表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【Web版】どうも、勇者の父です。~この度は愚息がご迷惑を掛けて、申し訳ありません。〜  作者: 赤金武蔵
第五章 海の国

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

83/113

第87話 魚人の弟子、話す

 翌日。ミオンとドーナがいつも通りクロアにボロクソにやられていると、中庭に誰かが入ってきた。

 騎士の恰好をした魚人だ。恐らく王国軍だろう。

 だがミオンたちに絡んだ三人でなく、もっと屈強そうな男だった。

 男を見て、ドーナは慌てたように敬礼する。流石のクロアとミオンも動きを止め、男を観察した。



「ふむ、強いな」

「あ、当たり前っすよ。国王軍団長ですから……!」



 緊張した面持ちで、ドーナが答える。

 国王軍団長。道理で感じる圧が濃いはずだ。

 突然中庭に入って来た国王軍団長に、ネプチューンが首を傾げた。



「団長、どうしたのだ?」

「失礼いたします、女王陛下。少々ドーナに聞きたいことがありまして」

「ふむ……クロア、よいか?」

「ええ、問題ありません」



 クロアはここでは部外者だ。身内同士の話に介入するつもりはない。

 ミオンと共に下がると、団長がミオンへ視線を向けた。



「申し訳ないが、君もだ。昨晩のことについて聞きたい」

「昨晩?」



 意味がわからずミオンを見ると、あからさまに顔を逸らされた。

 絶対何かあったな……クロアはミオンの頭に手を乗せ、無理やり自分の方に向かせた。



「ミオンちゃん、正直に話しなさい」

「わ、私たちは悪くないです。あいつらが悪いんです」

「ふむ……何があった?」

「……私とドーナさんが訓練後の反省会をしていたら、向こうが絡んできたんです。だからちょっと腕を握って……」



 ミオンの説明に、クロアはため息をついた。

 絡んできたということは、以前ドーナに暴力を振るっていた三人のことだろう。性懲りもなく、またドーナに絡んだらしい。

 しかし事情はどうあれ、騎士に手を上げるのはまずい。下手をすれば不敬罪で捕まる恐れもある。

 案の定、団長は目を吊り上げ、ミオンを見下ろした。



「おかしいな。私が聞いた報告では、自分たちが訓練をしていたら絡まれ、不当に暴力を振るわれたと聞くが?」

「そんな! 私たちがそんなことをするはずないじゃないですか!」

「ミオンちゃん、落ち着くんだ」



 明らかに激昂している。このまま掴みかからんばかりの勢いだ。

 クロアがミオンの肩に手を置くと、ミオンは鼻息荒く団長を睨み付ける。

 すると、ネプチューンがつまらなそうに口を開いた。



「団長。貴様はクロアの愛弟子が、むやみやたらに力を使い怪我をさせた……そう言いたいのか?」

「事実、一人の腕には剛腕で握られた跡があり、痣になっています。理由はどうあれ、騎士に暴力を振るったことには変わりないかと」

「ではドーナに対し、そやつらが暴力を振るっていたことはどう説明する? もしミオンとドーナに制裁を加えるのであれば、そやつらにも制裁を加えるのが道理では?」

「彼らからは、自主訓練中の事故による怪我があったと報告を受けています。訓練では怪我は付き物ですから」



 ネプチューンの眼差しを真っ直ぐ受ける団長。

 決して間違ったことは言っていない。事実と報告を元に、淡々と話しているだけだ。

 ネプチューンと舌戦を繰り広げている団長に、クロアが近付いた。



「軍団長殿、聞きたいがよろしいか?」

「なんだ?」

「三人の報告が、本当に正しいと?」

「……何が言いたい」



 クロアの言葉に、団長が圧を強める。

 だがクロアはその圧を、涼しい顔で受け止めた。



「貴殿は女王陛下のお客人だとは聞いているが、我らの問題に首を突っ込まれるいわれはない」

「ミオンは俺の身内だ。身内に何かあるのなら、相手が魔王だろうが神だろうが、誰であろうと必ず守る」



 クロアと団長の視線が交錯する。

 近くにいるミオンとドーナの体が震える。殺気や闘気ではない。純粋な圧が場を支配する。

 と――不意に、団長の圧が霧散した。



「はぁ……すまない。別に制裁を加えに来たわけではないんだ。本当に、ただ事情を聞きに来ただけなのだ」



 団長が懐から紙を取り出す。分量がおかしい。明らかに、本一冊分に相当する。



「これはあいつらが今まで報告してきたものだ。我らは自主訓練の後も、訓練内容と怪我の有無を詳細に報告させる。ほとんどの報告書では四人での訓練と書いてあるが、ドーナの怪我の有無がほとんど『無』になっている」

「そ、そんな……!?」



 団長の言葉に、ドーナは愕然とした。

 確かに、いつも報告書は三人が提出していた。ドーナ自身は書いたことがない。

 だがその理由が、事実の隠蔽だとは思わなかった。



「昨夜の報告を受け、改めて報告書を確認した。流石に違和感があってな。ドーナの口から、直接話を聞きたい」

「お……俺……いえ、私は……」



 ドーナは震える体を押さえ、ゆっくりと口を開いた。

 ほぼ毎日のように、自主訓練と称した暴力を受けていることを。

 このことを話せば、今まで以上の暴力を加えると脅されたことを。

 だからこそ、今の現状を変えるためにクロアの下で修行をしていることを。

 全てを話し終えると、辺りは静寂に包まれた。

続きが気になる方、【評価】と【ブクマ】と【いいね】をどうかお願いします!


下部の星マークで評価出来ますので!


☆☆☆☆☆→★★★★★


こうして頂くと泣いて喜びます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 正直に言うのは怖いよなぁ・・・頑張れー!
[一言] あのトリオもついに年貢の納め時か
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ