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【Web版】どうも、勇者の父です。~この度は愚息がご迷惑を掛けて、申し訳ありません。〜  作者: 赤金武蔵
第五章 海の国

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第78話 勇者の父、成り行きで請け負う

「──はっ!? っつぅ……!」

「む、起きたか」



 主治医に見てもらい、僅か数分で目を覚ました青年。

 だが脳天が痛むのか、涙目で頭を摩っている。むしろ体の痛みより頭の方が痛いまである。

 主治医が青年の体の至る所を確認し、朗らかな笑みを浮かべた。



「要安静ですな。特に頭の方。クロア様は昔から加減が苦手ですなぁ」

「これでも加減した方だぞ」

「ほっほっほ。確かに、ネプチューン様の顔面をぶん殴って丸一日昏睡させた時に比べたら、随分上手くなっているご様子」

「嫌味か」

「ほっほっほ」



 主治医が笑いながら、クロアたちから離れる。

 クロアは昔からこの主治医が苦手だ。なんとなく、掴めない性格というか。

 しかし青年は、そんなことより主治医の言葉に目を見張った。



「ね、ネプチューン様、て……あ、あんた国王陛下を殴ったのか!? なんで死罪になってないんだ!?」

「何故と言われてもな」



 あの時のネプチューンはかなり傲慢で、自信過剰で、人間そのものを馬鹿にしていた。

 だから拳でわからせた。それだけだ。

 それからはクロアの力に惚れ、何かある度に子作りを強要してくるようになったのだが。

 クロアはその事を忘れるよう首を振り、ベッド横の椅子に座った。



「悪かったな、殴ってしまって。今はゆっくり横になるといい」

「……なんで……」

「む?」

「……なんで、俺を助けたんだ? 見て見ぬふりをしてもよかったのに」

「ああいう輩が嫌いなだけだ。反吐が出る」



 クロアは別に正義の味方ではない。

 かといって、あからさまな悪やいじめを見逃すほど人間を捨てていない。

 クロアが助けられる範疇なら、助ける。それだけだった。



「……ありがとう、助けてくれて。正直、助かった」

「気にするな。それより、何故あんな目に? あの様子だと今回が初めてではないだろう」



 クロアの問いかけに、青年は顔を伏せた。

 思った通り、あれは日常的に行われていたことらしい。

 確かに青年の体は、魚人族にしては細い。打撲の他に切り傷や抉られた後もある。

 明らかに、数ヶ月単位の傷だ。



「聞いていたが、まさか弱いことを理由に?」

「…………」



 無言の肯定。言葉にするにはプライドが許さなかったのだろう。

 それを察し、クロアはそれ以上言及することはなかった。



「すまないが、俺もいつまでもここにいる訳ではない。見かけたら助けられるが、これから先何度も助けるのは無理だ」

「だ、誰も頼んでないっ」



 自分にも騎士の誇りがある。

 いつかは自分の手でこの状況を脱しようと、人一倍訓練にも励んでいる。

 が、才能の違いか、体格の違いか。どうしても一太刀も浴びせることが出来ない。

 悔しい。日に日にその思いは強くなっている。

 無意識の内に布団を握り締めていると、それに気付いたクロアが腕を組んだ。



「聞くが、どうして騎士に固執する? 痛みや罵倒を我慢してまで、騎士にしがみつく理由はなんだ? はっきり言って、このままでは殺されてもおかしくないぞ」



 殺すつもりがなかったとしても、不慮の事故というのはどうしてもある。特に、未熟な者同士では。

 あの三人も、ただがむしゃらに剣を振るっていただけだ。力の加減も考えず、相手が死ぬことも考えず。

 クロアの疑問はもっともだった。

 青年は俯いて拳を握り締め、体を細かく震わせる。



「……海のギャングに、家族が殺された。親も、祖父母も、妹も……そいつらにどうしても復讐したい」

「海のギャング? ウツボ?」

「違う」



 違うらしい。



「海のギャングっていうのは、ディプシーを追放された荒くれ者たちのこと。アイツらの人数は数百は超えてる。拠点は陸にあるみたいで、ネプチューン様のお力も届かないんだとか」

「なるほど。それで、国王軍の力を利用しようってことか」



 クロアの呟きに、青年は頷いた。

 その考えは間違ってない。

 群れに対抗するなら群れ。理に適っている。

 それに相手が海を荒らすなら、海を統べるネプチューン率いる国王軍が、対応するのも理解出来る。

 だが、それとこれとは話が違う。

 死んだら復讐も何もない。仮に死ななかったとしても、怪我による後遺症が残る可能性がある。

 クロアの目から見て、青年にそこまでの覚悟があるようには見えなかった。

 だからと言って、クロアには止める権利なんてない。

 だとしても、黙って見ている訳にもいかない。



「……もし君がよければ、少しの間俺が訓練に付き合ってあげようか?」

「……へ?」

「このままじゃ君の犬死にはほぼ確定だ。事情を知った以上、見て見ぬふりは出来ない」



 クロアは青年へと手を差し伸べる。

 無骨で、大きい。まさに強者の手だ。



「残念だが、俺は旅の途中でな。最長でも一ヶ月。期間限定でよければ、俺が戦い方を教えてやろう」

「…………」



 青年は思い返していた。

 デコピンによる空気の弾。

 そして自分の身にありありとわからせた拳骨。

 他には、ネプチューンを殴って気絶させた? この男ならありえる。想像出来る。

 考える余地はなかった。



「……ドーナ。俺、ドーナって言います」

「クロアだ。よろしく、ドーナ」

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― 新着の感想 ―
[一言] 地獄への一歩を踏み出しましたね。
[一言] ミオン「ウェルカァム」
[良い点] 良かったねミオンちゃん!道ズレが増えるよ¯\(◉‿◉)/¯
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