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【Web版】どうも、勇者の父です。~この度は愚息がご迷惑を掛けて、申し訳ありません。〜  作者: 赤金武蔵
第五章 海の国

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第83話 一番弟子、面倒なことに巻き込まれる

   ◆海底の国ディプシー◆




「師匠ー!」

「レミィ、いらっしゃい」



 転移してきたレミィが、懐いたわんこのようにウィエルへと向かっていった。

 一つ結びにしているプラチナブロンドの髪が、レミィの気持ちを表すようにぶんぶん揺れている。

 懐かしい反応に、ウィエルもつい笑みを零した。



「レミィ。久しいな」

「ん? おーネプ。相変わらずでっけぇな」

「お前も態度ばかりでかいな」

「胸もでけーだろ」



 ふんすっと胸を張るレミィ。

 ウィエルも相当なものだが、レミィも負けていない。かなりでかい。

 と、レミィはキョロキョロと周りを見渡した。



「あれ? アニキはどこだ?」

「旦那様なら、あそこで修行を付けてますよ」

「修行?」



 目を向けると、ミオンとドーナが二人のクロアから命からがら逃げ回っていた。

 クロアは無表情だが、どこか楽しんでるように見える。



「あの二人が、今の弟子っすか?」

「はい。兎人族の女の子がミオン。魚人族の男の子がドーナです」

「てことは、妹弟子と弟弟子か。私も歳を取るわけだ」



 しみじみしているが、レミィの見た目は二十代と言っていいほど若い。間違いなく、実年齢と見た目年齢は噛み合っていないだろう。

 レミィは逃げ回っている二人を見て微笑んだ。



「体力増強か。私もやったやった。懐かしいなぁ」

「あなたの時はいつまでやってましたっけ?」

「三日三晩。三人のアニキから逃げ回ってましたね。いやー、後にも先にも、死を実感したのはあの時が最後っすわ」

「そうか。お前は生ぬるい十数年を送ってきたのだな」

「いやいや、私だって頑張って……え?」



 クロアだ。ここにクロアがいる。

 あそこには二人。ここに一人。

 三人目のクロアだ。



「久々だな、レミィ」

「あ、あはは……お久しぶりっす、アニキ」



 僅かな気配の違いでわかる。

 あっちにいる二人が質量のある分身。ここにいるのが、本物だ。

 クロアは地面に座ると、横をぽんぽんと叩く。

 レミィも若干緊張した様子で、大人しく横に正座した。

 同じ方向を向いて、無言で座る二人。

 と、クロアがそっと口を開いた。



「楽にしていいぞ」

「はい」



 返事をしながらも、レミィは足を崩さない。

 雰囲気から、緊張のようなものが伝わってくる。久々に会ったクロア(師匠)を前にして、少しばかり気が張り詰めているようだ。

 見た目はオラオラ系だが、師匠であるクロアに対しては尊敬の念を抱いているらしい。



「随分と暇なようだが、この十数年何してたんだ?」

「ひ、暇じゃないっすよ。ちゃんと修行もしてますし、魔王軍とも戦ってます。東の方は粗方片付いたんで、アニキたちが旅してるって聞いて、追いかけて来たんです」

「俺を? 何故だ?」

「そりゃ暇で……あ、嘘です今のは口が滑っただけっす」

「口が滑ったなら本音だろ」

「しまった」



 バツが悪そうに目を逸らすレミィと、ジト目を向けるクロア。

 懐かしい光景に、ウィエルはほのぼのとした笑みを浮かべた。



「ま、まあそれは冗談として。アニキと師匠、ずっと平和な暮らしをしてきたじゃないっすか。だから会いに行くのためらってたんす」

「ふむ。つまり村を出たから、久々に会いに来たってことか」

「あとはまあ、ちょっとお手伝い願おうかと」

「……手伝い?」



 その言葉に眉を顰めるクロア。

 レミィが手伝ってくれと言う時は、大抵戦いに関してだ。

 だがそれも、まだ修行時代の頃。レミィの実力はクロアがよくわかってるし、手助けが必要だとは思わない。

 レミィは真剣な顔でクロアを見上げると、小声でぼそりと呟いた。

 


「魔眼皇バルバと魔触王ゴードンが手を組んで、勇者を潰す、という噂があるっす」

「……何?」



 魔眼皇バルバと魔触王ゴードンと言えば、魔王軍四天王の二人だ。

 しかもそのうちの一人、魔眼皇バルバの部下はミオンを攫っている。クロアたちからしても、少しばかりの縁がある相手だ。



「なるほどな。アルカに対して一人一人が相手をするより、二人以上で相手をした方が間違いなく潰せる……そういうことか」

「恐らくっすけど。魔族が話していたのを、少し聞いただけなので」



 もしも。多分。恐らく。

 だが可能性はゼロではない。魔王は勇者の力に怯えている。

 なら、こっちも行動を起こすしかない。



「レミィ。お前アルカについて行け。師匠命令」

「職権乱用じゃないっすか。……って、そういやアルカって誰っすか?」

「俺のガキで、勇者だよ」

「……マジすか? さっきのちんちくりんが?」

「さっきのちんちくりんが、だ。それで、お前がアルカの師匠になってやれ。異能について一番詳しいのはお前だろう」

「それはそうっすけど……」



 レミィの性格上、誰かにものを教えるのは得意としていない。はっきり言えば苦手だ。

 クロアもそれは重々承知しているが、背に腹は変えられない。



「お前ももういい歳だ。弟子の一人や二人、持ってた方がいいだろう。魔法も使えるし、サキュアってハイエルフの子にも色々教えてやれ」

(めんどくせぇ……)

「何か言ったか?」

「い、いえっ、何も……!」



 流石のレミィでも、クロアに口答えは出来ない。

 返事はイエスかはいのどっちかしかなかった。



「アルカは勇者として、魔王討伐の旅に出ている。魔王軍四天王とも当たるのは確実だ。俺が全部解決してちゃ、あいつの為にならないだろう?」

「はぁ……わかりました、わかりましたよっ」



 レミィとしては、クロアに魔王軍四天王をぶちのめして欲しかったのだが。なんだか面倒なことになった。



「わかったら行け。多分さっきの場所から動いてないと思う」

「うす。それじゃあアニキ、師匠。失礼するっす」



 レミィは再度魔法陣を展開すると、空気に溶けるようにして消えていった。

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