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4-16 この勇者パーティ、魔王より悪魔的につき注意

この国の勇者であるギルサンダーは悩んでいた。この凄腕の斥候であり、俺たちの頭脳でもある彼を追放することを。頭では彼を追放することはあり得ないとわかっている。しかし、追放しなければ、俺たちの命すら危うい。


追放か、王命の無視か。悩んだ結果、ギルサンダーは追放を選んだ。だが、それにより事態は大きく動くことになる

「あ、あー……、


いつものように町に戻って、さて解散というタイミングで俺は呼び止められる。



「明日からもう来なくていいよ。まあ、端的に言っちゃクビだ」

俺はいきなりリストラ宣告をされてしまったのであった。







3日ぶりの町。いつもなら明るく輝いて見える町の外壁だが、今日の僕にとっては何よりも見たくないものだった。それもそうだ。僕はこれからあいつにクビを告げるのだから。その事実が僕の心を重くする。




「な、なぁ…」

少しかすれた声で、僕はあいつを呼ぶ。が、聞こえていないんだろうか。気が重く、どうやら声まで小さくなっていたらしい。そりゃそうだ。正当に働いている人物を不当な理由でクビにする、そんなものが楽しい訳がない。進んでやりたいと思うわけがない。

それでも僕は、あいつに対してこのパーティーからの退職宣告を行う必要があるのだ。



「あ、あー……」


良し、声は聞こえる。震えてもいない。


「明日からもう来なくていいよ。まあ、端的に言っちゃクビだ」


とうとう、言ってしまった。顔が上げられない。目が合わせられない。今あいつはどんな顔をしているんだろうか。



「は??」

当然だ。彼にとっては晴天の霹靂、藪から棒。いくら彼が白兵戦で他のメンバーより劣るとはいえ、彼にはその高い斥候能力と作戦立案力、そして指揮力があるのだから。



「レイが言ったことが分かんなかったの?アンタ、クビなのよ。このパーティーからね!」


アンナが少し彼に詰め寄る。アンナは激情家で勇者パーティーは常に正義でないといけないと思っている節がある。彼の立案した、敵と真正面から出来るだけぶつからない作戦に一番異議を唱えたのも彼女だ。彼と一番馬が合わず、苛立ちの隠しきれていない場面が何度もあった。そんな彼女が感情的になっていることで、彼は逆に冷静になったらしい。



「ちょ、ちょっと待ってくれ。なんで俺がこのパーティーから抜けなきゃならない?」

当然の疑問だ。確かに俺たちがあいつ抜きでこのままやれる保証はどこにもない


「実力不足ですわー」

「ちょっとねぇ……」

「ま、単純な戦闘能力は低いしなー」



しかし、現実は厳しい。今後強大な敵が出てきたときにまた死にかけられては、今度こそこの勇者パーティーは崩壊するのだ。



「で、でも……」

それでもなお反論をしようとするが、


「でもじゃないわよ!あんた斥候とは言え、この栄えある勇者パーティーの1員なのよ?なのにあれは何よ…!」


そこに被せるようにアンナのダメ押し。



「うーん、そんなに斥候技術が低すぎたか?最初の頃は確かに連携が取れなかったり、レベルの高い罠に気づくのが遅かったりして危ない時もあったが、最近じゃそんなことなかっただろ?」


その通り、その通りすぎる結論だ。確かにお前の言う通り連携不足は無いし、何なら最近はお前の作戦のおかげで大した傷も終わずに済んでいる



だがな……。そこじゃないんだ、事の本質は…。



お前が追放される本当の理由。それはお前が勇者の名前を背負えないレベルでゲスすぎるからなんだよ…!!!!






そうなのだ、ヨウヘイが追放されるのは、実力が足りないからなどではない。単純にゲスいからなのだ。しかし、悪いのは実力で敵を倒すことができない俺たちであって、決してあいつが悪いというわけじゃない。しかし、こればかりはヨウヘイを追放せざるを得ないのだ。あくまで俺は勇者で、彼は勇者パーティのただの斥候なのだから。















僕は、彼を追放しなければならなくなった1週間前のことを思い出していた。







あれは2週間に及ぶダンジョン攻略から帰った次の日のことだった。突然俺はこの国の騎士団長に呼び出されたのだ。


(極秘任務につき、他のメンバーに知られないようロイネス城の謁見の間に来い サム)


その日、朝起きてすぐに扉がノックされる音がした。何事かと思い慌てて扉を開くと、足元にこんなメモが落ちていた。サイドレム殿には僕らが勇者として活動し始めた頃、本当にお世話になったのだ。そんな彼の呼び出しを無視することはできなかった。




「すまん、ちょっと用事が出来た、今日からの遠征準備だが、僕は不参加でもいいか?」


すぐにメンバーに許可を取り、城へと向かう。だが、正直なところ乗り気ではなかった。僕のカンが告げていたのだ。この呼び出しには裏があると。サイドレム殿の手紙を偽装して暗殺しに来るのか、はたまた勇者の交代か…。こんな時に限ってヨウヘイに相談できないことを悔やみながら僕はロイネス城の謁見の間で、サイドレム殿を待つことにした。



待つこと5分。謁見の間が空いていることもだが、5分で全員が集まることなどほぼない。隣室で待機していたような迅速すぎる対応に、手紙にあった極秘任務の文字。その二つだけみても相当重要事項であることは間違いないようだ。そう覚悟を決めて僕は謁見へと向かった。



「頭を上げい」


顔を上げるといたのはわずか3人。しかし、メンツが凄かった。目の前には国王様、左には魔法大臣で俺たちを勇者パーティーにした張本人でもある占い師のヘルマン殿、右には勇者パーティーが結成してから半年間様々なことを教えてくれた騎士団長のサイドレム殿であった。



は????????????


目の前にいるのは国の重鎮のみ。僕が一人なのは、極秘で一人で来るよう言われたためだが、国王魔法大臣と騎士団長が部下もつけずに一人でいる。

この事実に僕は少しの恐怖すら感じていた。国のトップの部下すらいられないような呼び出しに僕が呼ばれているのだ。その予想よりもはるかに緊急事態な状況に頭がおいつけないでいると、グリムゾン王がこの緊急呼び出しの真実を語ってくれた。

それは端的に言えば、ヨウヘイを取るか国からの支援を取るかの究極の二択であったのだ。















俺たちはいわゆる勇者パーティーである。というか彼らは、といったほうがいいだろうか。今から5年前、いきなり魔物が活性化して王国へと襲い掛かるという出来事が起きた。そこで王国のお偉いさん方が一生懸命考えて出した結論が、勇者パーティーを作り魔王討伐をするというものだった。そこで選ばれたのがこいつら5人だ。職業:勇者のギルサンダーに、賢者のマーリンと剣聖のジェシカ、聖騎士のグリモル、それに聖女のアンナ。こいつらが国のお偉いさんの占いで集められ結成したのが初期勇者パーティーだ。そして1年前、それまで順調に連戦連勝していた彼らが初めて敗走する。それはこの初期勇者パーティーに斥候がおらず待ち伏せに気づけなかったからだった。それまで時に巨大な魔法で薙ぎ払い、時に強力な剣術で打ち倒し、仮に手傷を負ってもすぐに治してまた戦う。そんな彼ら、強大な魔物と渡り合ってきた彼らを罠に掛け、手傷を負わせたのはゴブリンという最弱のモンスター。ゴブリン相手に命からがら逃げてきた彼らは誓った。新メンバーを入れようと。不意打ちや罠を看破できるような凄腕の斥候を見つけようと。


そんなとき彼らは偶然耳にする。とある噂を。どんな敵でも索敵し、どんなパーティーに参加しても一度もパーティーメンバーを死なせたことのない凄腕の傭兵の噂を。


そう、その凄腕と噂になっていたのが、この俺だ。このスガイ ヨウヘイは今から3年ほど前にこの世界へと転移し、そのまま流れで流浪傭兵として生活していた。そして、1年前勇者パーティーに参加した。










そう、確かに彼はとても良くしてくれた。

この一年間俺たちは彼に何度助けられたのか数えられないレベルだ。不意打ちをしてくるような力押しでは倒せない悪魔に対し逆に罠を仕掛けたり、魔王軍の手下の暗殺部隊に対して奇襲作戦で逆暗殺してみたり…。

彼の立案した作戦の元、魔王を倒すためにやれることは何でもやった。その作戦に間違いはなかったし、実際のところ低い危険性で効率よく魔王軍幹部を倒すことができたと思う。


確かに、ゴブリンの頭を全部はねてさらし首にして、相手を揺さぶってから後ろからの奇襲で倒したり、影魔法を使って倒されたように見せかけて凱旋する魔王軍の一般兵にまぎれて指揮官クラスを暗殺したりとなかなかに正義の味方とは言い難い。しかし、どれもこれも俺たちが死なないために必要なことなのだ。





だがしかし、やはり俺は勇者であり、俺たちは人類の希望なのだ。




「連日の勇者死亡の報告、勇者による悪魔的非道行為による脅し、そして1日10回は来る勇者軍壊滅の知らせとは何ごとか!!!!!!!!」



そう、俺たちが魔王を実直に倒すために勇者というものに対してのマネジメントをしていない結果、この人類の希望は1日10回は死亡報告が挙がり、2日に1回のペースで悪魔より悪魔的行為を行い、そして毎日パーティが壊滅するような、とても希望とは言い難い何かになっていたのだった。

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