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【Web版】どうも、勇者の父です。~この度は愚息がご迷惑を掛けて、申し訳ありません。〜  作者: 赤金武蔵
第五章 海の国

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第116話 幽霊、いなくなる

【書籍宣伝】

『どうも、勇者の父です。~この度は愚息がご迷惑を掛けて、申し訳ありません。〜』


_人人人人人人人_

> 本日 発売 <

 ̄YYYYYYY ̄


よろしくお願いします!

 クロアたちが宿にやって来て四日目の朝が来た。

 休みなく、夫婦水入らずを楽しんだクロアは、お茶を飲んで窓の外を見る。

 体には丁度いい疲労がある。ダルすぎず、緩みすぎていない感じだ。

 対面に座るウィエルは、風呂上がりだからか頬から首にかけて火照っているようだ。

 瓶に入った牛乳を飲んでそっと息を吐き出す。



「はふ……いい朝ですね。幽霊さんたちも、楽しそうに漂っていますよ」

「ふむ、そうか。そいつは何よりだ」



 ウィエルの視線を追って、クロアも同じ方向を見る。

 そこには、何もいない。朝霧のかかった森しか見えない。

 小鳥のさえずり、川のせせらぎ、木々の擦れる音。

 それしかなく、幽霊なんていない。


 そう。クロア自身、幽霊は見えないのだ。

 気配を感じることもなければ、肩が重くなるといった現象もない。

 端的に言えば、霊感がゼロなのだ。

 ウィエルは素の霊感が強いため、幽霊の姿は魔法を使わなくても見えているらしい。



「本当に可愛らしい子供ですよ? 見てみませんか?」

「いや、いい。遠慮しておく」

「そんなに怖がることないのに」

「怖がってなんていない。俺に怖いことなんてない」

「私に隠し事しても、無駄ですよ」



 ウィエルが楽しそうに笑うのを見て、クロアは顔を逸らした。

 怖くはない。怖くはないのだが、見るか見ないかの選択を迫られたら「見ない」一択である。

 それくらいの距離感が丁度いいのだ。あえて近づくこともない。


 ここに泊まろうと決めたのは、疲れているであろうウィエルのミオンを思ってだ。

 別に怖がっていることを悟られたくないとか、強がっているとかではない。

 決して、ない。



「それより、そろそろ腹が減ったな。ティティさんに、飯を作ってもらおうか」

「あ、大丈夫ですよ。さっきお風呂行ったついでに、ティティ様にお願いしてきたので、そろそろ──」

「失礼致します」



 丁度その時、ティティが他の女中を連れて部屋に入ってきた。

 お盆には料理が様々な乗せられていて、匂いと共に食欲を刺激してくる。

 クロアの大食いを知ってるからか、朝からかなりの量だ。それも、疲れている今のクロアからしたらありがたい。



「ウィエル様。お食事はお部屋でよろしかったでしょうか?」

「はい。ありがとうございます」

「いえ」



 ティティたちが手早く料理をセットしていく。

 じっとティティを見ていると、鼻が僅かにひくひく動いているのに気付いた。

 頬も若干赤らんでいる。

 深く考えなくても、匂いが染み付いているからだろう。


 この宿に生者が泊まることは少ない。年に一度があるかないかだ。

 しかも、泊まったとしても一人か二人。こういう事後の匂いというものは、慣れていないのだろう。


 準備を終えた女中たちは部屋を出て行き、ティティだけが部屋に残った。



「お料理の説明を致しましょうか?」

「私は大丈夫です」

「俺も。ティティさん、下がって大丈夫です」

「かしこまりました。何かありましたら、お申し付けください」



 ティティが襖を開けて廊下に出ると、ぴたりと動きが止まった。

 何かを言おうか言うまいか迷ってるようで……意を決したのか、口を開いた。







「さ、昨晩はお楽しみでしたね……!」

「昨晩じゃない。三日三晩だ」

「失礼しました!」






 顔を真っ赤にし、襖を閉めて去っていくティティ。

 どうやら、定番のセリフを言いたかったみたいだ。見事に爆死したが。



「ふふ。ティティ様、可愛らしいですね〜」

「こういうことに慣れていないだろうからな、あの人は。では、いただこう」

「はいっ」



 ウィエルはとろけた顔で、料理を頬張る。

 ここの料理はいつ食べても美味い。クロアも、ここに勝る料理はないと思っている。

 二人のゆったりした時間が流れる。

 と、廊下の方からどたばたと音が聞こえてきた。

 この足音は、ミオンの足音だ。



「く、クロア様っ、ウィエル様……!」



 血相を変えて、勢いよく襖を開けて入ってきたミオン。

 少しだけ顔色が青いし、焦っているようだ。



「ミオンちゃん、どうかしましたか?」

「そ、それがっ、そのっ。あ、朝起きたら、みんながいなくて……!」

「いない? ……あ、まさか……」



 ウィエルが指を折って何かを数える。

 そして何かに気付いたのか、クロアの方を見た。



「うむ。──裁判の日だ」

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― 新着の感想 ―
[良い点]  幽霊となった者達は、いつまでもお宿に泊まるわけにはいかないものね。  それにしても三日三晩も愛し合うって、夫婦揃ってどんだけ~ってくらいタフすぎませんか!?
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