第116話 幽霊、いなくなる
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『どうも、勇者の父です。~この度は愚息がご迷惑を掛けて、申し訳ありません。〜』
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クロアたちが宿にやって来て四日目の朝が来た。
休みなく、夫婦水入らずを楽しんだクロアは、お茶を飲んで窓の外を見る。
体には丁度いい疲労がある。ダルすぎず、緩みすぎていない感じだ。
対面に座るウィエルは、風呂上がりだからか頬から首にかけて火照っているようだ。
瓶に入った牛乳を飲んでそっと息を吐き出す。
「はふ……いい朝ですね。幽霊さんたちも、楽しそうに漂っていますよ」
「ふむ、そうか。そいつは何よりだ」
ウィエルの視線を追って、クロアも同じ方向を見る。
そこには、何もいない。朝霧のかかった森しか見えない。
小鳥のさえずり、川のせせらぎ、木々の擦れる音。
それしかなく、幽霊なんていない。
そう。クロア自身、幽霊は見えないのだ。
気配を感じることもなければ、肩が重くなるといった現象もない。
端的に言えば、霊感がゼロなのだ。
ウィエルは素の霊感が強いため、幽霊の姿は魔法を使わなくても見えているらしい。
「本当に可愛らしい子供ですよ? 見てみませんか?」
「いや、いい。遠慮しておく」
「そんなに怖がることないのに」
「怖がってなんていない。俺に怖いことなんてない」
「私に隠し事しても、無駄ですよ」
ウィエルが楽しそうに笑うのを見て、クロアは顔を逸らした。
怖くはない。怖くはないのだが、見るか見ないかの選択を迫られたら「見ない」一択である。
それくらいの距離感が丁度いいのだ。あえて近づくこともない。
ここに泊まろうと決めたのは、疲れているであろうウィエルのミオンを思ってだ。
別に怖がっていることを悟られたくないとか、強がっているとかではない。
決して、ない。
「それより、そろそろ腹が減ったな。ティティさんに、飯を作ってもらおうか」
「あ、大丈夫ですよ。さっきお風呂行ったついでに、ティティ様にお願いしてきたので、そろそろ──」
「失礼致します」
丁度その時、ティティが他の女中を連れて部屋に入ってきた。
お盆には料理が様々な乗せられていて、匂いと共に食欲を刺激してくる。
クロアの大食いを知ってるからか、朝からかなりの量だ。それも、疲れている今のクロアからしたらありがたい。
「ウィエル様。お食事はお部屋でよろしかったでしょうか?」
「はい。ありがとうございます」
「いえ」
ティティたちが手早く料理をセットしていく。
じっとティティを見ていると、鼻が僅かにひくひく動いているのに気付いた。
頬も若干赤らんでいる。
深く考えなくても、匂いが染み付いているからだろう。
この宿に生者が泊まることは少ない。年に一度があるかないかだ。
しかも、泊まったとしても一人か二人。こういう事後の匂いというものは、慣れていないのだろう。
準備を終えた女中たちは部屋を出て行き、ティティだけが部屋に残った。
「お料理の説明を致しましょうか?」
「私は大丈夫です」
「俺も。ティティさん、下がって大丈夫です」
「かしこまりました。何かありましたら、お申し付けください」
ティティが襖を開けて廊下に出ると、ぴたりと動きが止まった。
何かを言おうか言うまいか迷ってるようで……意を決したのか、口を開いた。
「さ、昨晩はお楽しみでしたね……!」
「昨晩じゃない。三日三晩だ」
「失礼しました!」
顔を真っ赤にし、襖を閉めて去っていくティティ。
どうやら、定番のセリフを言いたかったみたいだ。見事に爆死したが。
「ふふ。ティティ様、可愛らしいですね〜」
「こういうことに慣れていないだろうからな、あの人は。では、いただこう」
「はいっ」
ウィエルはとろけた顔で、料理を頬張る。
ここの料理はいつ食べても美味い。クロアも、ここに勝る料理はないと思っている。
二人のゆったりした時間が流れる。
と、廊下の方からどたばたと音が聞こえてきた。
この足音は、ミオンの足音だ。
「く、クロア様っ、ウィエル様……!」
血相を変えて、勢いよく襖を開けて入ってきたミオン。
少しだけ顔色が青いし、焦っているようだ。
「ミオンちゃん、どうかしましたか?」
「そ、それがっ、そのっ。あ、朝起きたら、みんながいなくて……!」
「いない? ……あ、まさか……」
ウィエルが指を折って何かを数える。
そして何かに気付いたのか、クロアの方を見た。
「うむ。──裁判の日だ」
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