97.二年生
今日から僕は学園の二年生だ。昨日一年生の入学式があったんだけど、手伝いの上級生以外はお休みだった。
いつも通りアオの歌を聴きながら、僕は気持ち新たに学園へと向かう。
『きょ~うから~二年生~な~の~楽~しみなの~』
クリアが僕の後ろで俺も真面目に勉強するかと呟いている。モモはそれを聞いて嬉しそうだ。すっかりクリアの先生の気持ちなんだろう。
相変わらず軽快な足取りのシロの上に乗りながら、僕はなんだかとても楽しかった。二年生に進級しただけなのにちょっと喜びすぎかな?でも楽しみなんだ。
去年とは違う教室に着くと、他の皆もなんだかテンションが高かった。久しぶりと挨拶し合う。うちのクラスは見事全員進級できた。
僕らはみんなで固まって雑談を始めた。
「今年から少しずつ実践授業が混じるんだよね、楽しみだな」
テディーが言うとみんな興奮したように話し出す。魔物討伐をした事の無いクラスメイトが冒険ではどんな感じなのか聞いてくる。
クラスで冒険者登録しているのは五人だけだ。内一人は小遣い稼ぎのためのソロ登録なので魔物討伐はしたことが無いらしい。
みんなで盛りあがっているとグレイスが登校してきた。
今日はいつもより少し遅くて、例の妹さんのせいかなと少し心配になった。僕が気にし過ぎなだけかもしれないけど、心なしか元気もない気がする。
モモがすかさずグレイスの元へ駆けて行って胸の中におさまる。
グレイスは嬉しそうにモモを抱きしめた。
グレイスはモモを思う存分もふもふすると、会話に加わった。
良かった。大丈夫そうだ。
雑談していると、ギャガン先生がやってきた。
「おーし、お前ら座れ。今日は今年度の説明からだ。嬉しい知らせがあるぞ」
先生の言葉にみんなはしゃぎながら席に着いた。
「お前たちが例年より優秀であると認められて、去年配った予定表より実践授業の割合が増えることになった。これは全クラス共通だ。お前ら頑張ったな」
先生の言葉を聞いて歓声が上がる。
「その代わり俺の授業は削られるから俺も楽ができて嬉しいぞ。実践授業の日に間違って教室に来るなよ。来たら指さして笑ってやるからな」
先生のあんまりな言い方に僕らは笑った。今年も楽しい学園生活になりそうだ。
「ああ、それとお前らにはあまり関係無いが、去年退学者が出たホワイトに途中編入の生徒が一名入ってきた」
珍しいなと思う。途中編入は試験がかなり難しいし、欠員が出ないと募集もしないのでかなり狭き門だ。
数少ないひと枠を勝ち取った生徒が居たのか。かなり頭が良くて魔法が上手なんだろうな。
ホワイトの子達が一人減って寂しいと言っていたから、きっと皆に良くしてもらえるだろう。
先生はその後に実践授業の注意事項について挙げていく。五人ずつのグループを作らなければならないらしく、先生が組み合わせを読み上げてゆく。いつもの三人は同じグループだった。そこに級長のダレル君と、セス君という子が加わって五人組だ。セス君はちょっとぽっちゃりした賑やかな子だ。クラスの盛り上げ担当みたいなポジションにいる。
恐らく成績順でグループは分けられてるようだった。
その日の午前の授業が終わり、グレイスとテディーと食堂へ行く。
この一年ですっかり僕らの指定席のような席になっている場所に行くと、シロがそこに陣取って場所取りしてくれる。ここは広いスペースがあるので、暗黙の了解で大型獣魔を連れている人の為のスペースになっているんだ。
三人でランチを購入して戻ると、ナディアとメルヴィンがすでにお弁当を広げて話し込んでいた。
僕らに気がつくと挨拶してくれる。
「ねえ、グレイス。双子の妹って、ひょっとしてあの子?」
どうやらグレイスの妹について話していたらしい。
ナディアの言葉に視線の先を見ると、僕は驚いた。グレイスそっくりだ。違うのは髪を高い位置でツインテールにしている事ぐらいだ。グレイスは髪を下ろしている。
妹さんはクラスの子とランチを楽しんでいるようだった。
その光景を見てグレイスはホッとしたみたいだ。
「そうです、妹のティアラです。友達が出来たんですね、良かった」
グレイスの心配事が解消されたみたいで何よりだ。
まだ入学したばかりだけど、クラスに馴染めるといいなと思う。
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