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【Web版】どうも、勇者の父です。~この度は愚息がご迷惑を掛けて、申し訳ありません。〜  作者: 赤金武蔵
第二章 勇者と父

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第28話 勇者の父、強さを見せる

 翌朝。クロア、ウィエル、ミオンは騎士団の本部を出て、密かに移動している。

 朝日が廃れた街を照らし、寂しくも幻想的な景色を映し出していた。

 クロアとウィエルは散歩気分で歩いているが、ミオンはこれからのことを考えて生唾を飲み込んだ。



「き、緊張しますね」

「そうですよね。初めての実戦ですもんね」

「はい……って、実戦?」



 何それ聞いてない。

 ウィエルを見ると、朝日が似合う爽やかな笑顔を向けた。



「魔王軍四天王、魔剣帝ドドレアルが一人でいるはずないじゃないですか。昨日のゴブリンやオーガみたいな魔物が周りにいます。私とミオンちゃんの役目は、取り巻きを倒すことです」

「え……えええええええええ!?!?」



 流石に驚いた。四天王の取り巻きと戦うなんて、考えすらしていなかったから。

 昨日はクロアが強すぎたから弱く見えたが、魔物というのは知能をもった魔獣と言われるほど戦闘力が高い。

 そんな魔物と……しかも野良ではなく、魔王軍という組織に属している魔物と戦って、勝てる未来が全く見えない。



「わ、わ、私、まだ戦闘経験もないですし、魔法も使えませんけど……!?」

「今のミオンちゃんでも十分戦えますよ。ファイトです」

「軽い!?」



 二人からしたらいつもの戦闘なんだろうけど、ミオンからしたら初めての死闘だ。下手をしたら死んでしまう。

 今から死地に向かっていると思うと、異様に喉が渇く。手足が震える。



「大丈夫だ、ミオンちゃん」



 今すぐ逃げだしたい気持ちを抑えてついて行くと、前を歩くクロアが振り返らず声を掛けてきた。



「今までやって来たことを思い出せ。絶対ミオンちゃんならやれる」

「クロア様……」



 不思議だ。クロアの言葉は心の底に届く気がする。

 手足の震えが止まり、勇気が湧き上がってきた。



「……わかりました。私、やります」

「ああ、頼んだぞ」



 ミオンはふんすっと気合を入れて、二人の後について行く。

 と、後ろが気になって振り返る。

 そこには真剣な表情で三人についてくるアルカと、臨戦態勢の勇者一行がいた。



「ついてきましたね、アルカさんたち」

「旦那の喝が相当効いたんでしょう。明らかに昨日とは顔付きが違いますね」



 ウィエルは嬉しそうに笑っている。

 なんだかんだ言いつつ、ウィエルも心配していたみたいだ。

 それもそうか。子を心配しない親はいないだろう。

 クロアも僅かに振り返り、アルカが付いてきているのを見てほくそ笑んだ。


 ガーラの街を歩くことしばし。

 敵の気配に、全員同時に立ち止まった。



「あなた」

「ああ。この気配……囲まれたな」



 直後、瓦礫や廃墟から無数の魔物が姿を現した。

 魔物だけじゃない。魔族と、魔獣の数も異様だ。

 これだけの数の魔王軍を騎士団は食い止めていたと考えると、相当優秀な人材が揃っていたんだろう。

 敵が下品な笑みを浮かべてこっちを見てくる。

 アルカと勇者一行は武器を構えて油断なく周囲を見渡していた。



「チッ、数が多いわね。勇者様、どうする?」

「もちろん戦おう。絶対に一人にならず、チームで動いて──」

「待て」



 アルカの提案に、クロアが待ったをかける。

 昨日の今日でクロアに苦手意識を持ったのか、剣士が怯えた顔を見せた。



「ま、待てって、どういう……?」

「今日はお前らは見学だ」

「……見学?」



 意味がわからず思わず聞き返してしまった。

 敵のど真ん中までやって来て見学とは、どういう意味だろうか。全くわからない。



「いい機会だから見せておく。人類を救う強さというものを」



 クロアが肩を大きく回し、深く息を吸う。

 そして。



「フッ」



 消えた。

 動体視力が強化されているアルカでも、兎人族の動体視力を持つミオンでも見えない。

 唯一ウィエルだけが、笑顔で目を高速で動かして追えている。


 直後。



「えがっ」

「ぽっ」

「へきゅ」

「ぎゃぼっ!?」

「はぶっ!」

「きょっ」



 見えない何かに押しつぶされるように、魔族も魔物も魔獣も絶命していく。

 その間わずか数秒。

 数にして百体以上の敵を屠り、クロアは何食わぬ顔で元いた位置に現れた。



「勇者なら、最低でもこれくらいは出来るようにならないとな」

「いやいやいや、むりむりむり」

「無理なもんか。俺がお前くらいの時は、もう出来たぞ」

「元のスペックが違いすぎるんだよ!?」



 流石に反論させて欲しかった。

 こんな化け物みたいな戦闘を真似しろとか、勘弁してほしい。



「というか、そもそも父さんが魔王軍と戦ったらいいんじゃ……」

「馬鹿言うな。それじゃあお前がどうやって強くなる。魔王軍はお前が強くなるための練習台。魔王が本番。そう考えておけ」

「そんな無茶苦茶な……」



 でもクロアの言うことももっともだ。

 アルカの最終目標は魔王討伐。そして魔王を討伐するには、勇者の力を極めるしかない。

 魔王軍は、自分の力を上げるための練習台。そう思うと、なんとなくやる気が出てきた。


 が、やる気と出来るのは全く違う。

 今のはどう考えても出来る気がしない。

 しかしクロアは、真っ直ぐな目でアルカを見た。



「お前なら出来る」

「……何を根拠に」

「俺の息子だからな。それ以上の根拠はいらん。俺の血が、お前を強くさせる」

「…………」



 その通りすぎてぐうの音も出なかった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 父はもともと勇者で、魔王相手に勇者の力を使うと勇者の力が消える的なのがある、、?それなら、強いこと、魔王は勇者でしか倒せないことを知ってるから自分で倒しに行かないこと、世界を救う力だ(事実)…
[一言] 子供はあくまで別個の血の繋がった他人である。 ただし、遺伝による素質の継承も事実である。 つまり何が言いたいのかといえば。 アルカくん。諦めて強くなんなさい。 あの父ちゃん見て心が折れないだ…
[良い点] とーちゃん、背中に鬼飼ってない?
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