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【Web版】どうも、勇者の父です。~この度は愚息がご迷惑を掛けて、申し訳ありません。〜  作者: 赤金武蔵
第五章 海の国

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第86話 弟子二人、絡まれる

 ミオン、そしてドーナの訓練が始まり、二週間が過ぎた。

 体力増強訓練も無事に終え、今二人はクロア指導の元、戦闘訓練を行っている。

 ミオンは身体強化魔法あり。

 ドーナは剣あり。

 それに対しクロアは素手の状態で、二対一で相手をしていた。



「シッ!」



 体力増強訓練の賜物か、ミオンの動きが以前とは見違えるほど良くなっている。

 更に身体強化魔法のおかげで、常人ではまともに視認できないほど速い。



「フッ!」



 ドーナも負けていなかった。

 速さでこそミオンには劣っているが、直感と反射神経が並外れている。

 ミオンの射線上に入らないよう立ち回るのが上手かった。

 ミオンの超高速のかかと落とし。

 ドーナのスピードに重さを乗せた薙払い。

 普通の人間なら即死は免れない。

 同時に放たれた一撃だが──クロアの両手の人差し指によって、止められた。

 辺りに広がる轟音。

 だがクロアは微動だにしない。しかも無表情のままだ。

 そのまま押し戻すと、二人は軽々と吹き飛んだ。



「まだ軽いな。踏み込みが甘いし、体重を乗せきれていない」

「くっ……!」

「チィッ……!」



 この訓練を始めて、既に十日以上過ぎている。

 合格基準は、二人合わせて本気の五割のクロアに一撃を入れること。

 だが、二人は一撃を入れるどころか一歩も動かせていない。

 正直、ここまで実力差があるとは思わなかった。

 空中で体勢を建て直し、構える。



「姉弟子、どうしましょう。こんなの無理っすよ」

「クロア様は決して無理な押し付けはしません。この一ヶ月で出来ると確信しているから、クロア様はこんな難題を提示したんです」

「だからって……」



 感触としては日に日によくなっている。

 今の一撃も、戦闘訓練を始めてから一番いいものだった。

 それなのに微動だにしない現実を突き付けられると、本当に出来るのか疑問だ。



「とにかく今は攻撃することに専念しましょう。二人の連撃なら、いずれチャンスが生まれるはずです」

「押忍ッ」



 二人は同時に駆け出し、再度クロアへ攻撃を仕掛けるのだった。



   ◆



「いっつつ……また今日も駄目でしたね」

「そうですね。ままならないものです」



 クロアとの戦闘訓練を終え、ミオンとドーナは二人で国王軍の訓練場に向かっていた。

 戦闘訓練後は、決まって今日の反省会と二人で訓練をしている。

 そうでもしないと、いつまでもクロアに一撃を入れるなんて出来ないから。

 それにこの時間は国王軍の訓練も終わっているから、丁度良かった。



「どうしたら師匠に一撃を入れられると思います?」

「うーん……真正面からの正攻法は、正直厳しいかと。せっかく人数では勝っているので、利点を活かしましょう」

「例えば?」

「一人は絶対に正面からで、一人は絶対に背後からとか」

「でもそれ、一人の負担がデカすぎるっすよ」



 あーでもないこーでもないと話し合いながら、組手をする。

 かなり速い組手だが、今の二人にとっては軽い準備運動……じゃれ合いみたいなものだ。

 それからちゃんとした組手に入る。ミオンは身体強化あり、ドーナは剣ありで。

 勿論本気は出さず、当てずに寸止めをする。

 暫く反省会を兼ねた組手を行っていると、不意にミオンの耳が反応した。



「ストップ」

「姉弟子?」

「……誰かこっちに近付いて来ますね。三人。聞いたことのない声です」

「え?」



 ミオンが訓練場の入口を見ている。

 その後を追って見ると、そこには。



「ん? ……は? ドーナ?」

「あれ、なんであいついるんだ?」

「逃げ出したんじゃなかったのかよ」



 ドーナに暴力を振るっていた三人が、そこにいた。

 三人の言葉に、ミオンがそっとドーナを見る。

 明らかに動揺していた。それに、どこか恐怖も混じっている。



「おいおいドーナ。どーこ行ってたんだよ、心配したぜェ?」

「またサンドバッグになりに戻ってきたかァ?」

「ギャハハハハ!」



 醜悪な笑みと汚い感情が心地悪い。

 ドーナの事情は聞いている。今のドーナなら、こんな奴らの相手ではない。

 だけど自分たちには時間がなかった。



「なんですか、あなたたちは。今私たちは忙しいんですが」

「は? 誰だこいつ」

「あれじゃねーか。人間の客っていう」

「あー、そんなこと言われたな。初めて見たぜ、可愛い子ちゃん」



 一人が下卑た笑顔を浮かべながらミオンに手を伸ばす。

 ミオンはため息をついて乱雑に腕を握ると、身体強化魔法を使って軽く握った。



「あぎゃああああああ!? いいいいッッッ!?」

「私に触れないでください。汚らわしい」

「ひぎいいぃぃいいいいぃぃぃ!?!?」



 ほんの少し力を入れただけなのに、この痛がりよう。拍子抜けだった。

 流石に可哀想だったので手を離してやると、いきなり離されたから尻もちを着く。

 余りの情けない姿に、ミオンはため息をついた。



「ドーナさん、行きますよ。今日は終わりです」

「は、はい、姉弟子」



 とりあえず、ドーナはミオンの後をついていく。

 少し前まで恐怖しか感じなかった三人。

 だが今は、これっぽっちも怖いと感じなかった。



「……俺、強くなってるんすかね?」

「あの修行で強くならない人はいませんよ。それに……」

「それに?」






「この世にクロア様より怖い存在はいません」

「激しく同意」

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[一言] クロアよりウィエルのほうが……いえ、何でもないです。
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