切の策がなくても、攻撃しないことには成長はない。

 ドーナは覚悟を込めた剣をクロアへと振り下ろした──。






 数秒後。

 頭に特大のたんこぶを作った二人が、見事に大の字で気絶していた。



「まだまだ覚悟が足らないな、二人とも」

「クロア、流石に二人が可哀想であろう。もう少し手加減をだな」

「はっはっは。国王様、俺は二人の師匠ですよ。修行に手を抜くはずないじゃないですか」



 確かにその通りだが、これじゃあ心を折ってしまうんじゃ。

 そんな心配をしたネプチューンだが、隣にいたウィエルが「大丈夫ですよ」と口を開く。



「気絶する直前の動き、今までで一番いいものでした。だから旦那様も、かなり強めに殴ったのでしょ?」

「ウィエルに隠し事は出来ないな。今まで攻撃の時は一割しか力を使ってなかったが、今のはつい三割まで出してしまった。いやはや、俺もまだまだだ」



 クロアの三割は、一般人なら木っ端微塵になってもおかしくない。

 だが二人はたんこぶを作って気絶しているだけ。十分と言えるくらい成長している。



「なるほど……流石は、余を孕ませる男。ちゃんと考えておるのだな。惚れ直したぞい♡」

「ネプチューン様、怒りますよ」



 じとっとした目をネプチューンに向けるも、ネプチューンは口笛を吹いて目をそらす。

 わかりやすい誤魔化し方に、ついクロアは苦笑いを浮かべた。

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