第84話 一番弟子、師匠となる
レミィを見送ると、今度はウィエルがクロアの横に座った。
「あなた、優しいですね」
「いつもだろ?」
「ふふ、そうでした」
ウィエルには、クロアの考えはわかっている。
師匠のいないアルカとサキュアに、ちゃんとした師匠を付ける。
しかもアルカに似た異能と魔法を使う上に、クロアお墨付きの一番弟子だ。
それにアルカ、サキュア、ガーノスだと不安定だったチーム編成の強化。
プラスして、レミィには魔王軍との戦闘経験がある。
だからレミィを向かわせたのだ。
しかしネプチューンは、首を傾げていた。
「だがレミィで大丈夫か?」
「地位は人を作ると言うだろう。それに、これも修行だ」
「いや、レミィの方でなく、倅殿の方だ」
「大丈夫だろう。……多分」
こればかりは自信を持って言えない。
レミィはガサツで、大雑把で、適当だ。そのことを一番知っているのはクロアである。
あのガサツさできっちり修行を付けられるのか……。
「ま、アルカなら大丈夫だろう」
「何故そう言いきれる?」
「俺の血を色濃く継いでいる。それが理由だ」
「なんという傲慢。惚れ直したぞ♡ ふごっ!?」
ネプチューンがクロアに抱きつこうとすると、ウィエルが無言で防御魔法を展開した。
アルカの方はレミィがどうにかするはず。
なら今クロアが集中するべきは、こっちだ。
クロアは立ち上がると、もう一人の分身を出して二人へと向かった。
「これからは一人につき二人の俺がつく」
「根性見せろよ、二人とも」
「「い″ッ!? にぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッッッ!?!!?!?」」
◆
「つーわけで、クロアのアニキからの命令で、お前らの師匠としてついて行くことになったレミィだ。よろしく」
アルカたちの元へ転移したレミィは、気だるそうに自己紹介をした。
突然のことで理解が追いついてこない。
だがクロアの命令に逆らえなかったんだと、アルカは察した。
「ほっほっほ。賑やかになりますなぁ」
「呑気っすね、ガーノスさん」
年の功だというのか、ガーノスはレミィから感じられる圧の前でも平然としている。
一応死線を潜ってきたアルカも、ナックスとの修行を積んできたサキュアも、この圧の前ではしり込みしてしまう。
それ程、魂の密度そのものが違う。そんな気がした。
「アルカ。お前は勇者の力をコントロール出来ないらしいな」
「え。ま、まあ……」
「サキュア。お前は魔法を使えるらしいな」
「は、はい。ある程度は」
「私が師匠になったからには、本気で鍛える。ちゃんと付いてこい」
雰囲気というか、言動というか。全てがクロアに似ている気がする。
本人は血縁はないと言っていたが、ここまで似てると兄妹と言われても信じられる程だ。
と、アルカがそこで気付いた。
異能を持っていると言っても、どんなものなのか聞いていない。
まずはその辺を聞かないと。
「あの、レミィさん」
「馬鹿野郎!」
「へぶ!?」
殴られた。思い切り殴られた。
ただぶん殴られただけなのに、物凄い痛い。
クロアに殴られた時よりはそうでもないが、ダメージが膝に来るレベル。勇者の力がなければ死んでいた。
「私のことは師匠、もしくは姐さんと呼べ!」
「は、はい……」
この人には逆らえない。そう思った。
まだダメージが回復しきらないアルカを横目に、サキュアが「はい」と手を上げる。
「師匠、お聞きしたいんですけど、師匠の使う異能ってどんなものなんですか?」
「いい質問だ。私は生まれつき使えたものなんだが……簡単に言えば、天使の力だ」
「……天使?」
「うむ」
レミィがゆっくり目を閉じる。
直後、レミィから感じられる魂の密度がより一層強く、濃くなる。
あまりにも異質な気配に、アルカたちは本能的に下がった。
数瞬もしないうちに、レミィの体が発光。
糸のような光が紡がれると、背中に純白の翼が形成され、頭に半円の輪っかが顕現した。
ゼロコンマ数秒。まさに一瞬で、伝承通りの天使の姿へと変えた。
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