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アイドル

四人の会話

「綾瀬君。君は私がアイドルになったら応援してくれるかな?」

「は? 何言ってるんですか? 寝言は寝てから言ってください。それともアレですか。白昼夢ってやつですか?」

「……そこまで言うことないだろ」

「すみません。で、アイドル、でしたっけ? なんでまた」

「この間、ショッピングモールをふらふらしていたら、たまたま吹き抜けになってるあの広場みたいなところで、新人アイドルのアクセスだかサクセスだかっていうアイドルが歌って踊っていたんだ」

「はぁ」

「で、その中で熱狂的な『ローマーンースー!』とかって言ってそうなオタクたちがサイリウムとかを振っていたんだが、ちょっといいなぁって思ってな」

「それで影響されたと」

「まぁ簡単に言えばそう言うことだ」

「それでなんで僕に応援してもらいたいんですか?」

「たまたま今目の前にいるからだ」

「そこの一年生には聞かないんですか?」

「バカ。あの二人のあの空気の中に足を踏み入れてみろ。足が切断されるぞ」

「真空状態なんですか?」

「バカ瀬君」

「綾瀬です」

「あれは何かの能力者だ。あの空間に近づいた瞬間に腰についている見えない刀に切り裂かれてしまう。鎌倉という一年はそういうやつだ。気を付けろ」

「誰もそんなことしませんよ」

「おっ。聞こえていたか」

「そんなにピンポイントで自分の名前を呼ばれたら誰だって返事しますよ」

「小町は、能力者だったの?」

「チガウヨ。どう見ても一般人でしょ」

「正確には一般人じゃないけどな。ノンケではないよな」

「ノンケ?」

「いいの。羽澄は知らなくていいの。知らないままの羽澄でいて」

「そうか。純粋な子が好きなのか。綾瀬君はどうだ? こいつは純粋だぞ?」

「結構です。間に合ってますから」

「何も言ってないのに振られるって、好意が無くても地味に傷つきますね」

「あ、すみません綾瀬先輩。そういうつもりで言ったんじゃないんです」

「いや、うん。わかってるから」

「なんだい? 私のことをそんな目で見つめて。もしかして恋かな?」

「少なくとも部長には恋はしません。安心してください」

「それはよかった。で、また鎌倉と長内は揃いも揃って小説を書いていたのか?」

「はい! 部長も読みます?」

「また甘ーい恋愛小説だろう?」

「たまには部長も読んでくれたらいいじゃないですかブー」

「口を尖らせすぎるとひょっとこみたいになるぞ」

「なーりーまーせーんー」

「いや、科学的には証明されているんだ。やはり顔というものは、常に笑顔な人は素の表情の口角や目じりが笑顔に近くなったり、眉間にしわを寄せる者は眉間にしわが寄りやすいことが証明されている」

「マジですか!」

「つまりだ。同じように唇を前に突き出し続けていれば、それが普通になってきて、その状態からさらに前に出そうとしてしまう。つまり、結果的にひょっとこになってしまうというわけだ」

「うそーん。そんなにひょっとこに効果があるとは思ってなかった!」

「小説のネタのためにひょっとこになってみるのも手だと思うがな」

「それもいいかも。でも戻らないんですよね?」

「何年かかければ戻るかもな。ただ戻る保証はどこにもない。ひょっとこになる頃には、だいぶ顔の筋肉も固まってくるだろうから、元に戻すのは至難の技だろう」

「じゃあ危ないですね」

「ネタとしてはダメか?」

「ダメです。こう見えても、一応女の子なんで」

「綾瀬君はひょっとこ長内でも愛してくれるぞ?」

「えっ?」

「なんで僕を引き合いに出すんですか」

「綾瀬先輩はひょっとこでもいいんですか?」

「いいっていうか……」

「どうなのかな、綾瀬君」

「ニヤニヤすんな。最終的には愛なんでしょうし、顔とか年齢とかは気にしなくなるんじゃないですかね。あんまりそう言うのは考えたことないので、わかんないですけど」

「ふむふむ。愛があれば良し、と」

「長内さん。何メモった? 僕のことは小説に書くのダメって言ったでしょ?」

「の、載せてませんよ。ちょっと参考にさせていただくだけです」

「ま、また僕のことをネタにして……ネタにしていいのはフランだけだって言ったでしょ」

「さりげなく他人を売り渡す綾瀬君。地味に黒いな」

「フランの場合は本人が承認してるんですからいいんですよ。僕は承認してませんし」

「綾瀬先輩はどんな子が好きなんですか?」

「か、鎌倉さんまで……そんなこと聞いて、ネタにしないでよ?」

「私はしませんから教えてください」

「好きなタイプかー。あんまり考えたことないなー」

「私か?」

「部長ではないことは確かです」

「それはそれで傷つくな」

「自業自得です。んー。明るくて元気な子かな。それでいてちょっと優しい子」

「ふむふむ。明るくて優しい子、っと」

「おい長内」

「いや、書いてないですよ!」

「じゃあフランさんみたいな人がタイプなんですか?」

「えっ、フラン!? フランは家族で妹みたいな感じだし……いや、でも彩名とは違う感じだな。幼馴染? うん。手間のかかる幼馴染って感じかな」

「フランさん涙目ですね」

「えっ、フランさんって綾瀬先輩のこと好きだったの!?」

「えっ、そうなの!?」

「え? 知りませんよ。本人の意志とは関係ないところで振られたのが、これで三人目だから哀れだなと」

「じゃあ鎌倉も振られてみればいいんじゃないか?」

「結構です」

「結婚です?」

「……私、部長は苦手です」

「そうか? 私は鎌倉のこと好きだぞ?」

「すみません。やっぱり嫌いです」

「……改めて言われると、やっぱり傷つくな」

「本日二回目でしたね。おめでとうございます。ギネスに申請しますか?」

「結構です」



誰が誰かわかるかな?

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