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【Web版】どうも、勇者の父です。~この度は愚息がご迷惑を掛けて、申し訳ありません。〜  作者: 赤金武蔵
第三章 師弟相見える

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第56話 勇者、謝罪する/勇者の父一行、準備する

   ◆とある高原・とある村◆



 港町アクレアナから山を二つ超えた場所に広がる高原にて。

 アルカ、サキュア、ガーノスの三人がボロボロになった村を見つめていた。



「これは魔王軍の仕業ですかな?」

「でもガーノスさん、血の匂いも死臭もしませんよ?」



 サキュアとガーノスが首を傾げている。

 だがアルカだけ、現実を受け入れている顔で見つめている。

 クロアに呼び出されるまでも、こういった村を巡ってきた。最初は罪悪感と絶望で胸が痛んだが、そうも言っていられない。

 アルカは二人を振り向き、光のない目で自虐的に笑った。



「この村、俺の攻撃の余波で壊れたんだ」

「ぁ……」

「それはそれは」



 サキュアはクロアが言っていたことを思い出した。

 今アルカは、自分が壊してしまった村を回っていると。



「二人はちょっと待っててくれ」

「え、でも……」

「サキュア様。今はここで待ちましょう」

「ガーノスさん……わかりました」



 アルカが村に歩いていくのを、サキュアとガーノスは見つめる。

 と、木材を運んでいた一人の男が、アルカを見て目の色を変えた。



「このッ……。……これはこれは勇者様。こんな辺鄙な場所になんの御用で?」



 一瞬怒りを顕にしたが、直ぐに仏頂面になる。

 周りの村人もアルカの存在に気付いたのか、冷たい目で睨んでいた。



「謝罪に来ました。……俺のせいでこんなことになってしまい、申し訳ありません」



 アルカはゆっくり腰を折り、深々と頭を下げる。

 突然の謝罪に男も面食らったが、直ぐ頭に血が昇った。



「ざけんじゃねぇ……ざけんじゃねぇ! 確かに村を脅かす魔物は消えた! だが村を壊してなんの意味がある!? しかもその場での謝罪じゃなく、今更だと!? 何が勇者だ、ふざけるなァ!!」



 男が近くに落ちていた石をアルカに投げつける。

 アルカは守ることも身構えることもなく、甘んじてそれを受けた。

 それがきっかけとなり、村人たちがアルカに石を投げ付ける。

 怒声を撒き散らす男。罵倒する女。泣き喚く子供。とんでくる石。

 サキュアは見ていられなくなり、魔法でアルカを守ろうと杖を掲げたが、ガーノスがその手を下ろさせた。



「ガーノスさんっ、このままじゃアルカ様は……!」

「まあ、見ていましょう。あの若者がどうするのか」



 そんな余裕があるとは思えない。

 アルカには勇者の力として、自己再生能力がある。

 だからどれだけダメージを受けても回復するとは言え、痛みは感じるものだ。

 今も、頭から大量の血が流れている。

 しかし、アルカはまだ頭を下げたままだ。

 それどころか──



「本当に、申し訳ありません」



 ──地面に膝をつき、頭を地面に擦り付けた。

 土下座だ。紛うことなき土下座。

 自分が汚れることを厭わず、アルカは土下座をした。

 流石にそこまでするとは思わなかったのか、村人たちの動きも止まる。

 サキュアは思い出した。最初にアルカを見た時、泥だらけだったのを。

 寝る間も惜しんで、ずっとこうして謝罪を続けていたのだろう。だから泥だらけだったのだ。



「……ガーノスさん」

「ええ、我らも行きましょうか。我らが仲間になる以前の問題とはいえ、今は我らも勇者一行。笑う時も、喜ぶ時も、悲しむ時も、泥を被る時も。全て共に」



 サキュアとガーノスも、共に謝罪するべく、アルカに近づいていったのだった。



   ◆港町アクレアナ・海◆



 港町アクレアナの海にて。

 ミオンは祈るように手を合わせ、目を閉じて集中している。

 既に水上に立って数時間。一定の魔力量を消費しても、疲れることなく立てている。

 それを見て、ウィエルも満足そうに頷いた。



「……はい、オーケーですね。合格です」

「やったー!」



 諸手を上げて喜ぶミオン。

 だが海中に沈むことなく、そのまま立っている。感情がブレても、無意識的に水上に立っていられるようになったみたいだ。



「これを応用すれば、水の上で寝転ぶことも、座ってご飯を食べることも出来ます。それは旅をしながら、おいおい覚えていけばいいでしょう」

「こんな感じですか?」



 すると、唐突にミオンが水の上に座ったり、寝転んでゴロゴロ回り出した。



「あはははは! これ不思議ですね! なんか楽しいー!」



 まるで床をゴロゴロするかのように、楽しげに海の上で回転するミオン。

 流石のウィエルも、それを見て目を僅かに見開いた。



「……驚きました。まさかもう出来るとは」

「私、昔から基礎が出来たら応用は直ぐに覚えられるんです。まあ、基礎を覚えるのに凄く苦労するんですが……」

「なんと……素晴らしい才能ですね」



 基礎は大事だが、魔法戦闘においては基礎ばかり出来ても意味がない。

 応用し、工夫し、相手を上回る魔法を使う必要がある。

 だから魔法という分野において、応用が得意というのは大きなアドバンテージになるのだ。

 と、ビーチで様子を見ていたクロアが、二人の所へやってきた。



「無事覚えられたみたいだな。大したもんだ」

「えへへぇ。ありがとうございますっ」

「なら、ここからはアクレアナを自由散策しよう。出発は三日後。準備を怠らないように」

「わかりました!」



 自由散策と聞き、ミオンはうきうきとプランを練る。

 ミオンもお年頃の女の子だ。服だって見たいし、美味しいスイーツも食べたいのだ。

 うきうきしているミオンを見て、ウィエルも頬に手を当てて微笑んだ。



「うーん、自由散策ですかぁ。私も散策しましょうかねぇ」

「ウィエルは迷子になるから俺と一緒にいること」

「信用ないですね」

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「酷い」

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[良い点] ウィエルの方向音痴はクロアのお墨付き… 今後ピンチになるとするとここなのかしら。 でもクロアの旦那はちょっとやそっとのピンチってピンチにならないしなあ。
[一言] ちくしょぅ〜腐っても勇者補正かぁ。 サキュアさんもほだされるのかねぇ。と邪推してしまう己の器の狭さ。
[一言]  やれば出来る。リリスの魔法(相性よかったんだろうけど)威力凄かったんだな。
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