第105話 魚人の弟子、仇を見つける
【作者より】
『どうも、勇者の父です。』第1巻、7/29日発売!
よろしくお願いします!
◆ミオン・ドーナ◆
ミオンの蹴りが、1人の魚人族の頭部を蹴り抜く。
数は少ない。だけど、個々の力はかなり強い。
クロアとウィエルに鍛えられたミオンを持ってしても、戦力を削るのに苦労させられていた。
でもそれは、あのナイフ使いの力が大きい。
「フッ──!」
「くっ……!」
ナイフ使いの剣撃に、ドーナは力で押される。
ドーナも、この1ヶ月でかなり成長した。だがそれを完全に抑えている。
その上、ミオンが少しでも気を抜くと、即座にナイフが飛んでくる。
明らかに、この集団で1番強いのはあのナイフ使いだ。
「どうした。その程度か?」
「……ひとつ、聞きたい。そのナイフはどこで手に入れた」
油断のない構えのドーナが、唐突にそんなことを聞いた。
思わぬ質問に、ナイフ使いは思わず眉をひそめる。
「……さあな。10年ほど前か……どこかで拾った。いいナイフだから使ってるだけだ」
「ッ……そう、か……!」
ドーナの肩が震える。
怒気や殺気、闘気が洞窟の中に広まり、ミオンの体を貫いた。
「そのナイフは……それは我が家に伝わる宝刀だッ」
「……ああ、あの家の生き残りか。全員殺したと思っていたんだがな」
「殺す!!!!」
ドーナが怒りに任せてナイフ使いへと迫る。
荒々しい動きだ。だが隙だらけで、とても攻撃と呼べる代物じゃない。
「つまらん。……怖さが無くなった」
(いけない──!)
ミオンは反射的にドーナへと跳躍した。
地面に手をつき、倒立。
推進力を遠心力に変え、体を回転させるように両脚で蹴りを放つ。
「ぐぉっ……!?」
「ぶべっ!?」
片方はナイフ使いの腕を弾き、片方はドーナの顔面を捉える。
蹴りの威力で2人は反対方向に吹っ飛び、ミオンもすぐさまドーナの方へ跳んだ。
「あなた、死ぬつもりですか! 今のは無謀にもほどが──」
「あいつは! ……あいつが持ってるのは、我が家の家宝なんです……あいつは、家族を皆殺しにして……奪ってッ……!」
涙を流す、ドーナの目。
復讐と怒りに飲まれ、完全に周りが見えていない。
思わず、ミオンは恐れてしまった。
ドーナの持つ底知れない殺意にではない。
もしかしたらミオンも、この道を辿っていたのではないかという、恐怖。
「邪魔しないでください、姉弟子。あいつは俺が殺します」
「……ダメです。今のあなたでは殺されてしまう」
周りが見えていない。動きが荒々しく、実直すぎる。
それに対してナイフ使いの動きは、熟練されている。速いし、動きに無駄がない。
加えて、あのナイフもかなりの名剣だ。宝刀と呼ばれるだけある。
そんな状況で、周りにもまだギャングたちがいる。
まず間違いなく、殺されるのがオチだ。
「でも!」
「誤解しないでください。……私も、一緒にやります」
「……一緒に……?」
「──話し合いは終わったか?」
ミオンが話している間に、ナイフ使いも回復したみたいだ。
ダメージを受けた腕を回すも、まだ痛みは残ってるのか顔をしかめている。
「聞いたことがある。陸には、兎人と呼ばれる脚力に特化した亜人が存在すると……それがお前か」
「だったらなんですか」
「いや。……潰しがいがある」
ナイフ使いから迸る気迫が、1段階上がった。
まだ本気ではなかったらしい。
「感じての通り、あいつは普通ではありません。私も、1対1ではまだ勝ち目はない。でも2人でならなんとかなります」
「周りのギャングはどうするんですか」
「それも私がやります。ドーナさんはあいつに集中を。私も、全力でサポートしますから」
ドーナは逡巡するも、それも一瞬のこと。
すぐに覚悟を決め、深く息を吐いた。
「よろしくお願いします、姉弟子」
「それでこそです、弟弟子」
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