第108話 勇者の父、脅す
【キャラデザ公開】
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「っと、そうじゃ。すまぬクロア、すぐに解毒してやるからの」
ネプチューンがクロアの頭に指を載せる。
全身が陽光のような暖かさに包まれ、暖かさが血管を通じて身体中を駆け巡る。
そのまま待つこと数秒。
全身の暖かさが引くと、体が一気に軽くなった。
「どうだ? 楽になったか?」
「……はい、大丈夫そうです」
鈍っていた感覚を確認するため、体のあちこちを動かしてメンテナンスをする。
確かに治っている。毒だけではなく、疲労感もない。
「ありがとうございます、女王陛下」
「気にするでない。余を孕ませる唯一の男を、毒に犯されるわけにはいかんからな」
「それ、まだ言ってるんですか」
ウィエル一筋のクロアだ。チャンスはないから、いい加減に諦めてほしいところ。
城の外壁に空いた穴から、ディプシーを眺める。
ウィエルの魔法と王国軍の手によって、街が瞬く間に修復されていく。
まだ国民たちは、ウィエルの魔法で眠っているようだ。
防御魔法も張っているから、混乱に乗じて……という輩も手が出せないでいる。
少なくともクロアの視界には、そんな王国軍の輩たちが映っていた。
「女王陛下」
「うむ。奴らのことは余に任せろ。海神の名のもとに、神罰を下す」
「助かります」
戦争、闘争というのは、自分の中にある理性のタガが外れやすくなる。
相手を殺し、生を勝ち取り、本能が暴走する。
血湧き肉躍る戦闘を乗り越えた先にあるのは、種の保存本能。
種の保存本能を暴走させると、あのような暴挙に出る。
だからと言って、それを無闇やたらに発散させるのはただのクズだ。
奴らの信じる神のもと、裁きを受けるのが道理であろう。
「ところで、クロアは種の保存本能は暴走しないのか?(チラチラ)」
「暴走させるほどの強敵と出会ったことがないので、なんとも」
「……あれを強敵と呼ばないあたり、さすがクロアだのぅ」
正直ネプチューンであろうと、あのクラーケン・ジュニアは、強敵と言っていい相手だった。
しかしクロアからしたら、あれは雑魚らしい。
間違いなく、20年前に会った時より格段に強くなっている。
「俺はウィエルの所に向かいます。ミオンたちも終わってるでしょうし、迎えに行かないと」
「む、そうだな。余も城を修復せねばならんからな」
クロアはネプチューンへ頭を下げると、城下へ向かって飛び降りていった。
「ここ、高さ50メートルくらいあるんだがなぁ。はっはっは、さすが余の認めた男だ」
◆
「ちきしょぅっ……! ちきしょぅ、ちきしょうっ、ちきしょう……! なんなんだあの化け物は……!」
ディプシーの裏通りを、じぐざぐに走りながら逃げる影が1つあった。
さっきまで、クラーケン・ジュニアに掴まっていた、海のギャングの頭領だ。
叩きつけられる前に運良く手が放れ、運良く穴から放り出されたのだ。
走る度に、折れた腕が痛々しく様々な方を向く。
だがしかし、痛みよりも恐怖が勝ち、頭領は全力で城から離れていた。
「あのクソガキ共ッ。何が余裕だ、クソがッ! あんな化け物がいるなんて聞いてねェぞ! ぶべっ!」
曲がり角を曲がったところで、壁にぶつかった。
勢いよくぶつかったから、弾かれて尻もちをつく。
が、壁にしては変な感触だった。
垂れる鼻血を抑え、苛立ちがピークに達し、壁を睨みつけ……。
「いててっ。クソがッ! こんな場所に壁があるとか、聞いて……ね、ぇ……?」
「逃げられるとでも思ったか?」
そこにあったのは壁ではない──化け物だった。
クロアは頭領の顔面を手で鷲掴みにし、ゆっくり力を込める。
脳に直接響く、頭蓋骨が軋む音。
目が飛び出すほどの圧力が掛かっていき、穴という穴から血が流れる。
「ぁ……ぇ……ぁがッ……!?」
「……殺すか」
「ピッ──ぁ……」
抵抗する間もなく、頭領の意識は深い暗闇へと落ちていった……。
「たかが脅しで気絶するとは、ギャングの頭領が聞いて呆れるな」
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