表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【Web版】どうも、勇者の父です。~この度は愚息がご迷惑を掛けて、申し訳ありません。〜  作者: 赤金武蔵
第一章 亜人の少女

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

8/113

第5話 勇者の父、問う

 少し休み、体力が回復したミオンの案内で森を歩く。

 森の奥に進むにつれ、焦げた臭いが濃くなっていくのがわかる。

 それに、血の臭いも。

 それに別の異臭もする。これは焦げの臭いでも、血の臭いでもない。もっと別の嫌な臭いだ。

 クロアは足を止め、顔をしかめた。

 この臭い、覚えがある。昔旅をしていた時に、何度も嗅いだことのある臭いだ。



「あなた?」

「うむ……ウィエル、ミオンちゃん。ここから先は見ない方がいい。俺だけで行く」

「え? でも……」



 ミオンがクロアの言葉に、困惑した。

 確かにこの臭いは、ミオンにとっては辛いものだ。でも耐えられない程ではない。

 だから一緒に行きたいのだが。



「ここから先の光景は、二人は見ない方がいい」



 クロアは頑として譲らなかった。

 その真っ直ぐな目に、ミオンは思わず後ずさってしまった。



「ミオンちゃん、ここは旦那に任せましょう」

「……わかり、ました。ですがお願いします。もし生きている仲間がいたら、どうか助けてください……!」

「わかってる。それじゃあウィエル、ミオンちゃんを頼んだ」

「はい。行ってらっしゃい、あなた」



 ミオンをウィエルに預け、クロアは森の奥へと向かった。

 歩いていくにつれて臭気が強まる。これだけの臭いは久しく嗅いでいない。クロアでも、気分の悪くなるものだった。

 歩くことしばし。

 茂みを抜けると、ようやく村の残骸に辿り着いた。

 焼け焦げ、破壊された家。いたるところに転がる兎人族の死体。しかもその死体のほとんどが、見るに堪えないほど無残に殺されていた。

 村を少し散策する。と、一つの大きな家だけ燃えずに残されていた。

 この家から気に食わない臭気が漂ってくる。

 クロアは眉間にシワを寄せ、建物の扉を開けた。



「やっぱりか」



 そこには、五人の兎人族の死体が転がっていた。

 しかも全員若い女。生前はさぞ美しかったであろう。

 であろうというのは、もはや原型がないほど嬲り殺しにされているからだ。この濃い臭気は、男のアレの臭いだ。

 兎人族を含めた亜人は、人間と比べると耐久力も生命力も高い。

 どんなことをしても中々死なないということもあり、道楽でぼろぼろになるまで犯され、壊され、それでも生かされ、最後には殺される。

 そんな光景をクロアは嫌というほど見てきた。



「……ん? こいつは……」



 五人の兎人族の首に、何か付けられている。

 首輪だ。黒くて硬質。表面には幾何学模様と謎の文字が掘られている。



「まさか……?」



 これには見覚えがあった。

 忌々しい、過去の記憶が蘇る。

 爆発しそうな感情を抑え、クロアは足早に建物を後にした。

 それからしばらく村を歩いて生存者を探すが、生きている兎人族は誰もいなかった。

 が。



「あ? なんだ、生き残りか?」

「ちげーよ、人間だ」

「でっけぇ」



 唐突に、人間の男が三人現れた。

 ボロボロの装備を身に付け、極悪な笑みを浮かべている。



「この村を襲ったのはお前らか?」

「言う義理はねーな」

「それやったって言ってるもんじゃねーか」

「ちげーねー。ぎゃはははぺぽ?」



 溜め込んでいた怒りが一気に沸騰し、クロアは一人の男の顔面を殴り砕いた。

 ドラゴンの頭部すら砕く拳だ。人間の身に付けている防具なんて、紙のように役に立たない。

 残りの二人は唖然としていたが、一人が剣を抜いて襲い掛かって来た。



「テメッ。殺ぱぺ」



 もう一人の腹部を蹴り上げると、上空まで吹き飛ばされて爆散した。

 それを見て、最後に残った一人は戦慄した。

 拳と蹴りで人体を粉々にする。そんな人間、見たことも聞いたこともない。



「おいお前。俺の質問に答えろ。答えなかったら殺す。嘘を言えば殺す。答え以外を答えたら殺す」

「…………!!」



 男は首が取れるんじゃないかと思う程、超高速で首を縦に振った。

 逆らえば間違いなく殺される。悪党としての本能がそう告げていた。



「まず、お前ら奴隷商か?」

「へ、へい。正確には奴隷商に雇われた山賊でさっ……!」



 奴隷商。

 人間や亜人を捕まえ、高額で貴族や上流階級の人間に売る闇の商人だ。

 世界中で奴隷の売買は禁止されている。だが、裏ルートや闇では頻繁に売買されている。

 この男たちは、その奴隷商に雇われているただの山賊らしい。



「山賊は何人いる?」

「ご、五十です」

「かなりでかい規模だな……どこに潜伏してる?」

「いつもは森の奥の洞窟ですが、今半分はアプーの街に捕まえた亜人共を売りに行っているところでさ」



 その後も、自分の命が惜しいからかクロアの質問に早口でぺらぺらと話す。

 おかげで山賊の情報は詳しく知ることが出来た。

 男は下っ端だからか、肝心の奴隷商のことは知らないらしい。ここに来たのも、綺麗な死体で遊ぶためだったとか。



「なるほどな。山賊の半数は、洞窟にいるのか」

「は、はいっ。これで俺の知ってることは全部でさ。……あ、あの、知ってることは話したので、俺は……」

「ん? ああ、そうだな。話してくれて助かった」

「へ、へへ。お、お安い御用でさ。そ、それじゃあ俺はこれで……」

「待て。どこへ行くつもりだ」



 クロアは男の顔面を鷲掴みにすると、軽々と持ち上げた。



「……ッ!? …………!!」



 口と鼻が塞がり、声を発せないようだ。

 血走った目が助けを懇願するようにクロアを睨み付ける。

 だがクロアは冷たい目で男の視線を受け止めた。



「質問に答えなかったら殺す。嘘を言えば殺す。答え以外を答えたら殺す。確かにそう言ったが、お前を生かして帰すとは一言も言っていない」

「!?」

「お前が……お前らが今までやって来たことを考えてみろ。本気で生きて帰れると思っていたのか?」



 手に力が込められていくと、指が食い込み、頭蓋骨が軋んで歪む感覚が手に伝わってくる。

 目からどす黒い血が流れ――グシャ。

 頭部がぐしゃぐしゃに圧砕された。



「人の平凡な生活を壊して、自分だけがのうのうと生きていけると思うなよ」

続きが気になる方、【評価】と【ブクマ】をどうかお願いします!


下部の星マークで評価出来ますので!


☆☆☆☆☆→★★★★★


こうして頂くと泣いて喜びます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ