表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あなたとの愛をもう一度 ~不惑女の恋物語~  作者: 雨音AKIRA
8章 仕掛けられた罠

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

50/172

50 つかの間の喜び

 王宮から戻ったレスターは、笑顔で私に仕事が無事成功したことを教えてくれた。彼は見事にフラネル子爵の土地を手に入れたのだ。



「レスター!すごいわ!ありがとう!」


「デイジー……!」



 私は思わずレスターに抱きつくと、彼は少し恥ずかしそうにしながら受け止めてくれた。



「まぁ……!デイジー様は随分と積極的ですのね!」


「!!……メルフィ!」



 側にいた侍女のメルフィに揶揄われて、思わず赤面する。まるで子供のようにはしゃいでしまったことに、今更ながらに恥ずかしさが込み上げてきた。


 そんな私に向けてレスターの笑い声が頭上から降り注ぐ。



「彼女が積極的だと私も嬉しいがね」


「レスターまで……もう、揶揄わないで」



 体を離してもらおうと身を捩るけれど、彼の逞しい腕がしっかりと私の背中に回って解けない。抗議の視線を向ければ、悪戯っぽい笑みがこちらを見下ろしていた。



「これでも結構頑張ったんだよ。ご褒美をもらっても、罰は当たらないと思うがね?」


「まぁ……!」



 随分と軽やかな口調に、思わず私は笑ってしまった。彼も仕事がひと段落してホッとしているのだろう。私たちは可笑しくて二人して笑った。侍女のメルフィや他の使用人たちも、和やかな私たちの姿に笑顔を見せている。


 レスターと想いを告げ合ってから、私たちの仲は周囲の人々に知られることになった。既に私とエルが夫婦ではないことは、薄々離宮の人々も感じていたようだ。


 私とエルの部屋は別々だし、隣同士ですらない。勿論私たちがそういう関係には間違ってもなるはずがないのだが、後々あらぬ疑いをかけられないようにする為に、エルがわざわざそうしたのだ。だから私とレスターの仲も自然と周囲に受け入れられた。



「侯爵……良かったですね!」


「あぁ、ありがとうメルフィ」



 瞳を潤ませて私たちの様子に感激しているメルフィに、レスターが嬉しそうに礼を言う。彼に抱かれたままの私は、顔から火を噴きそうだった。


 レスターが結婚もせずに、初恋の人を異国の地にまで行って探し回っていたというのは、フィネスト王国では有名な話だったらしい。


 自分の恋心の為に結婚もせず、次期宰相と目されていた将来を捨てて異国の地へ向かう一途な男。そんなレスターが、ようやく初恋の人を取り戻したとあって、離宮の中はまるで夢物語が現実のものになったと、侍女達の間で話題になっているのである。



「恥ずかしいわ……」


「ははは、これでも私は一途な男として有名だからね。今はまだこの宮の中だけの話だが、今後もっと覚悟する必要があるかもな」


「えぇ!そうですわよ!デイジー様!これは素敵な恋物語として書籍がでてもおかしくないです!あぁ……っ!今からとっても楽しみだわ!」


「ちょっ……メルフィ、勘弁して……」



 メルフィの言葉に私は冷や汗をかく。このままでは実現しかねないような勢いだ。そんな私たちの様子に、レスターはひとしきり笑うと、ふと真剣な顔つきで聞いてきた。



「まぁ、冗談はこれくらいにしておいて……フリークス氏はまだ帰っていないのかな?」


「えぇ……まだよ。エルは貴方と一緒に戻ってくると思っていたけれど……」


「……そうか。おかしいな……確かに一緒に王宮を出たはずなんだが……」


「まだ仕事があるのかもしれないわ。もうすぐ食事の用意ができるから、先に食べましょう。レスターも疲れたでしょう?」


「あ……あぁ、そうだな」



 首を傾げるレスターに、私はきっと何でもないと言って、そのままにしてしまった。


 レスターと想いを通じ合て、共にいられることができて、私は浮かれていたのだ。

 

 その後、食事を終えた私たちの下に、エルが警邏けいらに捕まったとの知らせが届いた──

 




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
i386115i386123 i424965i466781i473111
― 新着の感想 ―
[一言] えーーーー!?!?!? エルウウウウウウウ!!!!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ